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山羊人族
俺に釣られてくるメイドにも理由はある。
先の理由で教育が受けられること。
俺がこの家当主の息子であること。
また、小銀貨も僅かとは言え理由の一つだと思う、小銀貨一枚でも、さほど汚くもないお店で昼に果物付きの食事が出来る位の価値はあるのだから。
だが一番大きな理由は俺の側に居れば、その日一日メイド長に小言を言われずに済むからではないだろうか? まぁ避雷針か避難所かと言ったところか。
俺も余程の事をしない限りは文句を言ったりはしないからな。
それを良い事に俺に釣られたにも拘わらず、お茶も淹れずメイドの仕事もしなかった者をメイドから下働きにした事もある、稀な事ではあるが。
午前中は頭痛がする程の教育を受けるが、教育係の山羊人族は二言目には「何度も書いて書いた紙を食べて覚えなさい」と言う始末。いい加減にして欲しい。
まだ専門教育が必要で無かった幼い頃は、狐耳メイドに丁寧に教わったもんだが、あの頃は内容も簡単で狐耳メイドも優しくしてくれてたのに……今では会えばお小言ばかり。
俺が何かしたとでも言うのか?