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遠雷の魔王人生を生きる  作者: 宅間晋作
第二章 冒険者学院入学編
13/124

試験提案

「よく寝たな」


 カリュゲドゥスは自然の光を浴びて体を伸ばしながら起床する。

 起きてすぐに食べれる食糧がなかったので森の中からりんごの木を見つけたので赤く熟れたりんごにしゃぶりついて朝の空腹感を満たした。


「さてウェイラを待つか」


 カリュゲドゥスは腹を満たしてので穴蔵の前に胡座で座り込んでウェイラを待つ事にした。


「ごめん。 カリュー君迎えに来たよ!」


 すると三十分後にウェイラが父親らしき人物と手を繋いで歩いて来るのが見えた。


「おお! ウェイラ来てくれたのか」


「うん約束通り来たよ。 カリュー君」


 ウェイラがカリュゲドゥスに駆け寄り、カリュゲドゥスの手を取って再会を飛び跳ねるように喜んだ。


「こんにちはカリュゲドゥス君。 私はタルゼ・ティルカ。 ウェイラの父親だよろしく頼むよ」


「よ、よろしくお願いします。 た、タルゼ殿」


 カリュゲドゥスはいきなりウェイラの父親タルゼに声を掛けられて声を上擦らせながら慣れない丁寧な口調で挨拶した。


「ははっ。 そんなに畏まらなくていいよ。 いつも通りの口調で喋っていいからね?」


「うっ、分かった礼を言うタルゼ殿」


 カリュゲドゥスはタルゼの笑顔の圧に畏怖しながら、丁寧な口調から魔王時代のものへと元に戻した。


「うんよろしい。後、殿もいらないよ。 君は子供というよりもどこか老人臭く感じるから砕けた感じだと私は嬉しいね」


「……老人臭い」


 カリュゲドゥスはタルゼから老人臭いと言われ軽くショックを受けた。


「友からは我と言うのはおかしいので俺と言った方がいいと言われたのだが」


「ははっ。 それは多分魔力を感じれないタイプの人間からの言葉じゃないかな?」


「何故わかる!?」


 カリュゲドゥスはタルゼの言葉があまりにも正確で驚き固まった。


「まぁなぜ分かるかは置いといて、君の魔力を感じて見ると驚きだ。 君は本当にやはり君の魔力属性は……呪詛魔力なんだね」


「……魔力属性? 呪詛魔力?」


 改めてカリュゲドゥスは自身の魔力属性が呪詛魔力と言われて不思議に思った。

 五百前はただ魔力とだけ言われていたがいつのまにか魔力属性と言う概念が出来ている。

魔力属性を知るためにカリュゲドゥスはタルゼに質問してみる事にした。


「タルゼ。 魔力属性とはなんだ?」


「魔力属性というのは今を生きる生命に宿る魔力の亜種だよ」


「なるほど」


「全部で五種類あってね、魔力総量が少ないが自然の魔力を使うのがうまいのが精霊魔力。 魔力総量が普通だが魔法の消費が少ない分魔法威力が高い龍魔力。 魔力総量がそこそこ多くて女神アルミアから祝福を受けている神天魔力。 そして魔力は多いけれど使える攻撃属性魔法を一つだけしか覚えれない呪詛魔力。 そして普通の魔力の五種類だ」


「やはり我は呪詛魔力を持った人間なのか?」


「うんそうだね。 君は呪詛魔力を持ってて自然と雷魔法を無詠唱で使えるとウェイラに聞いた。 実際にやってみて」


「……そうかウェイラが分かった。 試しにやってみる」


 カリュゲドゥスは試しに生前使っていた雷の球を出して見せた。


「じゃあ炎や風、水や土を出してみて」


「よし」


 カリュゲドゥスは雷を放出するのをやめて炎や風、水と土を出してみようとするも全くと言っていいほど出なかった。


「何も出ぬな」


 カリュゲドゥスは己の両手を見ながらポツリとつぶやいた。


「これで分かっただろう君は呪詛魔力持ちだ。呪詛魔力持ちは聖騎士団に狩られる運命にある」


「……そうか」


 カリュゲドゥスは地面を見て俯いた。


「我はどう生きればいいのだ。 これから」


 カリュゲドゥスは生前得意としていた雷魔法しか今の人間時代では使えないのだと知り落ち込んだ。

他の魔法も使えず肉体も貧弱ならば一体どうやって生きれば良いのか検討もつかなかった。

 さらに今の時代呪詛魔力持ちだと聖騎士団に狙われ殺されるのだと思うと心が沈んだ。


 そんな沈んだ心にタルゼの穏やかな口調が染み込んでくる。


「ところでカリュゲドゥス君。 今、君に住む所はあるのい?」


「……全くないが」


 やや低いトーンでカリュゲドゥスは返事をする。


「そこでだカリュゲドゥス君。 君、セルト冒険者学院の試験を受けてみないかい? 寮制でしかもたくさんのことを学べる」


「セルト冒険者学院?」


 いきなり勇者セルトの名前が出てきてカリュゲドゥスは固まったがすぐに冷静さを取り戻す。


「うん。 そうだよ一週間後にセルト冒険者学院の入試試験があるんだ君それを受けてみないかい?

本来、冒険者はアルミア王国の成人年齢である十五歳から一年経った十六歳でライセンスを獲得して冒険者になる事が出来るが、十五歳から学び元々ある才能を伸ばせる所がアルミア王国の三大学院の一つセルト冒険者学院だ。そして冒険者になれば君は国の戦力として扱われるから聖騎士団から狙われずらくなる。 立場的に美味しいと思うんだけどどうかな?」


「そんな世界があるのか。 ……いや待てよ? 冒険者? 傭兵でなくて?」


 カリュゲドゥスは冒険者と傭兵の違いがわからず

思わず口に出してしまった。


「おや傭兵を知っているのか。 少し補足しておくけど冒険者ギルドに所属して冒険者ライセンスを持っているのが冒険者、逆に冒険者ライセンスを持たず金だけの関係を持つのが傭兵だ」


「そうか分かった。説明をありがとうタルゼ」


 カリュゲドゥスはタルゼの話を聞いて納得した。


「なるほど世界は広いな」


 改めて世界について知れてカリュゲドゥスはとても嬉しく希望が見えた気がした。


「それでカリュゲドゥス君セルト冒険者学院の試験受けてみるかい?」


「ああ、ぜひ受けさえてくれ」


 カリュゲドゥスは今の現状を理解して住む家もないのであればそのセルト冒険者学院に住むしかないと判断した。

 カリュゲドゥスは地面から目線を上げて決意の表情でタルゼの顔を見た。


「よし、カリュゲドゥス君そうと決まれば私の屋敷へ君を招待しよう 色々と準備もあるしね」


 タルゼが手を叩いて場の空気を変える。

これはどうやらカリュゲドゥスは屋敷へと招待されなければならないらしい。


「分かった」


「よかったね! カリュー君試験が受ける事になって。 受かったら一緒にパーティ組んで勉強しようねっ」


 カリュゲドゥスが頷いて返事をするとウェイラが

近づいてきてカリュゲドゥスの手を取って跳ねて喜んだ。

 天使のような笑顔に女の子の耐性がないカリュゲドゥス思わずウェイラの視線から目を逸らしてしまう。


「と、ところでウェイラは試験を受けるのか?」

カリュゲドゥスは声を震わせながらもウェイラが試験を受けるのかが気になり質問してみた。


「私はね、ジャジャーン」


 ウェイラは自身のポケットから一枚の紙を取り出してカリュゲドゥスに見せつけた。


「なんだこれは?」


「ふふーん。 これは推薦入学証」


「推薦入学証?」


 意味がわからずカリュゲドゥスは首を傾げた。


「これはね学院が認めた子供百名だけが貰えるやつでね私はその一人って事これを持って入れば学校の卒業までの教育費が免除になるんだ」


「すごいな」


 ウェイラの実力にカリュゲドゥスは驚愕し、驚きを隠せなかった。


「ちなみに入試を受けた者の合格出来る人数は何名だ?」


「同じく百名だよ」


「そうか」


 カリュゲドゥスは恐ろしくなるその百名に選ばれなければウェイラと一緒に学ぶことは出来ないのだと悟る。



「ゴホン」


 ふとそんな思考に陥っていると後ろから咳払いが聞こえて来た。


「ウェイラ? ちょっとカリュゲドゥス君と距離が近いんじゃないかい?」


 タルゼの声と顔は穏やかだがどこか威圧がある雰囲気を醸し出している。


「ご、ごめんなさいお父様。つ、つい嬉しくてっ」


「まだぬか喜びは早いよ。 なんせ噂では試験内容は教師と戦うらしいからね」


「そうなのですか!?お父様!」


 さっきまで赤みかかった表情が衝撃の事実によってウェイラの顔を青く染めた。


「まぁあくまで噂だがね。さぁ突っ立っているのもなんだ屋敷に早く帰ろう」


 そう言ってタルゼはスタスタと屋敷を目指して歩いてしまう。


「ああ、待ってくださいお父様!」


 その後をバタバタと走りながらウェイラが後に続いていく。


「さてよいしょ」


 カリュゲドゥスも話の流れに添い、昨日仕留めたカミナリボア三匹を担ぎながらタルゼの屋敷を目指して歩いて行く。

 そして、徒歩三十分でタルゼの屋敷に着きその大きい屋敷を見上げた。


「着いたよ」


「カリュー君ようこそ私のティルカ家の屋敷へ!」


 タルゼの言葉とウェイラの挨拶が響ながら、ティルカ家の屋敷の扉が開く。


「広い」


「カリュー君はやく!」


「うむ分かった」


 カリュゲドゥスはウェイラに背中を押されながら屋敷へと入っていった。


「この部屋を使いなさい。 ご飯ができたら呼ぶからね」


 タルゼに案内されて質素で小さな部屋を貸してもらえる事になり、することもないのでベットで寝転ぶ事にした。


「さてどうするべきか」


 カリュゲドゥスは天井を見上げながら思考の海に沈んでいく。

 まず重要なのはセルト冒険者学院なるものを合格しなければならないという事だ。

 試験内容はおそらく現役冒険者と戦闘し生き延びる事である。


「どうしたものか」


 そう呟きながら額に手を乗せたその時だった。

ノックをが響いて声が聞こえた。


「カリュー君。 起きてる?」


「起きているが?」


「扉開けていい?」


「どうぞ」


 そう答えると扉が開きウェイラが少し恥ずかしながら扉から顔を出す。


「カリュー君。 庭で魔法の実践してみる?」



「実践?」


 どこか腹黒い表情をしながらウェイラはカリュゲドゥスを魔法実践に誘って来た。


「そんな事していいのか? タルゼにまた怒られるぞ」


「ふーん、合格できなくていいの? あ、もしかして一緒に修行するのは恥ずかしい?」


 カリュゲドゥスはタルゼに怒られることを心配して忠告するがウェイラは気にせずむしろ顔を近づかせながらカリュゲドゥスを煽ってくる始末である。


「一緒はいや?」


 するとウェイラはカリュゲドゥスに肩に手を回し、口元をカリュゲドゥスの耳元に近づけて蠱惑的な口調でカリュゲドゥスを誘惑してきた。


「分かった分かった。 やろうさっさと庭に行くぞ!」


 そんなウェイラの大人びた雰囲気にドギマギしてカリュゲドゥスは庭へ逃げるように向かった。


「さて。 カリュー君には補助魔法を覚えて貰います」


「補助魔法?」


 早速庭に来てウェイラから発された言葉はそんな言葉だった。


「補助魔法とはなんだ?」


「ふふーん。 補助魔法っていうのは自分にも相手にも掛けれる人の動きを文字通り補助してくれる魔法のことを言うんだ」


 ニコニコと自身の知識を教えれる事が嬉しいのかウェイラは自慢げに手を叩いて飛び跳ねながら補助魔法についてカリュゲドゥスに解説する。


「して、我は何を学べば良いウェイラ」


 腰に手を当てながらウェイラに対してカリュゲドゥスは教えを乞うことしか今はできない。


「カリューくんに今回学んで欲しい事は三つ飛ぶ魔法のキアフ、防御魔法のシルガ、回復魔法のディカルです」


 ウェイラは人差し指を立てながらカリュゲドゥスに覚えて欲しい魔法を説明する。


「してどうやって覚えればいい?」


「簡単だよ私と戦って貰うの。やっぱり見て経験しないとわからない事ってあるよね?」


 カリュゲドゥスがウェイラに質問すると返ってきたものが意外過ぎてカリュゲドゥスは驚きの表情をした。


「……本当に戦っていいのか?」


 カリュゲドゥスは不安になりながらもウェイラに問いかけた。


「うん全力で来ていいよ。 相手してあげる」


 どこか好戦的な笑顔を向けながらウェイラは戦闘準備に入る。


「では、遠慮なく」


 カリュゲドゥスは情け容赦なく雷の魔法を放ったがウェイラに雷が当たる事は無く、魔力の壁に防がれていた。



「これが魔力の防御魔法シルガ」


「そうか」


 ウェイラが魔法の説明をしている間にカリュゲドゥスは容赦なくウェイラの手を掴みに行き、地面に伏せようとしたがすでにその場におらず空を見上げると妖精のように空を舞うウェイラの姿があった。


「……綺麗だ」


 思わず幻想的な光景にカリュゲドゥスは見惚れてしまったが状況がそれを許さず、よく見るとウェイラの周りには炎と氷と土の塊が浮かび上がっているのが見えてカリュゲドゥスに緊張が走る。


「カリュー君。それじゃあ実践! 私の魔法防いでみて?」


 ウェイラはどこか楽しげな表情を見せてカリュゲドゥスに容赦なく魔法の雨を降らせた。


「よしやるか」


 カリュゲドゥスは一呼吸入れて思考を切り替えてまず迫る炎を雷で破壊し、その後土と氷を魔力で強化した腕力で無理やり粉砕した。


「こらーダメ! ちゃんと魔法で防いで!」


 すると粉砕した土と氷の死角からウェイラが木刀を持って飛び出して来てカリュゲドゥスは思考が停止しそうになったがなんとか冷静になり今度は目の前に盾を発生させるイメージをした。


「シルガ!」


 魔法を詠唱したが想像よりも薄すぎる魔力壁が現れてその壁はウェイラの木刀により一撃で粉砕されるがカリュは迫る木刀をスレスレで避ける。


「くっ」


「甘いよカリュー君」


「シルガ!」


 冷徹にウェイラは言葉を発しながらゼロ距離で無詠唱の雷の魔法を放ったがカリュゲドゥスはもう一回盾の魔法シルガ唱えて防ぐ。


 目の前に現れた魔力壁は今度はしっかりとカリュゲドゥスが想像した通りの壁で魔法を遮った事が嬉しかった。


「いいねじゃあこれは?」


「「「「ビキバガ」」」」


「っシルガ」


 するといつの間にか周りにはたくさんの銀髪のウェイラがおり、四方八方から雷の魔法がカリュゲドゥスを襲ったがカリュゲドゥスは全方位に魔力壁を展開して防いだ。


「……はぁはぁ。 すごいねカリュー君ここまでやるの久しぶり。私楽しくなってきたよ」


 ウェイラは汗を掻きながらも笑顔を見せながら地面に手を当てて風を巻き起こしていた。


「ウェイラまだやるのか?」


 カリュゲドゥスはウェイラの様子を観察しながら息を整える。


「まだまだこれからだよ!」


 ウェイラが吠えるように叫ぶとカリュゲドゥスの体は上空へと打ち上げられていた。


「うおっ」


「どうする? カリュー君。 風魔法を使えない君はこのまま落ちたらぺっちゃんこだよ?」


 どこか試すように打ち上げられたカリュゲドゥスを見るウェイラの瞳には期待が込められており、その瞳に射抜かれたカリュゲドゥスの背には冷や汗が溢れ出す。


「やってやる! キアフ!」


 カリュゲドゥスは五百年前に戦った竜の姿と先ほど空を飛んで見せたウェイラの姿をイメージしながら空を飛ぶ魔法を唱えると体が無重力となり落下の勢いが弱まりそのまま地面へと降り立った。


「よしそこまで」


 ウェイラは手をパンと叩くとカリュゲドゥスに近づいて来た。


「ウェイラさっきから急に木刀を持って来たり、ウェイラが増えたりと怖かったぞ」


 カリュゲドゥスは思った感想をそのままウェイラに伝える。


「いやー久しぶりに全力だったなぁ」


 そんなカリュゲドゥスの質問を介さず汗を流しながら背伸びをする。


「おい話を聞いているのか? 君は」


「さて最後に回復魔法を教えます。さぁ腕を出してカリュー君」


「はぁ。 やれやれ」


 どうやら質問には答えずこのままゴリ押しで魔法を教える事をを続行すると言う事らしい。

 カリュゲドゥスは渋々自身の右腕をウェイラに突き出してウェイラの言葉を待った。


「ディカルは繊細な魔法コントロールが必要な魔法です傷口一つ一つに丁寧に練った魔力を流し込んで体の再生のイメージをしてみてね? じゃあやってみせるよ? 見ててディカル」


 ウェイラの手の平から温かい緑の光がカリュゲドゥスの右腕をじんわりと癒していくそれが心地よくてカリュゲドゥスは眠りそうになる。


「あれ? 意外と魔力を使わずに早く治っちゃた?」


 ウェイラの声が聞こえて思わずウェイラを顔を見てみるとどうやら自身の回復魔法の効果に戸惑いを覚えているようだった。


「どうかしたか? ウェイラ」


「ううんなんでもない」


 ウェイラは自身が不安感を拭うように首を振った。


「さぁカリュー君自分の体を自分で治してみて」


「分かった」


 カリュゲドゥスはウェイラの指示通り自身の魔力と傷跡を認識して傷跡に魔力が巡るイメージしたらそこが魔王時代のように再生したイメージで治していくとみるみる傷口は癒えていく。


「すごいここまで自分の傷を早く治す人初めて見た」


「そうか?」


 カリュゲドゥスはウェイラに褒められてとても嬉しい気持ちになる。


「あっ、ちなみに呪詛魔力持ちは相手をディカルで治療出来ないから注意してね? 薬草で作った薬液は大丈夫なんだけどね それだけ気をつけてね?」


 ウェイラはカリュゲドゥスに指を突き出したながらディカルの注意事項を説明してくれた。


「分かったウェイラしっかりと覚えておこう」


 カリュゲドゥスはウェイラの発言を理解して頷く。


「カリュー君どうだった? 私の授業?」


 手を後ろに組みながらウェイラは笑った。


「ああ実りのある時間だったありがとうウェイラ」

こうしてウェイラによる補助魔法の授業は終了した。


「やぁ二人とも仲良くしているようだね?」


 すると後ろから声が聞こえて振り返るとタルゼが魔力を渦巻かせながら立っていた。

 背景の夕日も相まってとても恐ろしい怒りの魔人のようにも見えた。


「お父様。 カリュー君に補助魔法を教えていました」


「ウェイラ。 この魔力量の減り方だと魔力奥義を使ったね?」


「ぎくっ」


 タルゼがウェイラを睨むとウェイラは冷や汗を掻きながらタルゼから目線を逸らした。


「ごめんなさいお父様」


 カリュゲドゥスにはよくわからないが使ってはいけない魔法をウェイラは使ってしまったのだと察した。


「タルゼ。 精霊魔力の魔力奥義とは?」


「ああ。 君はもう見てしまったから言うけれど、魔法属性のその先にある力。これを魔力奥義というんだよ」


「魔力奥義?」


 初めて聞く単語でカリュゲドゥスは首を傾げた。


「ああ、魔力奥義は秘技でね魔力を大量消費するだけではなくて長時間使い続ければ魔力属性の性質に大きく肉体が引っ張られてしまうんだ」


「例えば?」


「呪詛魔力持ちならば復讐や怒りに飲まれ我を失ってしまう。神天ならば感情を失う。 竜魔力は竜になり、精霊は自身の体が魔力となって無に帰る無論魂までね」


「ウェイラなんでそんなものを使った!? たかが手合わせ程度で!」


 カリュゲドゥスは言われた事の大きく驚きのあまりウェイラに怒号にも近い叫びを上げた。


「ごめんね実際に自分が魔力奥義を使えるか試したくてやってみちゃった。心配させてごめんね?」


「無闇に使うんじゃない。 心配をさせるなウェイラ」


「……うん分かっているよ。 分かっているから」


 そんなカリュゲドゥスを心配をウェイラはどこか儚げな笑顔を見せた。

 そんな儚げな笑顔の裏にある闇を垣間見てカリュゲドゥスは決意した。

 この優しい女の子を決して不幸にして無に返すことを絶対にさせないと。


「さてとりあえず夜ご飯にしようか?」


「おっ。 いいなそろそろ腹が減っていた所だ」


「私もです。お父様!」


 タルゼの提案に乗りカリュゲドゥスとウェイラはスキップしながら食堂に向かう。


「今日はカミナリボアのステーキだよ」


 タルゼが今夜の夕食を言いながらカリュゲドゥス達のテーブルの上にカミナリボアのステーキが置かれる。


「そう言えば召使いとかはおらぬのか?」


 よく見ればこの屋敷には貴族ならば普通はいるはずであろうメイドや執事がおらず、それが不思議でたまらないカリュゲドゥスは質問を投げかけた。


「まぁ事情があってね? わざと執事やメイドを雇っていないんだ まぁ私は洗濯も掃除も好きだからいいんだけどね?」


 タルゼはカリュゲドゥスにウィンクしながら飄々と答える。


「そうかではいただきます」


 カリュゲドゥスは裏の事情があるのだと軽く察しながら思考を意識の外へ追いやり目の前にあるカミナリボアのステーキを思う存分に食べる事にした。


「うまい」


 ステーキをナイフで切り分けてフォークを刺して口の中へ放り込むと肉汁が飛び跳ねて美味かった。


「しかしカリュゲドゥス君、君はどこでテーブルマナーを学んだんだい?」


「うん?」


「まぁねとても剣奴の子供のような無教養な所が見えないし、無詠唱で雷の魔法ビキバガを使ったりと君は不思議だ」


 タルゼは顎に手を当てながらカリュゲドゥスを見つめる。

 しかし糸目なので本当にカリュゲドゥスを見ながら呟いているのかどうかは分からないがカリュゲドゥスはタルゼの質問を返すことにした。


「実は教養の礼儀作法を教えてくれた貴族がいただから我はテーブルマナーが出来る」


 カリュゲドゥスは切り分けたステーキを口へパクパクと入れながらタルゼの質問を返す。


「本当にそれだけなのかい? それにしてもおかしいぐらい貴族や王族としての風格があるのが不思議でね。 君本当は貴族か王族の生まれなんじゃないのかい?」


「そんなはずないだろうタルゼ 我は正真正銘剣奴の子供だ」


 カリュゲドゥスは両手を広げながら自身をアピールする。


 確かにカリュゲドゥスは五百年前に遠雷の魔王としてあらゆる種族、国を蹂躙した。

 元々のカリュゲドゥスの口調は俺であったのだがある日出会った武闘家を名乗る貴族の女が現れて突然、教養がなければただの阿呆だと言われて無理やり人間達の帝王学や礼儀作法というのを教わったのだが一人の強さだけを求めてきたカリュゲドゥスが人を率いるという事の大切さや礼儀作法というものを魔王時代のカリュゲドゥスはさっぱり理解出来なかったが教養を教えてくれた代わりにその武闘家貴族の命を奪わなかったし、確かにその教えはうろ覚えだがしっかりと今のカリュゲドゥスの助けになっている。


「まぁ君が何者かはもう詮索はしないよ。君は君だ」


「そうよお父様。 カリュー君はカリュー君よ!」


 ウェイラはタルゼの結論に頷き、タルゼはカリュゲドゥスの詮索を諦めて黙々とカミナリボアのステーキを切り分けて食べ始めた。


「ごちそうさまでした。 先に失礼して風呂に入らせて貰う」


 カリュゲドゥスは手を合わせてウェイラとタルゼよりステーキを食べ終え、風呂に行くことにした。


「風呂はお風呂を洗ってからで沸かしてね?」


「分かった」


 風呂に行こうとするとウェイラから風呂洗い頼まれてカリュゲドゥスは風呂場に行き風呂を洗ってシャワーを浴び、体を洗い流して体を綺麗にする。

 そしてそのまま自身のベットへダイブして疲労感を感じながら眠りについた。


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