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侯爵家の次女は姿を隠す。(書籍化&コミカライズ化)  作者: 中村 猫(旧:猫の名は。)
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パメラとヨシュア(コミカライズ配信記念)

読んでいただいてありがとうございます。

コミカライズが7月25日から正式に連載開始となります。

18日の正午からコミックガルドのサイトトップにバナーが出るそうなので、詳しくはそちらをご覧ください。

シーモアでは、7月23日より先行配信になる予定です。

すごく綺麗ですよ。そして、動くセレスちゃん、可愛いッス。

 出勤のために家の扉を開けると、昔なじみの顔がにへらと笑っていた。

 取りあえず無言でそのまま閉めた。


「ちょっ!パメラ、俺だよ、俺ー!」

「俺という知り合いはいないので、お帰りください」


 冷たく言うと、慌てたような感じの後で、ごほん、という咳が聞こえた。


「幼馴染のヨシュアです」

「そうですか。お帰りください」

「え?待って!ぜひ、お話をさせてください!お願いします」

「そういうご用件でしたら、吉祥楼の方へどうぞ。あなたの好きな綺麗な大人の女性が揃っていますよ。好きなだけお話されればいいと思います」

「そうじゃなくて!それに、何でそういうことは覚えてるんだよ!」


 昔、何気なくヨシュアに好みの女性を聞いた時の返答が、綺麗な年上のお姉さん、だった。

 それと、胸はある方がうれしいとも言っていた。

 こういうことを言える程度には親しい間柄だったのだが、それはもう過去の話だ。

 今のパメラは、仕事に全く関係のない男と親しくするつもりはない。


「仕事に行きたいので、お帰りください。それとも、誰かに頼んで人を呼んだ方がいいですか?最悪の場合、花街に出入り禁止になりますが、それでもよろしいですか?」

「花街に出入り禁止は勘弁してください。俺の仕事にも支障が出るので!じゃなくて、パメラ、話をしたいんだ」


 その真剣な声に、パメラはため息を吐くと、扉を開けた。


「パメラ」

「私は貴方に有益な話は何も持っていません」

「……十年前のことなんだ」

「聞かれたことは全てあの当時、お話しました。その時の調書を見れば分かると思いますよ。では、仕事に行きますので、失礼いたします」

「ねぇ、パメラ、その話し方、止めてくれない?」


 ヨシュアが辛そうな顔をしてそう言ったが、パメラは冷たい目で見ただけだった。

 この男は、必要ならいくらでもこういう表情を作れる。

 本心がどうであれ、どんな表情でも作れるのだ。

 それを知っているから、パメラには嘘にしか見えなかった。


「……昔はどうであれ、今は赤の他人ですから。何か問題でもありますか?」

「……すごく俺の心が痛いんで、マジで止めて。お願いだから」


 ヨシュアの懇願する様子に、パメラはくすりと笑った。

 まるでヨシュアが本気みたいに見える。

 それほどまでにパメラから何かしらの情報がほしいのかと思ったら、笑えてきた。

 そもそも、パメラが知っていることは十年前に話をしてあるし、最近思い出したことは、ユーフェミアを通じてアヤトに情報が渡っているはずだ。


「パメラ?」

「何でもありませんわ。そろそろ本当に遅れてしまうので、どいていただけますか?それとも、貴方も吉祥楼に来られます?一番人気、とはいかなくても、それなりに人気の女性は空いていますよ?」

「……それは、パメラも?」

「はい?私?ふふ、冗談がお好きなようですね。生憎と私は裏方の人間ですので、表には出ません」

「本当に少しでいいから、話をしたいんだ」

「……いいでしょう。では、明日の昼間でいかがですか?」


 このまま本当に吉祥楼に来られても困るので、パメラは仕方なくそう提案した。


「うん。迎えに来るから」

「来なくていいです。大通りにあるカフェを覚えていますか?」

「噴水の近くの?」

「はい。そこで待ち合わせしましょう」


 ただでさえ、今、家の前でこんな話をしているのだ。明日も迎えに来られたら、目立ってしょうがない。

 ユーフェミアじゃあるまいし、今更十年前の関係に戻れるわけもない。

 むしろ、ユーフェミアは十年前より進んでしまったけれど。

 ヨシュアにもし耳とか尻尾が付いていたら、きっとしょんぼり下がっているんだろうなー、とか考えながら、パメラは仕事へと出かけて行った。


 

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