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 第四話 それぞれの思いと生存競争

厚の足が何者かに掴まれた。


その掴んだ者は食事にされていた老婆だった。


「ちょ、まてよ!」


厚は老女の腕を振りほどき金属バットで老女の頭をたたき潰した。


脳髄が飛び活動を停止した。




Back-home of the Dead

      


 第四話 それぞれの思いと生存競争




11:33


厚の乗ったダンプカーは追従するワンボックスカーを護るように雨の降る国道を進んで行った。


(お、高速入口の看板が見えてきた。もうすぐだな)


厚は看板を見て少し喜んだ。


通常ならここまで1時間の道のりを数日かけて来たので、心の中でやっとここまで着いたと溜息をこぼした。


高速の入口は2レーンあったが、1レーンには車が横倒しの形で塞いでいた。


もう1つのレーンも1台の赤い車が運転席のドアを開けた状態で放置してあった。


厚は周囲を警戒しながらダンプを降り、赤い車を調べた。


「うっ!…これは…」


無人だと思った車には奴らの食い残しが放置されていた。


厚は車のギアをニュートラルにし、ハンドブレーキを解除するとダンプに戻った。


ダンプで赤い車の後ろをゆっくり押し、進路を確保した。




12:03



厚達は休憩と食料の確保の為にパーキングに止まった。


後方の美香が運転するワンボックスカーはパーキングの入口で止まっていた。


小さなパーキングエリアで10台のトラックと5台の乗用車が止まっていた。


厚はダンプのクラクションを鳴らし建物から奴らを誘い、ダンプで轢き殺そうと考えた。


ブ―――――――、ブ―――――――――


2度の大きな音でパーキングエリアの建物とトイレから20人ほどの奴らがノロノロと歩いてきた。


厚はさらに2回鳴らし奴らの注意を完全にダンプに引き付けた。


ダンプの周囲に群がって来た奴らを厚はダンプで当たり倒し、その上を車輪でゆっくり踏みつぶした。


十数回、同じことを繰り返した厚は完全に奴らを倒したと確認するためにゴルフクラブを持ちダンプを降りて確認した。


ミンチ状になり悪臭を漂わせている物体は動く事はなかった。


厚は止まっている車を1台ずつ確認して中に奴らがいない事を確かめた。


次に売店の建物の隣にあるトイレに向かった。


男子トイレには異常も奴らもいなかった。


女子トイレに入るとすぐに奴らの食べ残しがあった。


閉まっているドアを一つ一つ開けて行くと1つだけ開かないドアがあった。


ドア越しにそっと耳を近付けると中から女性の声だが低い唸り声が聞こえた。


厚は仕方なく隣のドアから便器に足を掛け仕切りをよじ登ると首を赤く染めた中年女性がユラユラと立っていた。


厚はゴルフクラブで女性の頭部を強打すると女性は壁に寄り掛かるように倒れ、動かなくなった。


ゴルフクラブが曲がってしまい折れそうになったので、厚は先を折って頭部を刺殺できるような鋭利な棒にした。


トイレの安全を確保して外に出ると雨が上がっていた。


そして、駐車場には先ほどまで無かった車が1台あった。


車の事が詳しくない厚の印象では≪頭の良くない連中が好みそうな車≫であった。


「いや!やめて!」


「はなして!」


「へへへ、大人しくしてな。すぐに気持ち良くしてやるぜ。」


美香と加奈、加藤が3人の男に連れられて売店に入っていくところが見えた。


(おいおい、勘弁してくれよ!2日連続かよ!)


厚は叫びたい気持ちを押さえて売店に背を屈めて向かった。


売店の入口から覗くと3人の女は3人の男に部屋の角に追いつめられていた。


厚が助けるタイミングを伺っていると、4人目の男が現れた。


口をだらしなく開け片腕が無い男。奴らだった。


その男に気がつかない3人は女たちとの距離を縮めるが、あと数歩の所で1人が噛みつかれた。


噛みつかれた男が叫びながら倒れると噛まれなかった2人が奴らを金属バットで殴殺した。


まだ、自意識があった噛まれた男も2人の男に殴殺された。


友人の死体を見る2人は明らかに動揺していた。


これをチャンスと見た厚は身を屈めながら静かに売店に入ると折れたゴルフクラブを男に向かって投げた。


ゴルフクラブは男の首に刺さり倒れた。もう1人が厚の存在を確認すると金属バットを持って襲いかかってきた。


売店の狭い通路では金属バットは上からの打ち下ろししか出来なかったが、厚には十分恐怖を感じる攻撃だった。


何度かの攻撃を後ろに下がりながら避ける。厚は避けながらもお菓子やせんべいの袋を落としながら後退していた。


男がお菓子の袋を踏み前かがみに倒れかけ、両手を地面に付けこらえた。


が、厚は男の首元に鉈を振り下ろし男を殺した。首は切断までにいかずに少しだけ付いた状態で絶命した。


厚は周囲を警戒し、他の敵はいないか売店内を確認した。死んだ3人の男と、1人の奴ら。


売店の中には3人の女性と厚しかいなかった。


厚と女性は店内の籠に詰めるだけのお菓子や飲み物を入れワンボックスに詰め込んだ。


その間に、女性と厚の会話は無かった。


女性は厚の助けに胸を打たれ、厚は直接の殺人で女性に気を使う余裕はなかった。


厚は無言でダンプに乗り込むとエンジンを掛け、パーキングを出て高速を進んだ。


ワンボックスの中では美香が運転し、助手席には加奈、後部座席に加藤が座っていた。


それぞれが飲み物と食べ物を食べながらの移動だったが、美香が不意に口を開いた。


「ねぇ、阿久津さんってなにも食べてないわね。大丈夫かしら。」


「そうね、私たちの方にしか水も食料もないわね。」


「阿久津さんも大人なんだからお腹がすいたら、きっと何かサインしますよ。」


「そうね、…私たちを助けてくれたとき、格好良かったわね。」


「うん、素敵だったわ。」


「はい、私を助けてくれる王子様ですね。」


「ともちゃん、『私』じゃなくて、『私たち』でしょ。」


「はい、そうでしたね。私たち全員で幸せになりましょうね。」


「そうよ、ともちゃん。加奈もわかってると思うけど、抜け掛け禁止よ。今の世の中で彼以上の誠実さを持つ人はいないわ。」


「ええ、分ってるわ姉さん。姉さんを助けてくれる時に私に大丈夫だって微笑んだ笑顔は忘れませんよ。」


「美香さんも加奈さんも判ってないわ。阿久津さんは誠実だけじゃなくて、私たちの為に自ら危険な事をして助けてくれたやさしい心をもているのよ。これが一番大事よ。」


「そうね、私は彼の誠実さに、美香は笑顔に、ともちゃんは優しさに惚れたのよね。3人で彼のお嫁さんになれば、皆幸せになるわね。」


「でも、阿久津さんはどう思っているんでしょうか?私達が一方的に好きだと言っても…」


「大丈夫よ、姉さんの色気、ともちゃんの可愛さ、私の元気が1つになれば落とせない男はいないわ。」


「そうよともちゃん、考えてみて。女の子3人に好かれて、その女の子達の中なら浮気OKのサインが出てるのよ。男だったら嬉しくて涙がでるわよ。」


「そうですか。まぁ、話は変わりますけど、美香さん。」


「ん?何?」


「昨日の夜、ヤリましたね?」


「・・・ナンノコトカナ?」


「私、途中で起きたんです。そしたら、阿久津さんの上で乱れる美香さんが見えたんです。」


「姉さん!同盟の事、早速裏切ったわね!」


「違うわ、裏切ってないわよ。同盟は今日の朝に結んだの。確かに私はヤッたけど、それは同盟を結ぶ前の出来事よ。」


「うーん、確かにそうですね。ただ、私たちは納得できませんので、次のそういう機会があった時は私たちを優先でヤらせてください。」


「そうよ、姉さん。不公平よ。」


「そうね。それで2人が納得するなら、そうしましょう。でも、初めてでしょ?意地の張り合いで初めてを失ってもいいの?」


「いいんです。阿久津さんなら構いません。私を助けてくれたんですから、初めてを捧げたいです。」


「うん、ともちゃんの言う通りだわ。私も初めてだけど、阿久津さんなら優しくしてくれそうだし。」


「まぁ、2人がそれでいいなら私はかまわないけどね。」


3人のうち加藤のみが告白のような事をしていたが、厚はそれを聞き逃していたことであった。


未だ誰一人として、その想いを彼に伝えていなかった。




13:42



厚達はS市への降り口直前にあるサービスエリアに来ていた。


ダンプで動かない車を押しこみながら高速道路を移動したので時間がかかってしまった。


ここでは奴らが他のグループによって掃討されたようで動くものも無かった。


もちろん、食料も無く厚達は空になった棚を見るだけであった。


「ここには何にもないな。」


「そうね、自動販売機のジュースまで持って行くとは驚いたわね。」


壊された自動販売機を見て美香が呟いた。


「姉さん、何もないの?」


「ええ、缶のお汁粉も売り切れね。」


「そう、それならサッサと行きましょう。」


「ああ、そうだな。…あれ?加藤さんは?」


「あれ?いないわね。」


「あ、あそこにいるわ。」


美香が指さした先にはサービスエリアの厨房から出てくる加藤が見えた。


その手には焼きそばがパックに山のように入っていた。


「阿久津さん、お昼まだですよね。これ作ったんで食べて下さい。」


「お、ありがとう。運転しながら食べるよ。」


「そ、それなら、私が食べさせてあげます!」


加奈が少し大きな声を張り上げた。


「い、いや、大丈夫だよ。それにそんなに大声をあげたら奴らが来ちゃうよ。」


「ええ、来たわよ。」


美香が見ている方向を見ると2人の奴らが高速道路上から近づいていた。


「さっさと行くわよ。」


「ああ、だがS市に降りたらどうする?」


「加奈をそっちに乗せるから案内させて。それじゃあ行くわね。」


美香はワンボックスに向かって走り出した。


加藤はすでにワンボックスに乗り込んでいる。


加奈もダンプの助手席に座って発進待っていた。


「はぁ、行くしかないか」


溜息をつきながら厚はダンプに向かった。




13:59



「はい、アーーン。」


厚は正面を見ながら口を開くと加奈が焼きそばを口に入れた。


ゆっくりと食べながら、厚はチラリと加奈を見るとうれしそうに微笑んでいた。


運転しながらの食事は集中力を欠くものがあったが、無事にS市の降り口に辿り着いた。


加奈の案内で田圃の中にある道を進んでいった。


「あ、あの人…」


「知りあい?」


「うん、学校に行く途中に毎日犬の散歩してる人…」


少し先に小柄な1人の奴らが見えた。


男は70歳近い老人で、腕には犬のリードを着けていた。


その先には首と胸しかない柴犬が轢き吊られていた。


「どうする?楽にしてやるか?」


「…うん、お願いします。」


「わかった。」


厚はスピードを少し早めて、男と車が衝突した。


男は3メートルほど飛び、地面に叩きつけられた。


その上を厚が右の車輪で踏み潰した。




14:43



厚達の運転する車は1件の農家に辿り着いた。


母屋は二階建て、納屋にはトラクターが見えた。


家屋の周りに塀は無く、手入れされた樹木が目隠しの役割をしていた。


「ここです。私の家に着きました。」


加奈が慌てて降りようとしたが、厚が加奈の腕を引き止めた。


「待った。こんな事態になってから、両親と連絡取れたか?」


加奈はゆっくり首を横に振った。


「それなら、最悪の事を考えるんだ。」


「最悪の事、…わかりました。」


加奈は覚悟を決めダンプを降りた。


加奈が少し駆け足で敷地内に入ると直ぐに立ち止まった。


厚が心配して駆け寄ると、玄関前の駐車場に2体分の奴らの食べ残しがあった。


「両親か?」


「…うん、ぐすっ…」


加奈は声を押し殺して泣いていた。


「加奈…」


美香が涙を流しながら立っていた。


「やっぱり…だけど、奴らにならないで良かった…」


美香は蘇った両親に止めを刺す覚悟までしていた。


「御両親をこんな所に置いてちゃいけない。お墓を作ろう。」


厚は納屋からスコップを持ち出し、駐車場の隅の日の当たる場所を掘り出した。




16:29



「車の移動終わった。」


キッチンで料理している美香と加藤に厚が告げた。


「はい、今は加奈さんがお風呂に入っています。私たちは終わりましたんで次、どうぞ。」


「ああ、ありがとう。出来た料理を2階に運んおくよ。」


「うん、お願いね。」


厚の考えでは、奴らに囲まれた状態で1階を移動するのは危険と考え、2階の屋根のすぐ下ダンプを移動した。


その隣にワンボックスカーを置き、いつでも逃げられる準備をしていた。


この家の周囲に塀は無くバリケード代わりになるものも無い。


1階の雨戸を閉め2階の階段の上下にバリケードを設置し安全を確保しようと考えていた。


入浴を終え食事と睡眠を2階で取る計画を厚が提案した。


3人もその案に従い準備をした。


「お風呂あきました。」


料理を2階に運ぼうとしていた所に加奈が入浴を終え現れた。


「ありがとう。加奈さん、料理を2階にお願いしていいかな?」


「あ、はい。わかりました。」


「んじゃ、風呂に入ってくるね。」


厚は風呂場に向かった。


その姿を加奈がニヤリと笑いながら見送った。




16:34



厚が着替えの入ったバックを持って脱衣所に入った。


バックを開け、着替えを確認するが…


「あれ?着替えがないぞ?ん?どうなってるんだ?」


その時、不意にドアが開いた。


そこには加藤が立っていた。


「阿久津さん、着替えですけど汚れていたので洗濯中です。お風呂に入ってる間に洗濯が終わりますので2階に干しておきます。」


加藤はそう言うとドアを閉めてキッチンに小走りに向かってしまった。


「どうするか…風呂に入らないなんてのは無いし、だからと言って着替えは無いし…」


ドアがノックされ、開かれた。


「智ちゃんが、阿久津さんの着替えまで洗濯しちゃったって言ってたけど、どうするの?」


「ん~、どうすっかな。」


「じゃあ、バスタオルでも腰に巻いてればいいじゃない。女じゃあるまいし、そこまで恥ずかしいがる必要無いと思うけど?」


「それもそうだな。洗濯して干してくれるって言ってたし、バスタオルでいいか。」


「それじゃ、ごゆっくり~。」


美香が手を振りながらドアを閉めた。


「さーて、風呂だ。」


厚は全裸になり浴室の勇んで向かった。




同時刻



 どうでした?


 大丈夫よ、彼は疑問にも思ってなかったわ。


 それで?


 バスタオルを腰に巻いて来るって。


 ふふふ、加奈さんの言う通りに着替えを洗って正解でしたね


 でしょ?


 加奈は昔から自分の思うように人を動かすのが得意ね。


 姉さん、その言い方だと私が黒幕に聞こえるじゃない。


 え?違うんですか?


 ともちゃんも、加奈も落ち着きなさい。誰が黒幕とかじゃなくて、皆で幸せになればいいのよ。


 そうですね。


 そうね、姉さんの言う通りだわ。


 私たちは3人で彼を共有するのが目標よ。誰が黒幕とかじゃなくて、みんなで相談してきめるのよ?


 そうね、私たちの幸せの為に…


 あ、これって?


 うん、お爺ちゃんが送ってくれたマムシ酒ね。


 たしか、滋養強壮に良いって言ってた気が…


 はい、今夜はこれで乾杯ですね。


 ともちゃん、未成年でしょ?


 体は子供でも心は大人です。大丈夫です、がんばります。


 まぁ、ほどほどにね。姉さんもいるから大丈夫かな?




17:19



厚は入浴を終えるとキッチンに向かった。


しかし、そこには誰も居なかった。


2階に上がる階段の手前には和箪笥が設置してあり、上の方は人が寝ころんで通れるくらいの隙間があった。


厚はそれをよじ登って階段に降りた。階段を上りきった所にも背の高い和箪笥があり、人が1人通れる隙間を残して置いてあった。


厚が体を横にして滑り込むように通ると、すぐ脇の和室に入った。


そこには3人の女性が厚を待っていた。


「あ、阿久津さん最後だから箪笥を動かしておいてね。」


「了解。」


厚は階段前の和ダンスを押して階段から登れないように設置した。


部屋に戻ると厚は座布団の上に座った。正面に加藤、左右に加奈と美香が座っていた。


夕食の途中、美香だけがお茶ではなく透明の液体を飲んでいる事に厚が気が付いた。


「美香さん、何飲んでるの?それってお茶じゃないでしょ?」


「ん、なんだろうね。飲んでみる?」


美香が厚に向かって飲みかけのコップを差し出した。


厚はコップを受け取り一気に液体を飲み込んだ。


「ん、旨いなぁ。少し辛めだけど、複雑な味がして結構イケる。」


「飲む?まだいっぱいあるわよ。」


「本当に?じゃあ、もう一杯貰おうかな。」


厚が美香に向かってコップを出すと、美香が瓶に入った酒を注いだ。


厚が注がれた酒を飲み干すと美香が笑顔で言った。


「阿久津さん、良い飲みっぷりね。さぁ、まだまだあるわよ。」




19:22



「阿久津さん?大丈夫?」


「むははははは、まだまだ大丈夫。」


厚は赤い顔をしながら加奈の問いに答えた。


美香は酔いつぶれて下着の状態で座布団を枕に眠っていた。


加奈はショーツ1枚の状態で胸を隠すことさえしていなかった。


加藤は美香がいた席に移動して、全裸で座布団の上に座っていた。


厚はバスタオルを股間に掛けているだけで後ろから見ると尻が見えている状態で座っていた。


この場にいる全員が泥酔状態だった。


「あ、阿久津さん、もしかして起ってる?」


加奈の発言で厚は自分の股間を見た。


「おお、こんな所にチョモランマがある。むはははは。」


「本当ですか?見せて下さい。」


加藤が厚に寄り掛かりながら股間のバスタオルを取ると、見事に天を貫くモノが鎮座していた。


「ん~、何か変な匂いがします。」


加藤は厚のモノに顔を近づけて匂いを嗅いだ。


「うは、父さんよりもおっきい。」


加奈は半笑いになりながら加藤と同じように厚のモノに顔を近付けた。


「おいおい、俺も男だよ?こんなことすると襲っちゃうよ?」


「はい、襲ってください。」


「うん、私も智ちゃんと一緒にお願い。」


一瞬、時が止まった。


「むははははは、もう、止まらないからなー」


この日は、夜の遅い時間まで女性の喘ぎ声が聞こえた。




10:12



「智ちゃん大丈夫?」


布団に横たわるのは加藤と加奈だった。


2人とも酷い2日酔いと股間へのダメージで立つこともできなかった。


「周囲に奴らはいなかった。1階の安全も確認した。下に降りても大丈夫だ。」


厚が和室に入ると美香に告げた。


「わかったわ。2人は2階で寝ててもらいましょう。食事は私が作るわ。」


「うう…ごめんなさい。」


「大丈夫よ、あ、阿久津さん、下から水を持って来てもらってもいい?」


「了解。」


厚が和室を出て1階に下りて行った。


「で、どうだった?」


「…すごかったです。今でも中に入ってる感じがします。」


「そう、加奈も同じこと言ってたわ。午後には良くなってるから、心配しなくても大丈夫よ。」


「はい、今度は美香さんも一緒にですね。」


「水、持ってきた。」


厚が階段を昇り2人がいる部屋に入ってきた。


「ありがとう。智ちゃん、水飲んでから、もう一回寝なさいね。」


加藤は頷くと水を飲み布団に横になった。


美香と厚はキッチンに移動すると椅子に座った。


「昨日の夜の事覚えてる?」


「…ああ、覚えてる。」


「ヤったわよね。2人から聞いたわ。」


「…それで、俺をどうするのか?警察にでも訴えるか?」


「何バカなこと言ってるの?警察に言って誰が幸せになるの?私が言いたいのは、私も混ぜなさいって言ってるの。」


「いや、いや、おかしいだろ。すでに2股でいつ刺されるかドキドキしてるのに。3股にしろってどう考えてもおかしいだろ?」


「おかしくは無いわ。私たち3人とも納得済みなの。それに考えてみて?女の子3人に言い寄られて悪い気はしないでしょ?その3人が毎晩あなたを求めてきたら幸せなことじゃないの?」


「…3人からの好意はありがたいと思うけど、常識や倫理的にどうかと思うが。」


「あら?すでに常識は崩壊したわ。それに今、あなたと別れたら奴らに食い殺されるか、好きでもない男に暴行されて身籠るかのどちらかよ。」


「うーん、でもなあ、やっぱり、ちゃんとした恋愛した方がいいと思うけど…」


「ちゃんとした恋愛?今、この世界に生存者はどれくらい生き残っているか分る?それに何処かのグループに入っても恋愛でころでは無いわ。食糧確保だけで精いっぱいよ。」


「…だけど…」


「だけど…じゃないわ。私たちは貴方が好きなの。抱きしめたいの。セックスしたいの。それで十分じゃない。あなたに何のしがらみがあるの?」


「…そう、だよな。俺には何のしがらみも、こだわりも無かったはずだ。俺の事、好きって言ってくれれば、あとは俺が好きになれば問題解決じゃないか。」


「そうよ、私たちの想いを受け取ってほしいわ。」


「わかった。3人の想いは受け取ろう。3人が俺の事を好きと思う限り、俺も同じ思いの愛で答えよう。」


「…そう、でもね。そのセリフは3人揃ってから言うべきよね。」


「…ああ、たしかに。そうだな。」


「3人揃うのは晩御飯かな?」


「とりあえず、上手に言える内容を考えておくよ。今日も、ここで泊まるんだろ?進入されそうな出入り口に箪笥を置いてバリケードを作っておくよ。あ、玄関のみ簡易なものにしておくから。」


厚は椅子から立ち上がり玄関に向かった。




14:01



昼食を終えた厚は隣家に物資の調達に1人で向かった。


加藤と加奈は未だに調子が悪いようで、布団の中で眠っていた。


美香は2人の面倒を見る為に家に残った。


厚の武器は腰の鞘に入った鉈と納屋で見つけた金属バットだけだった。


隣家までは20メートルほど田圃の中の道路を進むと玄関が見えてきた。


美香の話では老夫婦が住んでいて息子夫婦は県外に住んでいると聞いていた。


厚は家屋内に最低2体の奴らを仮想し玄関をゆっくり開けた。


そこには、食事中の奴らがいた。


食べられているのは白髪の老婆。食事中なのは頭が禿げあがった老人が食らいついていた。


厚は物音を立てずに食事中の奴らの頭に向かって金属バットを打ち下ろしたたき割った。


(ふぅ、頭を割る感触は慣れないな。うわっ!)


厚の足が何者かに掴まれた。


その掴んだ者は食事にされていた老婆だった。


「ちょ、まてよ!」


厚は老女の腕を振りほどき金属バットで老女の頭をたたき潰した。


脳髄が飛び活動を停止した。


(くそっ、大人しく死んでろよ!)


厚は厳しい顔をしながらキッチンの捜索にむかった。




15:57



隣家の物資調達から帰った厚は美香に言われて風呂に入った。


湯船でくつろいでいると、脱衣所に気配を感じた。


奴らが侵入するには玄関しかなかったが、そこには侵入された場合を考えて金タライやヤカンなどをバリケードの上に置き、簡易的な警報装置を設置していた。


完全に気を許していた厚はこの場から逃げようと湯船から立つとドアが開いた。


そこには3人の女が全裸で立っていた。


「あの、お背中流します。」


加藤が消えそうな声で言った。


「大丈夫です。気持ちいいですから。」


加奈は真っ赤になりながらも笑顔だった。


「そんな訳で、浴室プレイにきました。」


美香はその均等のとれたプロポーションを厚に見せつけるように立っていた。


しかし、その変態的な発言で魅力は半減していた。


ただ、厚にはそれでも3人の魅力に富士山が一気にエベレストにまで膨張した。


彼らは空腹になるまで浴室内で獣のようにお互いを求め合った。




23:43



「ごめん、もう、無理。寝かせて。」


厚は布団の上に倒れると直ぐに寝息を立てて眠りに着いた。


厚はこの時間までに9発のミサイルを発射し体力の限界にきていた。


彼の周りには3人の裸の女性が布団の上に座っていた。


「もう、仕方ないわね。智ちゃん、満足した?」


「はい、腰が砕けるかとおもいました。加奈さんはどうでした?」


「私?そうね。天国への階段は昇りかけたかな?」


「それって昇天しかけたって事?」


「うん、数えきれないくらいイッたから、太ももまでぐしょりだよ。」


「うん、確かに私たちもグッショリね。2人とも満足したなら今日は寝ましょうか。明日は移動よ。」


「そうですね、ここの居心地の良さから移動の事忘れてました。」


「智ちゃん、明日は厚さんの家に行くのよ。もし、そこが危険ならここに帰ってくるのもアリだとおもうわ。そうよね、姉さん」


「そうね。この家なら、玄関以外からしか入れないし、2階までに玄関、階段下と昇りきった場所の3か所にバリケードがあるから結構安全だと思うわ。車にも2階から乗れるようになってるしね。」


「さぁ、私たちも寝ましょう。明日に響くわよ。」


美香の言葉に加藤と加奈は従い2人は厚い抱きつくように横になった。







彼らの先にあるのは希望か絶望か?


厚は母親と出会うことができるのか?


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