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Chapter 5 孤独②


 2日目も昨日と同じように過ごした。


 だが、4日目になると、録画していた番組のストックが切れ、ゲームや読書をしていても「楽しい」と思えなくなった。


 強いむなしさが僕の心を襲う。寝ようとしても、そのせいで眠れない。


「こんなに寂しいの、久しぶりだよ」


 僕は寂しさを紛らわすために、昨日全クリしたゲームのデータを消し、再び1からやることにした。手を動かしていれば、少しは楽になるかもしれない。


 だが、むなしさは増すばかりで、手がつかない。


 ──どうすればいいの。


 僕は一人でいることに寂しさを感じると同時に、恐怖感も覚えた。


 事故に遭って、母さん父さんが帰って来なかったら、正真正銘のひとりぼっちになってしまう。僕はこのまま孤独に朽ちていくのだろう。それが、とても怖かった。


 ──ひとりぼっちでも生きていけるって、結局は自分の思い上がりだったんだ。


 僕は、これまで心の支えにしてきた、ひとりよがりの考えを恥じる。中学生のときから一人ぼっちを選ばなければ、変なプライドを持たないで、積極的に誰かと関わっていれば、こんな思いをしなくても良かったのに。


 涙がぽろぽろと頬を伝い、口の中、そして床下へと、雨が降るようにしたたり落ちてゆく。


 これから、号泣しようとしたところで、インターホンが鳴った。


 僕はドアのレンズから、おそるおそる覗いてみる。


 レンズの向こう側には、母さんと父さんの姿があった。


 寂しさに負けた僕は、すぐさまドアを開ける。


「ただいま」


 母さんと父さんは、そう言って玄関へと入る。


 僕は、おかえり、と返した。


「元気で良かった」


「何とか上手くやってたよ」


 家族が帰ってきてからは、いつもの休日へと戻った。


 ソファーで寝転がる父、部屋にいる僕、少しは何かしなさいよ、と怒る母さん。


 いつもは面倒くさいと感じている母さんの怒り声も、このときは微笑ましく思えた。


「ひとりぼっちって、快適だけど寂しい」


 3日間誰とも関わらない孤独な生活をしていてわかった。


 僕が学校でひとりぼっちでも平気なのは、帰れる場所があること、そして、自分の帰りを待ってくれる人がいるからだと。人間は自分のことを理解してくれる誰かがいなかったり、心の支えになる何かがないと、強く生きられないのだ。


 もう一つ思い出したことがあった。僕がこの前、しつこく付きまとってくる九条に対して、「もう二度と関わんな」と言ったあとにした表情だ。


 あの表情は少なくとも、誰にも言えない苦しみを抱えた、孤独な人間の表情だ。無邪気な彼には、心の支えになる誰かがいないのだろうか? 彼も僕と同じで、ひとりぼっちだが、僕に付きまとっているとき以外は、どこか寂しそうだ。1日に1回ぐらいは、話聞いてあげよう。そして、ごめんなさい、と謝らないと。

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