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侯爵家の次女は姿を隠す。(書籍化&コミカライズ化)  作者: 中村 猫(旧:猫の名は。)
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5巻発売記念 エルローズの悩み

読んでいただいてありがとうございます。

 ドレスのデザインを描きながらエルローズはため息を吐いた。

 友人から、幸せが逃げるよ、と忠告されたが、つい先日まで愛している女性に逃げられていた男の言うことなど気にしていない。

 そういうアヤトは、十年ぶりに捕まえた恋人といちゃいちゃしているのかと思いきや、屋敷の侍女やら身近な女性たちに恥を忍んで色々と相談した結果、やり方が間違っている、と怒られたそうだ。

 逃げられても仕方がない、よくユーフェミア様が許してくれましたね、ユーフェミア様の寛大なお心がすごい、など忌憚のない貴重な意見が聞けたと空笑いしていた。

 でもアヤトは、経緯はどうであれ、愛する女性とようやく心を通わせて幸せそうだ。

 翻って自分はどうだろう。

 リヒトとどうなりたいのだろう。

 好きという想いだけで突っ走っていけるような性格はしていない。

 

「……わたくし、臆病者よね……」


 ティターニア公爵とオルドラン公爵の妹ならば、身分的には釣り合っている。

 国王の許可だって出ている。

 けれど、それでも躊躇してしまうのは、告白してそれで今の関係まで壊れてしまったらどうしようという思いが心のどこかにあるからだ。

 たまに会って、話をすることさえ出来なくなってしまったらどうしよう。

 そんな細い関わりさえなくなってしまったらどうしよう、と心が怖がっている。


「もっと子供の頃に素直に言えていたら……」


 そうしたら、今頃、彼の妻として隣に立てていただろうか。

 けれど、それだと今の仕事に就いていなかった可能性もある。

 服を作るのは好きだ。

 この仕事を辞めたいと思ったことはない。


「いいえ、諦めるのは嫌よ。この仕事も……リヒトも、諦めたくない」


 迷いはまだある。

 けれど、リヒトを諦めたくない気持ちは変わらない。

 

「今度会ったら……」


 忙しい宰相閣下に会えるのがいつになるのか分からないけれど、まずは拙くとも気持ちを伝えよう、エルローズはそう決意した。

 明日になったらまた迷いが生じるかもしれないが、毎日そう決意すれば、いつかそれが勇気に変わると信じて。 

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