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侯爵家の次女は姿を隠す。(書籍化&コミカライズ化)  作者: 中村 猫(旧:猫の名は。)
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次女と岩の神殿④

読んでいただいてありがとうございます。オーバーラップさんから、4月25日に5巻が発売されます。よろしくお願いします。

 自由に好きなようにしていい薬草が目の前に現れたセレスは、ジークフリードを放置して夢中になった。

 好きなように見て、採取して持って帰っていいのだ。

『遠慮?何ソレ?美味しいの?』状態だ。


「あ、これ、リーノ草?でも少し塩味がする」


 無造作に葉っぱを取ると迷うことなく口の中に入れたセレスを、ジークフリードははらはらして見ていた。

 セレスに毒は効かないとは思う。

 けれど、だからと言って、よく知らない草を迷いなく口に入れないでほしい。

 その辺りは師匠のアヤトと一緒だ。

 薬師ギルドの本部に詰めている者たちはだいたい同じことをする。

 正体が判明している薬草なら、とりあえず食べるのは何なのだろう。

 彼らに迷いなど一切ない。

 よく、ギルド長や先代と一緒にしないでください、と言っているが、ジークフリードから見れば間違いなく一緒の類いの人間だ。


「苦い?潮風を浴びて育ったせいか、ちょっと違う効果が出そう」


 別の薬草を口に入れながらセレスがそんな感想を言った。


「セレス、いくらそれが薬草だと分かっていても、すぐに口に入れるのはどうかと思うぞ?それに違う効果があるかもしれないのだろう?それがもし毒だったらどうするんだ?」


 すごく一般的な意見をジークフリードは言ったつもりだった。なのに、セレスはきょとんとしていた。


「え?……だって師匠から、岩の神殿の薬草は食べると違いが分かるって聞いたんです。聞いたからには食べてみないと」

「アヤトがそれで腹を壊そうが何しようがかまわないが、セレスがもしそれで苦しんだら俺が嫌だ」


 ジークフリードに真剣にそう言われてしまうと、気軽に食べられない。

 確かに、あまりよく知らない薬草を食べてお腹を壊した同僚はたくさんいる。

 たまに、トイレの主と化している者も。

 それでも懲りずにやってしまうのが、悲しい薬師の性というものだ。

 

「……そうですね。気を付けます」


 気を付けるだけで、絶対に止めますとは言ってない。

 これからは、気を付けて食べるだけだ。

 そもそも本職でないジークフリードではどれが薬草になるのか正確には分からないはずだ。

 セレスだって毒草だと分かっている物や、見たことのない未知の薬草ならそう簡単には食べない。

 ここはきちんと生産管理をされてきた薬草園だからこそ、安心して食べているので、さすがに野生の薬草ではやらない。……たぶん。

 いざとなれば、知ってる薬草です、と言い切ってしまおう。

 さすがに今はもう食べられないので、匂いを確認したり、管理をしている神官たちに違いを確認するだけに留めた。

 ジークフリードと一緒にいられるのは嬉しいが、薬草に関してはアヤトと一緒の方がいいな、とセレスはこっそりと思っていた。

 アヤトだったら間違いなく一緒に食べていた。


「……セレス、言っておくが、もしアヤトと一緒にここを訪れる機会があるとしても、その時は俺も一緒に来るからな」

「えぇー」

「不満そうな声を出すな。まったくもう」


 セレスが考えていることがすぐに分かったジークフリードにすぐに釘を刺されたセレスの姿を、神官たちが微笑んで見守っていた。

 

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― 新着の感想 ―
毒も薬も紙一重、用量・利用法の違いでしかないってのが結構・・・
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