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遠雷の魔王人生を生きる  作者: 宅間晋作
第一章 転生剣奴編
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ボロゥ達とのすれ違った別れ

「た、助けろ助けてくれ!! お、起きろボロゥ!!」


「うおっなんだ!?」


 カリュゲドゥスが試合に出ていった後ボロゥには何もすることがなかったのでのんびり昼寝をしていたのだが衛兵に声を掛けられてボロゥは跳ね起きた。



「何かあったのかよ。 衛兵さん」


「は、早く。 早く戦え! た、戦わないとお、俺、俺たちはし、死ぬ 死ぬんだ! こ、こわ、怖い こっ」


 衛兵がボロゥの愛剣を冷や汗をかいた手でボロゥに手渡した後、うわ事を呟きながら泡を吹いて気絶した。


「気持ち悪りぃなこれ」


 倒れた衛兵を見ながらボロゥはそう呟いた。

 とりあえずどんな相手がいるか分からないので衛兵の部屋から食糧のパンを奪った。

 自身の取り上げられた荷物を回収するべくボロゥは勝手に剣奴の荷物を回収する部屋に向かい自身の荷物とカリュゲドゥスに似合いそうな剣を持って闘技場に向かった。


「……マジでどうなってんだこりゃあ」


 ボロゥが廊下を歩いていると自分以外誰も意識を持った者は誰一人おらず衛兵も剣奴も皆泡を吹いて気絶しおりボロゥ以外に意識を保った人間はいなかった。


「カリューの奴はどこだ? まさか気絶しちゃいねぇよな?」


 ボロゥは自身の弟分と言うべき少年を心配しながら牢屋の廊下を走りながら闘技場に向かった。


「お、おい。 マジで悪夢でも見てんのか俺は?」


 ボロゥが剣奴が入る闘技場入り口で見たものは衛兵達の死体であった。

 衛兵の体は槍が刺さっていたり、剣の切り傷があったりどう見ても内輪揉めで殺し合った現場にしかボロゥは見えなかった。


「そ、それよりもカリューを探さなくっちゃ」


 目の前に映る景色に恐怖しながら声を震わせてボロゥは闘技場の中にいるはずのカリュゲドゥスを探しに向かうべく闘技場の中へボロゥは扉を開けて中に入って観衆達を見上げてみると観衆達は、泡を吹いて気絶していたり観衆同士が争った形跡が見られた。


 すると声が聞こえた。


「オラッチは悪くねぇ。 悪くねぇっ」


「パルの兄貴落ち着いてくだせぇ。 落ち着いてくだせって。 しょうがねぇでしょう殺し合いだったんだから!!」


 ボロゥがにはネズミの獣人が膝を抱えて疼くまり恐怖体を震わせており、隣でネズミの獣人を慰めている少年は冷静を取り繕いながらも動揺が隠せないのか声を荒ぶらせてネズミの獣人を慰めていた。


「おい。 どうかしたか?」


 ボロゥは心配になり獣人と少年に声をかけた。


「って。 奴隷殺しのボロゥ!? ご無事だったんですかい」


 少年がいち早く近づくボロゥに気づきボロゥの首に槍を突きつけたがボロゥの事を知っていたのか顔は驚愕に染まり、槍を咄嗟に下した。


「目が覚めたらさっぱり分からん状況になっていてな無事なのはお前達だけか?」


「今、目覚めたのはあっし達だけでさぁ」


 ボロゥは少年の話を聞きながら嘘はついていないと確信し質問してみる事にした。


「今日お前達は見た感じカリューと対戦することになっていたチャレンジャーか名は?」


「……デルソン・フゥルスとあっちで膝を抱えているのがネズミの獣人パルの兄貴でさぁ」


「俺はボロゥ。 今から連れを探して見つけたらここから抜け出すつもりだ。 もしよかったらお前ら一緒に来るか?」


「もちろん。 その提案にあっしも乗らせてくだせぇ。 こんな気持ち悪いところ早くズラかりたいでさぁしてその連れとは一体誰のことですかい?」


「ああ名前をカリュゲドゥス・ロウツと言うどこにいるか知ってるか?」


「……カリュゲドゥスならあそこで満身創痍になっていまさぁ」


「カリュー!」


 デルソンが指差した方向を見るとカリュゲドゥスが仰向けになって倒れておりボロゥはすぐにカリュゲドゥスに駆け寄ってカリュゲドゥスの体を抱き上げた。


「ボ……ロゥ?」


「カリュー俺が分かるか!?」


「わ……れ……ね」


 うわごとを呟きながらカリュゲドゥスは意識を失った。

 その体は恐ろしく冷たく息をしていない。


「おいしっかりしろ。 しっかりしろよカリュー!! 俺はお前にまだ死んで欲しくねぇんだよ一緒に旅をしてんだよぉ!!」


 ボロゥは片眼から涙を流してカリュゲドゥスの体を揺らしたがカリュゲドゥスは目を覚まさなかった。


「……すまねぇでさぁ」


 デルソンがボロゥに駆け寄り声を掛けた。


「…… 誰だカリューを殺した奴は!!」


 ボロゥは自身の腕で眠るカリュゲドゥスを抱きしめながらボロゥは怒りの声を叫んだ。

だがボロゥは勘違いをしていた。 

 カリュゲドゥスは出血多量と魔力枯渇のせいで体が冷たいだけでまだ生きており体力回復のために眠っているだけなのだがボロゥは目の前に広がる異常を見て動揺して冷静を失いカリュゲドゥスは死んでしまったと勘違いしてしまった。


「こ、殺すつもりはなかったんだ。 強いからそいつに勝ってオラっチの子分にしてやろうと思ったんだ ……けどオラッチは殺しちまった!!」


「なんだとクソネズミ。 テメェ!!」


「やめてくだせぇ! お二方。 今は喧嘩してる場合じゃあないでしょう!?」


 パルの懺悔を聞いてボロゥの叫び声を上げてポルを殴り殺そうとするがそれをデルソンが二人の喧嘩を仲裁した。


「今やるこたぁカリューの死を弔う事じゃあねぇんですかい! ボロゥ。 パルの兄貴を殺してもカリューは帰ってきやせんぜ」


 ボロゥをデルソンを宥めるがボロゥは止まらずパルの胸ぐらを掴みボロゥの目線まで掴み上げて叫んだ。


「カリューとデルソンの顔に免じて殺す事はしねぇがテメェを俺は一生許さねぇぞ。 パル!」


「すまねぇ。 すまねぇカリュー、デルソン、ボロゥの兄貴」


「兄貴なんていうんじゃねぇクソが! 死んだカリューに謝りやがれ!!」


「がっ」


「パルの兄貴!」


 パルは涙を流してボロゥに謝るがそれが癪に触ったボロゥはパルを殴り、殴り飛ばされたパルを心配してデルソンが駆け寄るのを見た後ボロゥはカリュゲドゥスに駆け寄って服を脱がし傷口を消毒して綺麗な布で体を拭き荷物室にあった清潔な子供用の服を着せてやる。

 本当はこの騒動に便乗して一緒に闘技場を出て旅をする時にプレゼントしてやろうかと思ったがもうそれは叶わない。

 そして綺麗になった遺体に自身の傭兵時代から使っているマントを体に掛けてやった。


 そして、頭上にボロゥと戦った時に使っていた剣奴の剣と荷物室から持ってきた子供用の剣を突き刺した。

 手には同じく荷物室から取ってきたカリュゲドゥスがずっと読みたかったであろう勇者セルトの絵本と賢者ルイマンが執筆した『子供でも分かる魔法』を抱えさせた。

 最後に供物としてパンを供えてボロゥは涙を流した。


「すまねぇカリューお別れだ。 せめてこれだけでも置いていくからな。 墓参りにはこねぇ傭兵の墓は死んだところだからな。 お前の分まで俺は旅をするぜ」


「あっしもあんたを騙す真似しなきゃよかった。 あんたともっと話をすりゃぁよかった」


「すまねぇカリューオラッチお前の分まで生きるからな!!」


 少年に声を掛けて、ボロゥ達は立ち上がりカリュゲドゥスの体から離れ闘技場を去った。


 これがカリュゲドゥス・ロウツとボロゥのすれ違った別れだった。

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