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第5章 第3話 復讐者たち

「しばらくあの倉庫には帰れない。ひとまずここで身を隠すんだ」



 僕たちを救ってくれた千鳥さんは、学園の敷地の端にひっそりと置かれたボロい小屋へと案内してくれた。看板には中学剣道部部室と書かれていたが、僕が知っている剣道部の部室は小中高大共通の綺麗な倉庫だけ。雰囲気からして昔使われていた、という感じだろう。



「おじゃましまーす……」



 雰囲気に気圧されながら旧剣道部部室に入ると、



「うわぁっ!?」

「ひょぇっ!?」



 僕たちを出迎えてくれたのは鬼や天狗。様々な面を被った十数人の人間だった。



「あんたほんと臆病だよね」

「学校と敵対するんだ。顔を隠すのは必須だろう」



 なるほど……確かに一理ある……けど……。



「学校と……敵対……?」

「朝陽、何も話していないのか」

「……この子たちは高校編入組だから。知らなくても別にいいでしょ」



 椅子すらないござだけ敷かれた床に師匠は座り、めんどくさそうにつぶやく。だが千鳥さんは立ったまま僕と光華さんを見た。



「ちょうどいい機会だ。話しておくぞ」

「ちょっとやめてよ雷切!」

「そういうわけにもいかない。俺はお前とは違って本気で復讐するつもりだからな」



 本気で……復讐……?



「俺がかつて復讐部にいたことは聞いたな。だが復讐部を辞めた、というわけではない。なぜなら復讐部は消滅したからだ」

「消滅って……じゃあ僕たちの復讐部は……?」


「かつての復讐部と今の復讐部は根本が違う。言うなれば今の復讐部は紛い物。偽物だ」

「偽物って……どういうことですか、師匠」



 師匠に目を向けると、彼女は珍しく僕から視線を外した。



「俺たちが所属していた復讐部は消滅し、今の復讐部はその後朝陽が勝手に名乗っているに過ぎない。かつてのスマートさの欠片もない、紛い物の復讐部だ」



 僕たちが、紛い物……。



「元々の復讐部は正体すら悟られない影の正義だった。しっかりと戦略を立て、それを指揮する者がいて、何者にも負けない武力があり、俺の工作によって全てを隠してきた。だが今は何だ。暴れるだけ暴れて、好き勝手に満足する。俺が生徒会にスパイを放っていなかったら今お前たちはここにはいない。なぁ朝陽、お前は何がしたいんだ」

「……うるさいな。私の勝手でしょ」


「俺はわかっているぞ。お前は捕まりたいんだ。裁いてほしいんだ。だからあんな無茶をしているんだ」

「……勝手にわかった気にならないでよ」



 師匠はそう答えると立ち上がり、僕と光華さんの手を引いていく。



「帰るよ、2人とも。こんなかび臭いとこいたら病気になる」

「……磯子宗吾くんと紅梅光華さんだったな。君たちはそれでいいのか。朝陽についていけば、君たちは確実に退学になる」



 師匠についていく足が、止まる。光華さんも同じだ。



「その女には何もない。ただ復讐に心を囚われた憐れな鬼だ。復讐に熱を入れるあまり学校の罠にかかり、当時の部長を退学へと追いやった、ただの憐れな人間だ」

「……帰るよ」



 師匠の手を引く力が強くなる。



「お前は昔から馬鹿だった。だが昔のお前は輝いていたぞ」

「早く……帰るよ」


「その死んだ瞳で何を見る。かつて師匠と呼び慕った人を自分のせいで失い何をする」

「……うるさい」


「お前が生き返る方法はただ一つ。学校への復讐だ」

「うるさい……!」


「学校へと復讐し、部長の仇を討つしかないんだよ。だから復讐部なんか辞めて俺たちと共に来い」

「うるさいうるさいうるさい……!」


「俺たち縦岸リベンジャーズに入るんだ!」

「二重の意味で黙れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」



 師匠がついに叫んだ。いや当たり前だけどさ……。



「こんなかに部長やられてんのに迷惑って思ってる奴いる!? 部長やられてんのに学校に日和ってる奴いる? いねえよなぁ!!? 学校潰すゾ!!!」

「あんたのそういうとこが昔から嫌いだったんだよ普段クールなのにいきなりふざけやがって感情が迷子になるんだよっ!」

「いま私怒られた気がします……!」

「大丈夫光華さんのことクールキャラだと思ってる人いないから」



 何はともあれ、だ。



「私は頼まれてない復讐はしない主義なんだよ。師匠は復讐なんて望んでない。あんたたちは勝手にやってればいいよ。私はあの人が作った復讐部の名前を守る」

「ならなぜ扇島さんの復讐をした。あの人はお前の親代わりだろう。復讐なんて頼むわけもない」


「あれは……私の復讐だから」

「自分に正直になれ。お前には復讐しかないんだ。だから俺はお前を誘っている。頭も力も行動力も、もちろん人を率いることもできないお前を。それでもお前の復讐への執念は俺たちに必要だからだ」


「知らないよそんなの……私たちを巻き込まないで」

「私たち、か。ならば言い方を変えよう」



 師匠へと向けられていた瞳が、僕と光華さんへと向く。



「生徒会に目をつけられた今、捕まるのも時間の問題だろう。そうなったらこの2人はどうなる。剣道推薦の磯子くんは退学になり、紅梅さんは生徒会を辞めさせられる。お前の身勝手なわがままのせいで」

「っ……!」



 僕たちへと繋がれた師匠の手が震える。



「お前たちの活動は調べた。この2人にたいした覚悟などないんだろう?」

「そんなことありませんっ! 私は……!」


「なら退学してもいいのか? 俺たちにはみんなその覚悟がある。大恩ある部長のために死のうという覚悟の元に集まったのが俺たちだ。君に退学になってでも成し遂げたい復讐があるのか?」

「それ、は……!」



 光華さんが千鳥さんの言葉に、瞳に、意志に。一瞬で斬り伏せられる。



「……わかった」



 その直後、師匠の汗ばんだ手が僕たちから放れた。



「復讐部は、解散にする」



 その言葉と共に。そして。



「磯子宗吾と紅梅光華だな。少し付き合ってもらおう」



 旧剣道部部室から出て寮へと帰ろうとした僕と光華さんは、生徒会に捕まった。

ひさしぶりにランキングに入れさせていただいたので2話更新です!


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