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00  作者: 佐々木 青
序章 彼方の夢
3/22

少年は夢を見る 2

 二人が数分ほど歩くと、天井が抜けている場所に辿り着いた。地下施設の方に損傷が見られるため恐らくここが06が入ってきた場所なのだろう、とミツルは思う。ミツルは顔を上げ、抜けた天井の穴を通して空を見る。

 そこにはこの世のものと思えないぐらいの美しい景色が広がっていた。

「…こんな綺麗な星空、初めて見た。」

 ミツルが感嘆した声で呟くと、それが耳に入ったのか06は納得したように、ああ、と言葉を溢す。

「ここら一帯は空気が澄んでるから星が綺麗に見えるんだよ。てっきりオマエは見てるもんだと思ってたがそうでもないのか?」

「地下牢に戻されるときは基本的に夕方が多いから、夜に外に出ることはあまりないかな。それに夜だと奴隷が逃げたときに対応しにくいし。」

「ふーん…奴隷に対して酷い扱いをするクセに逃げるのは許さないのか。」

 06が不思議そうに言うと、ミツルは怪訝そうに答える。

「当たり前だよ、奴隷商にとって奴隷は商売道具だし。奴隷がいなければ商売が成り立たないでしょ?」

 その言葉を聞いても、06はあまり納得していない様子で首を傾げる。

「それなら奴隷のことを、こうもっと、丁重に扱うべきじゃないか?商品なんだったらなおのこと大切にすべきだろ。オレには人間がそんなことをして何の意味があるのかよくわからないぜ。」

 理解できないと言わんばかりの顔をしつつも、06の視線はミツルの言葉を促している。

「それは…そうだけど、そもそも人っていうのは自分より下の人間には優しくしたくない生き物だからね。」

 皆、いい気持ちだけ味わっていたいっていう思いが根幹にあるんだよ。

 そう遠い目をしながら06に語るミツルから、つまらなさそうに06は視線を外した。

「人間ってのはよくわからない生き物なんだな。…まあ、そういうところが面白いとも言えるが。」

「…?面白い?」

「…いや、なんでも。」

 はぐらかされているような気がしたが、その話題にミツル自身そこまで興味を抱いていなかったので、06の言葉を聞かなかったことにした。

「…さて、そろそろ地上に出ないとな。」

 06はそう言って、辺りを見回す。

「なあ、ミツル。オマエ、いつもどこから地下牢に戻されてるんだ?」

 地上に戻るのに良い経路が見当たらなかったようで、06はミツルに問う。

「…戻されるときは目隠しをされるから、はっきりとした場所はわからないけど…感覚的にはこっちだった記憶があるよ。」

 ミツルが指をさした方向を06が見ると、そこには瓦礫の山があった。

「……無理そうだな。」

 口角を引き攣らせながら06は言う。

「…次、こういうことをするときはもっと計画的にやるのをおすすめするよ。」

 ミツルの言葉に06は聞こえないふりをする。痛いところを突かれたらしい。

「…というかこの、06が空けた穴を使って外に出るのは無理なの?高さはあるけど、キミならちょっとジャンプしたら外ぐらいなら出れそうな気がするけど。」

 大きく空いた天井の穴を見て、ミツルは06に言った。そうすると06は少し驚いた表情で

「…よくオレが空けたってわかったな。」

 と返してきた。

 そんな06の言葉に、またまたミツルは呆れたような顔をする。

「はあ…むしろこの状況でキミ以外に誰が出来るのさ。奴隷商がわざわざ施設を破壊するとでも思ってるの?」

 ミツルのその顔を06はどうやら見慣れてしまったようで、何の反応を示すこともしなくなった。それが少し面白くなかったミツルだったが、追及しても意味がないことはわかりきっていたので話を元に戻すことにした。

「まぁそれはそうと…結局どうなの?この穴を使っての脱出ってやっぱり難しかったりする?」

「…できなくはないけどな。ただ、その場合オマエはどうするんだよ。この高さじゃオマエを引っ張って外に出すのは難しいぜ?」

「…そうだな…えっと、確かロープがこの近くの牢にあったはずだから…。それを06に持って行ってもらったら、なんとかできそうじゃない?」

「オマエがそれで登れるなら別にいいんだけどな。オマエみたいな、さっきまで奴隷だったヤツがそれだけの体力を持ってるとは到底思えないんだが。」

 疑うような目でミツルの体に視線を移す06に

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」

 とミツルは一言放つ。

「ボクは確かに奴隷ではあったけど、奴隷だからこそ散々こき使われてるのもあって体力自体に不足はないと思うよ。」

 そう確信を持ったような口調のミツルを見て、06は表情を緩め

「わかったよ。」

 と言った。

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