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侯爵家の次女は姿を隠す。(書籍化&コミカライズ化)  作者: 中村 猫(旧:猫の名は。)
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次女とお姉様の町②

読んでいただいてありがとうございます。二話まとめて投稿いたします。オリンピックを見ていると、寝不足です。

「ジークさん」


 セレスが嬉しそうな声を上げてジークフリードの近くに寄ってきた。

 後ろにはオースティも付いてきていた。


「セレス、オースティにいじめられたりしていないか?」

「?お父様にですか?」


 首を傾げる姿は可愛らしいが、オースティの近くにいると、ナニカがオースティからセレスに移りそうで嫌だ。

 セレスが将来、オースティみたいな性格になったら、間違いなく泣く自信がある。ジークフリードとアヤトが。エルローズは……お兄様にそっくりとか言って笑いそうだ。

 可愛いセレスには、あんな意地悪な感じになってほしくない。


「お父様はいじめたりなんかしませんよ。おかしなジークさんですね」


 冗談だと思ったのか、くすくす笑うセレスも可愛いが、冗談ではすまない場合もあるのだ。


「ひどいなぁ、ジーク。可愛い娘をいじめるわけないよ。それよりセレス、分かってるね?」

「はい。ジークさんは護衛です」

「よろしい」


 セレスの即答にオースティは大変満足そうに頷いているが、目の前で言われているジークフリードの気持ちは複雑だ。


「そんなに念を押さなくてもいいんだが……」

「いいや、万が一、ということもある。こうやって声に出して覚えておけば、いざという時にすぐに思い出せるからね」


 万が一ってなんだ。そうならないようにするのが、護衛の役目だろうが。

 それに行き先は、オースティの治めるクレドの町だ。

 セレスが行く前にすでに掃除は済ませてあるだろうし、町に人も放っているはずだ。

 それでも警戒する理由は……。


「あぁ、そうか、あそこは……」

「そうそう。警備の強化はしてあるんだけど、あそこは小さいけれど港がある町だからね。他国からの船も入ってくる。セレス、さすがに他国にまで連れて行かれたりしたら、すぐには動けないから本当に気を付けるんだよ」


 自国と違って、色々と根回しするのに時間がかかってしまう。

 本当に連れていかれた場合は、そこにオースティが自ら乗り込むしかない。

 ……その前に、国王が軍隊率いて行きそうで怖い。

 止められるかと言われれば、さすがに『ウィンダリアの雪月花』を誘拐された場合は難しい。というか、無理だ。

 今の王国にとって、『ウィンダリアの雪月花』ほど重要な存在はいない。


「第一なら……」

「止めてね」


 第一騎士団は、精鋭が揃っている騎士団だ。

 何かあった場合、国王陛下は、迷うことなくその精鋭騎士団を動かすつもりらしい。


「冗談はさておき」

「シャレにならないけど。何かあればうちがまず動くから」

「……それも、なかなか怖いな」


 きっと、オルドラン公爵家が握っているという噂の弱みのアレコレが、そっと相手の目の前にぶら下げられて揺らされるのだろう。

 言うこと聞いてくれるよね?じゃないとコレ、どうにかしちゃうかも。お願い。

 そんなお願いという名の脅しが、あちらこちらで展開される未来が少しだけ見えた。

 そこにヒルダが準備が出来たことを告げに来た。


「ジーク様とお嬢様は、私と一緒に馬車に乗ってください」

「俺も?」

「念のためです」


 どこにジークフリードの顔を見知っている者がいるか分からない。

 セレスと二人旅なら、国王がそんな状態で旅をしているとは思われていないだろうから、よく似た人がいるな、くらいで済むだろうが、そんなに派手ではないが何となく厳重に守られている感じがするこの一行の中に国王に良く似た人物がいれば、本人ではないかと疑う者も出てくる。


「髪の色を変えるだけでも、変装になるよな。うーん、どうせなら俺も銀色にしてみるか?」


 セレスとお揃いになるし、最近の王都では男性でも銀髪にしているのを見かける。

 こうやって銀色の髪に染めるのが広まっていけば、セレスが紛れる。

 セレスだけではなく、これから先、生まれてくるかもしれない『ウィンダリアの雪月花』が目立たなくなる。

 偽物が出てくるかもしれないが、それはその時の王族が対処すればいいだけの話だ。

 本物と偽物の区別も付かないような人間は、女神の娘の相手に相応しくない。


「銀髪のジークさんも格好良いと思います」

「ならどこかで染めるか」

「止めてください。銀髪の男女二人は目立ちます」


 ヒルダが真剣な顔で止めた。

 こんな目立つ人が銀髪にしたら余計に目立つだけで、ちっとも隠れていない。

 すぐに噂になって、結局ばれそうな気がする。


「悪目立ちするだけです」

「そうか。ヒルダに止められたし、今回は諦めるよ。でも、いつか銀髪姿をお披露目するよ」

「はい、楽しみにしています」


 楽しそうなジークフリードの笑顔に、ヒルダは、ジークフリードが絶対に分かっていてやっているのだと、妙な確信をしたのだった。


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