次女と秘密の薬草①
読んでいただいてありがとうございます。五巻を購入していただいた皆様、ありがとうございました。六巻の加筆もがんばります。
「ジークさん、古い本を売っている店があれば行きたいです」
古い本を売っている本屋ならば、ひょっとしたらトーイが残した本が売られている可能性があるので、それを確認したい。
「本か。そうなると狭い路地の方になるな」
「そういう本屋って、大通り沿いにはあまりないですよね」
「はは、確かに。王都でも本屋街はなぜか狭い路地にあるな」
「でも、ちょっとわくわくします。探検をしているみたいで」
「そうだな。たまに、人に知られていない名店がそういう場所にあるな。見つけると嬉しくなる。自分だけの馴染みの店が出来たみたいで」
「分かります。ご飯の美味しいお店も嬉しいですが、私の場合は薬の道具とか薬草とかで珍しい物を扱っている店を見つけると、すごく気分が上がります」
セレスは王都に一軒、そういう店を知っている。
薬師ギルドにもなかなか入ってこない薬草が置いてあったりするので、定期的に見に行っている店だ。
見つけたのは偶然だったが、まだ子供だったセレスにも丁寧に対応してくれた。
後でアヤトに聞いたら、アヤトもその店の常連だった。
ちなみに店主は先代のお友達で、たまに一緒に薬草探しに行く仲なのだそうだ。
「狭い道をどんどん進んで行くと、本当にこれで合っているのか心配になりませんか?抜け出せなくなりそうで……」
「歩きならどうとでもなるが、馬車で変な道に入ってしまうと抜け出せなくなるからなぁ」
基本馬車が通れる道は決まっているが、たまに間違えて狭い道に入ってしまった馬車を見かけることがある。馬や人間はともかく、馬車本体を戻すのは大変そうだった。
まだ王都の道に慣れていない新人が、年に一回くらいやるらしい。
「絶対に違うだろうな、と思いつつも進んでしまうのはなぜでしょう?」
「ひょっとしたら抜ける近道があるんじゃないかと思ってしまうからかな」
「だいたい行き止まりになって引き返すことになりますよね」
「そうだな。だが、セレス、やはりこういう道は行ってみたくないか?」
ジークフリードが見ている方に、何だか古ぼけた印象の細い道があった。
道の左右にある建物が古いので、道全体が年代が経っている印象を受けるのだ。
「ちょっとわくわくします」
「セレス一人で行くのは反対するが、俺と一緒なら問題ない。行ってみるか?」
「はい。ぜひ」
こういう道が嫌いではないセレスは、きらきらした瞳でジークフリードを見て大きく頷いたのだった。