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合体忍者  作者: こげ太郎
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合体忍者 一


 一


「やばい! このままじゃ学校に遅れてしまう!」

 中学二年生の金田金剛朗は、あわてて家を飛び出した。

 朝である。

 平日の、何ともすがすがしい朝である。

 日の光が街を照らして、どこかで小鳥がさえずんでいるような……ってすがすがしくなんかない! すがすがしくなんか全然ない。そうだ、そんな余裕は一切ない。なぜならもう遅れそうだからである。もう遅れそうだ。っていうかもう遅れる。ほぼ遅れている。

 朝の時間に間に合わないのだ。

 このままだと学校に間に合わない。学校に間に合わないということがもう確実だろう。学校に間に合わない朝という事実を作ってしまうことがもうほぼ決定してしまっているのだ。

 そういう事実の中を生きなければならないということがほぼ決まってしまっている。

 何を難しいことを言っているのか。

 ようは遅刻だ。

 遅刻なのだ。

 このままだと遅刻してしまうのである。それだけは避けなければならない。まあ無理なら仕方ないけれども、何とかがんばって避けるようにしなければならない。

 どうして避けなければならないのか、そんなにめちゃくちゃどうしても避けなければならないのかというと、そんなにまあがんばらなくてもいいことなのかもしれないけれども、でも避けよう。

 できるだけ避けることにしよう。

 こんなことでなまけていたら、ろくな大人になれないぞ。

 ろくな大人になんてなれなくてもかまうもんか! 俺はいつだって自由にやってやるんだ!

 遅刻の一つや二つくらいで何がどうなるもんか。

 何がどうなるもんか言って見給え。

 どうせ何もならないだろう。先生に怒られるとか、親に怒られるだけだ。それがどんなもんだい。そんなもの俺はちっともこわくないんだぞ。

 遅刻くらいなんてことないさ。

 むしろたまに遅刻してやるくらいでちょうどいいのさ。世の中みんな腐っているんだ。賞味期限切れさ!

 ――と、ああでもないこうでもないと頭の中でべらべらべらべらしゃべりながら通学路を走っていると、角をまがったところで何か奇妙な光景を発見した。

「あれはなんだ?」

 金剛朗は一瞬息をのんで足を止めた。あれはなんだ。あれはなんなのだろう。何ていうか。何ていえばいいのか。人が。人が群れている。人が上下に群れている!

 人が上下に群れているってどういうことなのか。

 よくわからないけれども、人が群れるっていうのは、たとえば野次馬とかそういうことなのだろうか?

 いや違うんだ。

 野次馬とかではない。何か五人くらいの人たちが、人の上によじ登ったりなんかしたりして群れている。そうだ! ピラミッド! 運動会とかでよくやる、器械体操のピラミッドみたいな感じで人がぐわっと群がっているんだ。

 角を曲がったところで人が群れていた。

 五人くらいの成人男性、女性たちが群れていたのである。

 何をしているのか。

 彼らは一体あんなところで何をしているのか。

 正直関わりたくない。

 関わらずに通り過ぎてしまいたいけれども、どうにかならないものだろうか。「俺は今遅刻するかどうかを争っている身なんだぜ? 遅刻するかどうか瀬戸際にいるギリギリの中学生なんだ。こんなところで道草をくっているわけにはいかん。早く何事もなかったかのように通り過ぎないと」

 ところがそうはいかないようだった。

 なぜか。

 彼らのいる道を通って行くのが、学校にたどり着くための最短の道だからである。

「学校に最短で着くには、どうしてもこの道を通ってしまうほかないんだよなあ」

 金剛朗はそう思うと、まあ声さえかけなければ何とかなるだろう、相手も大人だし、まさか俺に声をかけてくるようなことなんてあるまい、と思った。

 ダッシュで駆け抜けよう、と思った。

 ダッシュで駆け抜けりゃなんてことないんだ。彼らの横をすっと走り抜けてしまえばいい。そうすれば、きっと何事もなかったかのように通り過ぎることができるだろうさ。

 金剛朗が彼らのいる道に足を一歩踏み入れたときである。

 彼らの中の一人が、金剛朗に声をかけてきた。

「ああちょっとそこの君、良かったらここを支えていてくれないか?」

 ダメだった。

 何事もなかったかのように無言で走り去ってしまうという計画は失敗に終わった。ソッコーで声をかけられてしまった。

 しかも、ここを支えていてくれないか、だって?

 協力しろってことなのか。

 最悪だ。

 遅刻するのはまだいいとしても、こんな得体のしれない奴らに協力なんてしたくねえよ。

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