メイドの言葉
奴隷商は「呪われた子」が何とか言っていたが、この場にはそんな事を気にしている者は居ない。
両親と狐耳メイドはその汚さを気にしている様子。
ならば汚れを落とし綺麗にすれば良いだけの事。
「俺がお風呂に入れて綺麗に洗います」
只の思い付きだったし、本気じゃ無いその場だけの言葉、帰ってメイドにでも洗わさせれば良いと思った、だがそれは蝶々の羽ばたきバタフライ効果の起点となってしまう。
「それは良い、夜の教育をさせよう」
父は顔をニヤニヤさせて頷きながら言う。
「よ、よ、よ、夜の……教育なら……わ、わ、私くしめが……が、がんばり……」
珍しく狐耳メイドが父に向かって具申する、と言えば格好良いが、俯いて太股に合わせた両手を挟み掌を擦り合わせながらモジモジ、声も小さくボソボソ歯切れ悪く吃音。
聴くに耐えない言葉に父は狐耳メイドを見る。
それでもメイドは説得の言葉を探してきた。
「坊っちゃ、いえ、若様には、お、男の奴隷の方が一緒に遊べ良き競争相手に成ります」
「ち、力も有り重い物も持たせられ、将来は護衛として使えます」
メイドの言葉に父が頷き始め、傾いた父の心を動かす言葉を探そうと思った時、割って入ったのは母。
「ダメよ、貴女にはもっと大切な仕事が有りますからね」
「あ、あの、夜の教育よりももっと大切な仕事で御座いますか?」
「だから教育は、その物に任せましょうね」
何だか母は嬉しそうな含み笑いをしながら話す。
狐耳メイドの言葉にも一利有ると思うが、所詮はメイドの言葉、そして今日は俺の誕生日、結局覆すことは出来なかった。
それでも全てが無駄と言う事では無い、俺の両親に覚悟を知れ渡し、俺の心に何かの疑問を残したのだから。