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第8章 第2話 復讐の復讐

「言い忘れてた。私、根岸四季音(ねぎししきね)。中学3年生」



 僕をクッキングクラブから連れ出した根岸さんは、暗い夜道を先導しながら小さな声で自己紹介をする。



「それで……師匠に復讐って……」

「その話は部屋に着いてからする」

「部屋ぁっ!?」



 部屋って……え!? 自室ってこと!? 年下の女子の!?



 僕が入ったことのある女子の部屋って言ったらクッキングクラブの奥にある師匠と扇さんが同居している小さな和室くらいしかない。それがこんな……恵子の部屋にすら入ったことがないっていうのに……。



「ここ」

「……ここ?」



 根岸さんが指差したのは、クッキングクラブから数十メートル離れたところにある廃屋。だと思っていたもの。もちろんこんなに近かったから存在は知ってたけど、そもそもここが学校の敷地の外れにあるせいで誰も住んでいないと思っていた。



 縦岸学園の寮の割り振りはかなり適当というか、生徒に委ねられている。なんせ小中高大一貫で、しかもほとんど全寮制の学校。田舎なおかげで敷地は有り余ってはいるけど、当然寮を建てるには金がかかる。ということでそれぞれの部費で管理費を賄っているということらしい。



 普通の生徒が入る4人1部屋の一般寮で暮らしているのは知り合いでは恵子くらい。僕は剣道部部員寮でそれなりに大きな1人部屋を用意してもらっているし、光華さんは生徒会寮で2人部屋。師匠と扇さんは前述通りといった感じだ。



 とはいえ。ここのボロボロっぷりは……ちょっと考えられない。ていうかよく学校も許可出したな……。



「入って」

「はぁ……」



 女子の部屋という感動もなくなったまま、僕たちは軋む扉を開き廃屋に入る。そこに広がっていたのは……。



「か、帰っていいですか……?」

「だめ。ベッドにでも座ってて」



 根岸さんのゴスロリ服っぽい、やたらオカルティックな部屋。なんか灯りは蝋燭だし、髑髏あるし、水晶玉あるし……。とにかく怪しさ満点だ。高級な壺でも買わされそうな気がする。



「さっそくだけど、アイドルって恋愛してもいいと思う?」



 黒っぽい液体……いや普通のコーヒーだろうけど雰囲気的に嫌な飲み物を僕へと渡し、根岸さんは僕が座っているベッドの隣に腰かけた。



「ア、アイドルの恋愛……? 別にいいんじゃないの……?」

「私もそう思っている。でも駄目って言う人もいるでしょ?」


「そりゃいるだろうけど……何かの比喩?」

「ううん、直球。これを見て」



 せっかく座ったのにすぐさま立ち上がった根岸さんは、色々な意味でこの家に似つかわしくないパソコンの前に座った。本当に異質だな……なんでパソコン周りだけちゃんとしてるんだ……? 全然詳しくないけどモニター4つもあるんだけど……。



「これは……掲示板?」

「うん。縦岸学園の生徒が自由に使えるネット掲示板。うちの学校人が多いからこういうところで部活の宣伝とか行事の確認とかやってるの。それでこのスレが問題」



 スレの意味はわからないけど、カーソルは『【速報】ハルモニアの野毛毛糸(のげけいと)、彼氏がいた模様wwwww』と書かれた文を指していた。



「ハルモニアって……アイドル部だよね。浪花さんが所属してる」

「そう。で、このスレを作ったのが旭ヶ丘朝陽」


「証拠は?」

「これくらいなら簡単に割れる」



 割れる、の意味はわからないけど、たぶんハッキングか何かして調べたとかだろう。



「でも師匠がそんなこと……あ」



 言っていて思い出した。浪花さんが復讐部に来た日、師匠やけにスマホいじってたっけ。仕事って言ってたし、やけにアイドル部にも詳しかった。そういうことか……。



「あなたたち復讐部でしょ? 野毛毛糸のファンが復讐をお願いしたんじゃないの?」

「ふ、復讐部……? 何のことだか……」


「隠さなくていい。わかってるから」

「……ごめん。僕は聞いてないけど、たぶんそんな感じだと思う」



 ファンを裏切って男と付き合ってたアイドルへの復讐。これくらいならやりそうだ。



「私、お助け部っていうのやってるの。正式な部活じゃないから1人だけど、生徒の相談に乗ったり助けたりしてる。ここが家兼部室」



 師匠への復讐……。やっと繋がった。



「これをばらした師匠にやり返したいってこと?」

「そう。頼まれてくれるよね? 復讐部さん」



 ……いつかはこうなると思っていた。復讐の、復讐。終わらない怨嗟の円環。



 それがこんな案件……しかも師匠と戦うことになるなんて……。



「返事は?」

「……わかった。協力する」



 いや、違う。僕がやるべきことは師匠への復讐ではない。この案件を丸く収めることだ。



 そして、何よりも。復讐部のことを知っているこの女を、黙らせる。生徒会に告げ口される前ということで幸運だと思っておこう。



「もしもし、光華さん?」

「そ、宗吾くん! 大丈夫ですか!? それで……この後のことなのですが……」



 とにもかくにも僕は光華さんに電話をかけ、協力を仰ぐことにした。



「浪花さんに会いたいんだけど紹介してもらえる?」

「」

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