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侯爵家の次女は姿を隠す。(書籍化&コミカライズ化)  作者: 中村 猫(旧:猫の名は。)
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次女と薬草園②

読んでいただいてありがとうございます。

 ジークフリードから渡された本を開くと、薬草について事細かに書かれていた。

 トーイという薬師は、きっと細かいことまで気になる性格の持ち主だったのだろう。

 薬草の絵の横には、びっしり色々なことが書かれてある。


「へぇー、冬場と夏場で根の部分でこんな違いが……」


 薬師ギルドに置いてある本には書かれていなかったことも書いてあった。

 効能としてはどの季節に採取された薬草でも変わりはないのだが、根の太さなども書かれていた。


「えっと、これはさっき見かけたかな」


 本を見ながら薬草園の方に出ると、雑草をかき分けて目当ての薬草を見つけた。


「腹痛に効く薬草?でも、これって、今は使ってない薬草よね」


 この時代から改良を重ねて今の薬になっているのか、それとは別でこの薬が存在していて今は忘れられているだけなのか、アヤトにも聞いて調べないと。

 それに、この薬草も薬師ギルドでは見かけたことがないから、ちょっと調べたい。

 うきうきしながら本に書いてある薬草を採取していると、ジークフリードが袋を差し出してくれた。


「ありがとうございます」

「ヒルダに持たされたんだ。どうせ、セレスはどこかで薬草を採取するからって」

「あー、はい。そうですね」


 そこら辺の道端でもきっとやる。


「ここは逃げないから、採取するのは少しだけにしておけ。必要ならまた採りにくればいい。とりあえず、その本を読むのを止めようか」


 ジークフリードに笑顔で言われたのだが、その笑顔から少々圧を感じる。


「セレスは部屋の片付けを始めたら、見つけた本を読んで一日が終わりそうだな」

「う……それは……」


 否定は出来ない。

 実際、部屋を片付けようとして本を読んで一日が終わってしまうことは多く、全然片付けは進まない。

 最終的にいつもディーンに本を取り上げられて、見張り付きでようやく何とか片付けをするくらいだ。


「懐かしい本って、ついつい読み始めちゃいませんか?」

「その気持ちは分かるが、まずはやるべきことをやらないとな」


 ジークフリードはどちらかというと見張りをする方なので、違うことをやり始める人間には慣れている。


「他には何もなさそうだから、もう少ししたら帰るか」

「はーい」


 ここは素直に従った方がいいと感じたセレスは、自分で本を持っていこうとしたのだが、ジークフリードに取り上げられた。


「本は俺が持つから、セレスは薬草の入った袋をちゃんと持っていけばいい。他の薬草を採取し始めたら、本のことを忘れそうだしな」

「……よろしくお願いします」


 本も好きだが、薬草はもっと好きだ。途中で採取する時に本を置いたら、夢中になって忘れてしまうかもしれない。


「あ、ジークさん、ちょっと待ってください。アレも採りたいです」


 袋だけを持ったセレスは、開き直って薬草の採取を始めたのだった。


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