11/18
欠点
「坊っちゃま、もし猫人族をお探しでしたら奥には更に綺麗な物が有ります」
奴隷商は「呪われた子」が何とか言っていたが、此の場にはそんな事を気にしている者は居ない。
何故なら屋敷にはそんな者が沢山居るから、いや俺の為に集められたと言っても良い。
貴重な書物を紙を食べる癖で台無しにしてしまい、集蔵院を解雇された山羊人族。
角が巻角ではなく不吉と言われる螺旋角で、遠目からは山羊人族に見えてしまう羊人族。
垂れ耳で手の短い犬人族。
そして狐耳のメイドも……。
そもそも俺が竜人族なのに逆鱗を持たずして産まれた事を、母が気にしたせいかもしれない。
そして逆鱗が無い事で気弱だとよく父に言われた。
そんな時は決まって狐耳のメイドが「気弱では無く、お優しいのです」と言って慰めてくれた。幼い頃は。
だが何時からだろう「お強くおなり下さい」なんて言い出しつれなく成ってしまったのは?
もう、あの言葉は聞けないのだろうか?
もし聞けたなら、また狐耳のメイドに優しく成れるのに。