第7章 第1話 ストーカー
〇宗吾
「こんにちは」
「んー」
今日もいつも通り放課後に復讐部の部室に行くと、師匠がソファーに寝そべりながらスマホをいじっていた。
「相変わらずダメ人間感すごいですね」
「なに言ってんの仕事中だよ。内容的に私1人でやってるけど、まぁそれなりに忙しい。んなことよりこっち来てていいの? 今週末また大会でしょ?」
「少ししたら道場行きます。今回出てくる相手結構強そうなんで対策しないと」
「じゃあフリーなのは光華だけか。ま、依頼来てるのこれだけだし大丈夫か」
「仕事ですよみなさんっ!」
僕と師匠の会話がフリだったのか。僕の後ろからやけに元気な光華さんが部室に入ってきた。そしてそのさらに後ろには。
「こんにちは、磯子くん」
「……どなた?」
黒っぽいブラウンの髪をハーフツインにした美少女が小さく手を振っていた。でもこんな人知らないんだけどな……寺久保さんタイプか?
「宗吾くん、失礼ですよ。同じクラスの浪花菜々ちゃんです」
「それは……ごめんなさい」
「ううん、いいんだよ。わたし意図的に男の子と話さないようにしてるからさ。知らなくても無理ないよ。……プライドは傷ついたけどね」
浪花さんの発言に疑問は残ったが、とにかく座ってもらう。奥のソファーは僕と師匠で、対面に光華さんと浪花さんだ。
「えーと……何から説明したらいいかな。とりあえず私、アイドルやってるんだけど……」
「アイドルっ!?」
「そんなんじゃないって」
僕が驚くと、浪花さんのために出したお菓子を貪りながら師匠が説明する。
「私もそんなから詳しくないけど、部活動だよ部活動。学校内でライブしてオタク共から金徴収してんの。なんだっけ? 縦岸学園スクールアイドル同好会だっけ?」
「いえそれは問題になって普通のアイドル部です。それとそんな言い方はやめてほしいな……。私たちはアイドルに憧れてるだけだから」
「そして彼女は! アイドル部でもトップの人気を誇る9人組グループ『ハルモニア』不動の7番人気! イメージカラーグリーンのナナちゃんです!」
「それは……なんか微妙じゃない? いやすごいんだろうけどさ……」
にしても……。
「光華さん詳しいね。ファンなの?」
「いえ好きですがわざわざ放課後の時間を削ってまでライブに行くほどファンではありません」
「なんなんだよもう……」
「ですが私も技術提供してましてね。ほら見てくださいよこのポスター! このスカートについてるリボンは私が制作したんですっ!」
「だから微妙なんだって……。いやすごいんだろうけどさ……」
「ふふふ。衣装づくりは得意なんですよ!」
まぁとにかく色々わかった。この子がアイドルだということも、光華さんが入れ込んでいることも。
「それで私たちに何をしろって言うわけ?」
「実は……最近ストーカー被害に遭っているんです」
師匠の質問にそんな答えが返ってきて、続く。
「放課後とかライブ終わりとか知らない男の人がついてきてて……生徒会や先生は学内だからそういうこともあるだろうって聞いてくれないし、アイドル部の人たちは人気が出てきた証拠って言うし……。でも怖いから同じクラスで生徒会の光華ちゃんに相談したらここを紹介されたんです」
……事情はわかった。でも、だ。
「悪いけど私たちは復讐しか手伝えないよ。その男に付きまとうってならいくらでも協力するけど、守ってほしいとかだとちょっとね……」
冷たいと思われるかもしれないが、僕たちは復讐部。そこを履き違えたらただの何でも屋になってしまう。それは光華さんもわかってるはずだけど……。
「朝陽さんならそう言うと思っていました。なので宗吾くん、ボディーガードしてくれませんか?」
そうきたか……。まぁ現実的な案ではあるけど……。
「ちょっと今は……事情があって……」
「そうよ宗吾はあたしの彼氏なんだからっ!」
「お前のことじゃねぇよっ!」
なぜか恵子が屋根裏部屋から出現し、その頭を師匠が孫の手でぶっ叩いた。いや本当になんでここにいんの……?
「宗吾たすけて……。あのババァマジスパルタ! もう耐えらんない!」
「ここにいた。ほら掃除するよ」
「うぇーん……たすけて宗吾ぉぉぉぉ……」
そしてちょうどよく現れた扇さんに引きずられて帰っていった。何だったんだあれ……?
「えーと……今のは……?」
「気にしないでただのストーカーだから」
「いえストーカーを気にしてるからここに来たんだけど……」
恵子のせいで話がややこしくなったな……とりあえず。
「ごめんだけど、今週末試合があって稽古したいんだよね。空いてる時間なら協力できるけど、そっちの都合に合わせるのは今週は厳しいかな……」
やはり冷たく思われてしまうだろうが、僕は剣道と復讐部。どちらも捨てないことを決めたんだ。それを……言っちゃ悪いけど、復讐以外のことで破りたくない。でも男の僕でさえストーカーみたいなことをしてきた恵子に軽い恐怖を覚えたんだ。女性である浪花さんの恐怖は計り知れないだろう。
「いや、僕がそっちに合わせるよ。稽古なんて深夜一人でやればいいんだし……」
「いいえっ! 宗吾くんに無理な負担をかけるわけにはいきませんっ! なのでっ!」
光華さんが勢いよく立ち上がり、宣言する。
「私がボディーガードを務めますっ!」




