次女ともしかしたらあるかもしれない未来(ユニーク100万人キリ番記念)
何気なく確認したら、ユニークがちょうど100万人という色んな意味で驚きの数字になっていたので、その勢いのまま出来た話です。読んでいただいて、本当にありがとうございます。
いつもよりちょっとだけ糖度高めの未来(?)
激しく窓にうちつける雨音で目が覚めた。
ここはオルドラン公爵家のセレスの部屋。この部屋を与えられてからすでに数年経っているので、さすがに目覚めた瞬間に、ここどこ?、とはならない。
もぞもぞとしてベッドから降りると、枕元の明かりを灯してセレスは窓へと近寄った。
今夜は雨が激しく、遠くに稲光が見える。雷鳴も聞こえてきたので、その内、こちらの方にも来るのかもしれない。
分厚い雲が夜空を覆っているので、月も星も何も見えない。
神話では、夜の神と月の女神、そして星の女神の三神が夜の世界を守っているのだという。
ただ、天上にいる姉たち曰く、夜の神は、生真面目でどこでキレるか分からない月の女神と、楽しい事が大好きで何でもかんでも光らせようとする星の女神に挟まれて、いつも眉間にしわが寄っているそうだ。
格好良いのに眉間のしわのせいで、密かに「おじい様」と呼ばれているらしい。
「さすがにこの天気だと、何も見えない……」
月も星もなく、光源といえば雷だけというのは、ちょっと怖い。月の女神の娘であるセレスは当然ながら月の加護があるし、母の親友である星の女神も守ってくれている。夜の神も何だかんだと気にかけてくれているそうなので、夜そのものは怖くないのだが、何も見えないのに雨風雷という音だけ鳴り響いているので全てが怖く感じる。
そんなことを考えていたら、かちゃり、と扉が静かに開いた。
入ってきた人物は、部屋に明かりが灯っていることに驚き、セレスが窓に近いところに立っているのを見て目を和ませた。
「起きていたのか?」
「音で目が覚めてしまって」
「今夜中には止むそうだから、明日は嵐の去った後の晴天というやつになるな」
「はい」
セレスの横に立ったジークフリードは、同じように外を見た。
先ほどまでいた奥の部屋ではそこまででもなかったが、この部屋は窓の作りが大きいので、外の音がよく聞こえてしまう。
「……お酒臭い……」
「あぁ、悪いな。オースティに付き合わされた」
湯浴みをして服も着替えたが、身体に残ったアルコール分までは消せない。
たわいもない話をしながら飲んでいたはずなのだが、なぜかオースティに絡まれて、ディーンにも絡まれて、二人から謎の勝負を挑まれて、最終的に負けた。
「カードで義父殿に負けたから、明日、マリウスが持ってくる異国の珍しい品物の支払いは全額俺持ちだ。好きな物を好きなだけ買ってくれ」
にやにやしながらカードをめくったオースティの顔にはムカついたが、負けは負けだ。大人しく支払いはする。それにマリウスがオルドラン公爵家に持ってくる品物なら間違いはないので、偽物を掴まされるとかそんなことにはならない。
「だが、義母殿や義弟たちの買い物はいいとしても、義父殿の買い物まで俺持ちなのは納得いかない気がする」
悔しそうなジークフリードに、セレスはくすくすと笑った。
「お父様、強いですから」
「今日こそは勝てるかと思ったが、無理だった。だが、まあ、遠慮はするなよ。妻やその家族に贈り物をさせてくれ」
「ふふ、ありがとうございます。ジーク」
ふわりと笑う姿は、初めて会った時よりもずいぶんと大人びた。もう少女とは言えない、立派な女性だ。
セレスが傍にいてくれること。それがジークフリードにとって、神様からの贈り物だ。
「あ、そういえば、ユーフェさんたちへの贈り物も選ぶつもりなんですが」
「いいよ。赤ん坊の用品も?」
「はい」
ユーフェミアとアヤトの間に生まれた可愛らしい赤ん坊は、顔立ちと髪や目の色が父親によく似ていた。性格は……父に似たらそのまんまアヤト二世だし、母親に似たら、あの外見で行動力有り過ぎの子供になりそうなので、出来ればどちらにも似ていない大人しい感じになってほしいと思っているが、その辺はジークフリードは諦めている。しょせん、あの二人の子供だ。
「さ、俺たちも寝よう」
「はい」
返事と同時にセレスは夫に抱きついた。
「どうした?」
「……あたたかくて、気持ちいい……安心します」
「これはぜひとも家に帰ってからもやってもらいたいな。ここでは、俺は大人しく抱き枕になるしかない」
抱きついてきた妻を抱き上げてベッドに向かって歩き始めたジークフリードの言葉に、セレスは返事代わりにその胸に顔を埋め、さらにぎゅっと抱きついたのだった。
ふと思ったのですが、これ、猛獣さんの方だとアリアさんが抱き上げるのかな……。