第4章 第3話 三位一体
『ちょろかったよあのババァから金盗るのなんて!』
『ざまぁないよ調子乗りやがって。昔凄かったのかなんなのか知らないけど目障りなんだよいつまでも居座って』
『そうそうガキ共に酒飲ませといたから何もできない。なんか文句つけてきたら速攻生徒会にチクってやるわ』
『てかなんで剣道部のエースとか生徒会がクッキングクラブなんて入ってんだろうね。まぁこれで本業に集中できるでしょ。感謝してほしいくらいだよ』
『とりあえずあいつらの金あるから呑みまくろうよ! うぇーいっ!』
スマホから以前とは全く別な声色をした高砂さんの声が聞こえてくる。今夜は料理研究部の歓迎会で、一番大きな店を貸切にしているらしい。
そしてその中には殻雲の貝殻坂さんと雲井さんもいる。この電話は雲井さんのスマホを通じて聞こえているものだ。
「録音はできてるね」
「はい。生徒会に提出したら最低でも停学にできます」
「じゃあつまり、停学を盾に好き勝手できるってわけだ」
「僕のことは気にしなくてよくなりましたからね」
つまり、準備完了。
「殴り込みじゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
僕は歓迎会の会場となっている店の扉を竹刀で破壊し、師匠と光華さんと一緒に店に押し入った。
「な、なんだお前らはっ!?」
突然扉が吹き飛んできたことで店内で怒号が巻き起こる。殻雲もすごかったけど、この店も中々の完成度だ。行ったことはないけど、おしゃれなクラブ付きバーのイメージが近い。その中におそらく100人を超える料理研究部の部員が集まっている。そして見つけた。その中心で、ドリンクを片手に呆然としている高砂さんが。
「光華」
「はい」
その姿を見据えながら師匠が指示を出し、光華さんが一歩前に出る。
「高等部生徒会制圧部隊です! 料理研究部部員に窃盗の容疑がかかっています。逃亡の恐れがあるためこういった手段をとらせていただきました。また、制圧部隊は学内の治安維持のための実力行使が認められています。全員動かないでください」
光華さんの地位はこういう時に役に立つ。警察と同義の生徒会の襲来に、部員たちはどよめきその場で留まる。だが大学生もいるし、酔っ払っている人もいる。
「なんだぁ、てめぇ。生徒会だかなんだか知らねぇけどなぁ、料理人の魂! 店に入ってくるってことはなぁ、ボコされてもしょうがねぇってことなんだぞ?」
怯える人の群れの中から数人の赤い顔をした男がふらふらと前に出てきた。
「相手竹刀持ってますよー? やめといた方がいいですよー?」
「あぁ? 大丈夫大丈夫! 俺らボクシング部もやってるから! 高校生なんかに負けるかよ!」
入口の近くに座っていた貝殻坂さんが楽しそうに煽ると、男たちはファイティングポーズをとる。酔っていたとしても構えはちゃんとしている。どうやら本当にボクシングができるらしい。
「宗吾」
「はい」
だが相手が悪い。多少強かろうが、まぁ確実に全国レベルではないだろう。そして何より、
「武器持ちに勝てるわけないでしょ」
繰り出してくる右腕に次々竹刀の鋭い一撃を放ち、数秒で4人を制圧する。
「旭ヶ丘さん!」
「わかってる」
貝殻坂さんが手を上げている雲井さんを指差す。その前には僕たちの標的、高砂さんがいる。
「な、なんですか!? 私やってないって言ってますよねっ!?」
『ちょろかったよあのババァから金盗るのなんて!』
「なっ……!?」
師匠は近づきながら、無言で録音した電話の音声を再生する。そして大義名分はできたと言わんばかりに胸ぐらを掴み上げた。
「あ、あの留年女の復讐に来たつもり……!?」
「生憎私は頼まれてない復讐はしない主義なんで。私の行動と扇島は無関係だよ。だからぁっ!」
そして右拳で高砂さんの顔をぶん殴り、叫ぶ。
「これは私の復讐だ。私の家族を傷つけた奴は、絶対に許さないっ!」




