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侯爵家の次女は姿を隠す。(書籍化&コミカライズ化)  作者: 中村 猫(旧:猫の名は。)
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次女と揺れる王都②

読んでいただいてありがとうございます。少々、短めです。

 少女にとって、王妃は便利な人間だった。

 ちょっと方法を教えてあげれば、後は自分で勝手に動いてくれる。

 少女は、彼女の望みを知っていた。

 だから、耳元で心地良い言葉を囁き、方法を教えた。

 だって、それくらいしないと、自分が生まれた意味がないから。

 いくら感情がないと言われていても、向けられた悪意は何代にも渡って少しずつ溜まっていき、本来なら有り得ない少女を生み出した。

 正確には少女の中に潜む魂を。

 もう一人、少女の中には別の魂が入り込んでいるが、そちらは反抗出来ずにただ黙っている。

 それでいい。

 邪魔さえしなければ、そちらに手を出す気はない。

 少女は、目の前で優雅に微笑む王妃に、瓶を差し出した。

 

「……本当に、これで取り戻せるの?」

「はい」

「銀の飴とやらに邪魔されてるのではなくて?」

「大丈夫です。これには、太陽神様由来の薬草が入っていますから。月の女神の力はそれで相殺されます」


 それはかつて、雪月花を失った国王が生み出した秘薬。

 彼女を失った国王が、耐えきれずに作った物。

 彼女の存在を、その強烈な感情を忘れることで、残りの人生を生きることが出来た。

 けれど、その次に雪月花を愛した国王は、葛藤の末、その薬を封印した。

 忘れることが、最も苦痛だと思ったからだった。


「そう。ふふ、いいわ。貴女の言うことなら信じてあげる」


 かつて、とある男性を排除するための力を貸してくれた少女を、王妃は信じることにした。

 それはとても大がかりなことになってしまったが、おかげで目的は達成出来た。

 しかも、王妃が関与したという証拠を残すこともなく。


「取り戻してくださいませ。貴女様のお望みのままに」


 それが貴女のずっと昔からの願いだと知っている。

 その器は変わったが、宿っている魂が望んでいることは同じだ。

 あぁ、本当に愚かな貴女。

 常に己を最優先に置いている貴女では、あの方は振り向かないというのに。

 一番上の姉や末の妹のように、他者を気にかける者に興味を持つというのに。

 権力だけは持っているから、とても都合の良い女性。

 少女は、女性がうっとりと微笑む姿を見ながら、小さく笑ったのだった。


 

 

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