第5章 第2話 きゅうち
生徒会……! 絶対に知られてはいけない……師匠が、人を殺してでも知られるわけにはいかないとしていた生徒会に、復讐部がばれてしまった……!
「…………!」
冷や汗を垂らす師匠の隣で光華さんがぶんぶんと首を横に振る。自分が告げたわけじゃないと言っているのだろうし、それは確実だろう。今日ここで一網打尽にするために、光華さんをフリーにした。師匠がセンサーを設置していなかったら確実にやられていた。
「本当にここにいるんですか? ただの倉庫に見えますけど」
「ただの倉庫にソファーがあるかよ。とにかく探せ。会長の感はよく当たるんだ」
僕たちのすぐ下でそんな会話が繰り広げられる。このまま籠城するにしても、長時間になれば体勢は崩れて木の板は軋むだろう。どうすれば……と思っていると、師匠がスマホを取り出して見せてきた。グループで話し合おうということだろう。
『たぶんチクったのは扇を騙したクソビッチ。でもあいつは私たちが復讐部だってことは知らない。曖昧なタレコミだったから下の連中は感とか言ってるんだと思う。とりあえず扇に頼んで来てもらうから……』。師匠がそんなメッセージを打ち込み、送信する。とりあえずスタンプでも送って了解を……
『ルァイン!』
光華さんのスマホから、馬鹿みたいな通知音が鳴った。
『ルァイン!』『ルァイン!』『ルァイン!』『ルァイン!』『ルァイン!』
その瞬間師匠はスタンプを連打し、何度も通知音を鳴らす。普通隠れているならすぐにマナーモードに移行する。だからあえて何度も音を鳴らすことによって、ただスマホだけが置かれている風に見せかけているんだ。だが問題が一つ……。
「ルァイン!」「ルァイン!」「ルァイン!」「ルァイン!」「ルァイン!」
何を勘違いしているのか、光華さんが通知音の真似をしていた。ほんとこいつ真面目な顔して馬鹿すぎる……!
「「…………!!!!!」」
僕と師匠がそうではないと激しく首を横に振る。
「!!!」
それに気づいた光華さんはぱぁっとした笑顔で手を打ち、
「ペイペイ!」
「「なんでだよっ!?」」
ま、ずい……! あまりにもわけがわからなさすぎて師匠と2人してツッコんでしまった……! こいつほんとは生徒会と繋がってるんじゃないのか……!?
「おい、今上から声がしたぞ!」
「天井に取っ手みたいなのがある! 屋根裏部屋があるんじゃないか!?」
まずいまずいまずいまずいまずい! 完全にばれたっ!
「…………!!!」
え、光華さんが玩具の剣差し出してきたんだけど。これで全員倒せって言ってるのか? ほんとに? 馬鹿なのっ!?
「とにかくあの取っ手を……!」
「集合っ!」
師匠もわけがわからなくなってゴーサインを出してきたその瞬間、部室の扉が開かれて誰かが入ってきた。覗き穴を見てみると、生徒会の黒い制服を着たシュッとしたイケメンが生徒会を集めている。
「…………!」
おそらくあの人は態度的に相当偉い。そんな人まで来たらいよいよ本格的に倒さないとと思って剣を受け取ると、師匠が肩を掴みゆっくりと首を横に振ってきた。やめといた方がいいのか……?
「お前たち、ここはいいっ! パトロールに戻れっ!」
「えー……と……。あなたは、一体……?」
「俺を知らないのかっ!? もういいっ! 名前を言えっ!」
「い、いえ! 申し訳ありませんっ!」
偉い人の高圧的な態度に、元々いた生徒会たちは逃げるように部室から出ていく。そしてその人は部室の鍵を閉めると、
「もう大丈夫だ。下りてこい」
天井を見上げ、そう伝えてきた。
「2人とも、出るよ」
「師匠……?」
「大丈夫なのですか……?」
わけがわからないが、とりあえず師匠の指示通りに屋根裏部屋から下りる。すると生徒会の人は僕たちへとゆっくりと近づいてくる。
「危なかったな、朝陽」
「助かったよ、雷切」
そして師匠と固い握手を交わし、薄く笑い合った。
「えーと……その人は……生徒会の人じゃ……?」
「生徒会? 誰があんな学校の犬に成り下がるか。見ただろう? 自分の脳で考えられない犬だから、会ったこともないただ生徒会の制服を着ているだけの偉そうな男の言いなりになるんだ」
つまり……このイケメンは生徒会の制服を着ただけの師匠の知り合いってことか……? そして僕たちを助けてくれた……。でもなんで……?
「なんで助けてくれたんですか……?」
「紹介しとくよ、2人とも」
師匠はそう言うと、初めて見るうれしそうな笑顔で告げる。
「高2の千鳥雷切。去年度まで復讐部にいた私の友人だよ」




