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第7章 第4話 同じ

「これ……嫌だろうから着なくてもいいけど前だけ隠してくれる?」



 服を破かれてしまった私に、宗吾くんが上の道着を脱いで手渡してくれました。



「はい……」



 これで着なかったらそれはそれで失礼……のはず。と思い、宗吾くんの細身に見えながらも筋骨隆々な上半身を包んでいた道着を服の上から羽織ります。



 ……やっぱり汗の臭いはしない。するのは柔軟剤と、宗吾くんの香りだけ。まるで宗吾くんに抱きしめられているかのようで少し緊張してしまいます。



「にしてもあれ……すごいね」



 既に復讐は終わっており、私と宗吾くんは近くの階段に腰かけ、どちらも視線を交差せずに話を続けます。



「復讐のことですか。私は菜々ちゃんのことも想っていただけですよ」



 宗吾くんに手首と脚を折られたストーカーに私がした復讐は、主に菜々さんの被害の倍返し。服を破かれた私の復讐として衣服を全てかっぱらい、生徒会を通じて情報を流しました。菜々ちゃんのストーカーが全裸でいると。



 菜々ちゃんをストーキングしている写真は撮っていたし、生徒会への相談実績もありました。だから彼が菜々ちゃんのストーカーであるという事実は確定し、骨折の件も私が制圧部隊として行ったということにして宗吾くんへのお咎めはなし。



「これであの人は変態ストーカーだと周りから見られることになります。菜々ちゃんが苦しめられていた視線の恐怖を何倍にもなって味わう。これが一番だと思いました」

「……すごいね。僕はそんなこと考えられなかったよ。たぶん師匠も同じ制裁をしただろうな」


「それがわかったら私は復讐部に入っていませんよ。何もわからないから。朝陽さんから学びたいから私たちはあの人についていっているのでしょう?」

「……そうだね」



 ああ……違う。こんなことを言いたいわけじゃないんです、私は。でも言えません。一度始めてしまったら、きっと必要のないことまで口走ってしまうから。



「……これで貸し借りなしです。私と宗吾くん、お互いを助け合ったのですから」



 結局口から出たのは強がりだけ。本当はお礼を言いたかった。助けてくれてありがとうございました、って。でもそれを口にしてしまえば、認めてしまう。私は宗吾くんより劣っていると。



「貸し借りなんて思ってなかったけどね」

「それでも……です」


「いやでもさ……実際光華さんのお手柄だと思うよ」

「そんなこと……ないよ」



 宗吾くんの変な謙遜がわたしの脳を刺激してくる。劣等感がとめどなく溢れ出してくる。



「わたしは何もできなかった……ううん。初めから宗吾くんがボディーガードをしてくれていたら、わたしは必要なかった。否定しないでね。わたしが惨めになるだけだから」



 言ってしまった。言っちゃいけないってわかってたのに。どうしても我慢できなかった。……いや、たぶん、違う。わたしは本当に、醜い。



「そんなことないよ」



 宗吾くんに、慰めてほしかったんだ。



「……勝手なこと言わないで。実際わたしは役立たずだったでしょ?」



 自分で自分が嫌になる。こうやって自分を下げて、褒めてもらって。こんな行為に何の意味があるんだ。本当に、馬鹿みたい。でも今は。それも許してほし……。



「ああごめん、そういうことじゃないんだよ」

「……え?」



 わたしがほしかったものではない言葉が告げられ、思わず視線を宗吾くんに向けてしまう。



「その……なんていうか……。変な意味じゃないし……優先順位をつけるみたいで嫌だけど……」



 その宗吾くんは何かをごまかすように頬を染めて腕をわちゃわちゃと振り、



「……僕は光華さんだから助けにいこうと思ったんだよ」



 はにかみながら、そう言いました。



「や……ほんとに変な意味じゃなくて……! ほら……浪花さんとは話したことないし、そんな人を優先できるほど僕は優しくない。でも僕が剣道をしてる時に光華さんが傷つけられてたらって思ったら……稽古なんかできなかった。ごめん、誰がストーカーなのかわからないよね」



 宗吾くんは言っていた。朝陽さんに恋心を抱いたけど、それは勘違いだったって。



 きっとそういうものなのだろう。救われるというのは、それだけ重い行為なんだ。



 だからきっと、私のこの想いも同じ――。



「宗吾くんは、私のヒーローですね」



 ――この感情は、恋心なんかじゃない。



「……相変わらず。なに言ってるのかよくわからないね。ヒーローってなに?」

「よく言われます。気にしないでください」



 宗吾くんが私を見て笑い、視線を前に向ける。するとさらに笑みを深めた。



「や、今日は珍しくわかった。見てみなよ」

「光華ちゃん――!」



 そう声をかけられ前を向くと、逃げていたはずの菜々ちゃんが私に勢いよく抱きついてきました。



「どうしたんですか……? この後レッスンだって……」

「助けてくれて、ありがとうっ!」



 それは私が言えなかった一言でした。相手を上だと認めた証拠……なわけがない。もっと単純で、シンプルな感謝。でもわたしは、そのたった一言が。



「どういたし……まして……!」



 涙が出るほど、うれしかった。



「どうして光華ちゃんが泣いてるの……?」

「気にしないで。光華さん変わってるから」

「そんなこと……ありません……っ」



 本当にそんなことない。わたしが変わってるからではない。これで同じになれたんだ。



 遥さんや朝陽さん。宗吾くん……みんなと同じように。



 ようやくわたしも、誰かのヒーローになることができた。

ようやくラブコメっぽいことができました! うれしい! 今後に期待していただける方はぜひ☆☆☆☆☆を押して評価、ブクマ、いいねしていってください!

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― 新着の感想 ―
[良い点]  同等の「傷」を必要なだけ。  正々堂々とした復讐、良かったです。 [一言]  お互い少しずつ存在のウエイトが増えてきたようですね。  牛歩のようですがw  それでもこのふたりにとっては大…
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