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狐耳
今日はどんなメイドが釣れるやらワクワクしながらその時を待つ。
二階の渡り廊下から下を眺めていると一人のメイドが歩いて来るのが見えた。
そしてそのメイドが近づいて来るにしたがいワクワクした気持ちが萎えてくる。
こいつは俺の最も苦手で嫌いな狐耳のメイドだ。
そんなメイドだが心の底では餌に食い付けと祈り願ってしまう。
もし食い付けば今日一日、狐耳メイドは俺の思うがまま、オモチャに出来る。
そうすればあの澄ました顔も少しは歪み俺の気も晴れたものに成るだろう。
いよいよメイドが餌に近付き微かに顔を上げた……が次の瞬間、既に顔を若干右下に反らし、狐耳を左右外側へと下げながら通り過ぎて行く。
何となくだがここまでタメ息が聞こえた気がして思わず声を荒げる。
「いや気付いたよね? 小銀貨を目にしたよね?!」
メイドまで届いた筈の俺の声は虚しくも独り言として僅かな木霊を残して消えゆく。
小銀貨だけならまだしも俺の声にまで気付かない振りとは……あのメイドは。
下ろし金の様にザラザラとした気持ちも別なメイドの現れで、まな板の様にさらさらな気持ちに成る。