Chapter 16 一緒に帰ってみた②
店内の一角にあったイートイン。木目調の机や椅子、片隅に置いてあった観葉植物が、おしゃれなカフェのような雰囲気を醸し出している。流れている有線の音楽という一点を除けば。
僕と九条は座り、アイスを食べた。
ふたを開けたアイスの表面には、細かな霜や氷の粒がたくさんついていて、わずかに湯気のようなものが出ている。
「うまいな!」
「そうだね」
「やっぱりこの蒸し暑い時期に、アイスは最高だ! というわけで──」
九条は、店員さんからもらった木の匙で、僕のアイスから少し削り取り、
「悪いが、お前のもちょっと貰うぞ」
口を大きく開けて、ぱくりと口の中へと入れた。
「ちょ、何で人の口をつけた匙で食べるんだよ」
「いいじゃないか。免疫力も上がるかもしれんぞ」
「だからってさ──」
自分が口つけたところで他人のアイスを食うの、気持ち悪くない? と僕が言おうとしたときに、九条は真剣な表情で語りかけてくる。
「前から気になってたんだが、お前、どうして人を避けるんだ?」
「どうして、って言われてもな......」
本当の答えは、中学生のときに、同級生にいじめられたからだ。でも、
「そりゃあ、自分の好きなことに時間を使いたいから。それだけのことだよ」
「じゃあなんで、こんな俺と一緒にいるんだよ?」
「それはその......」
そりゃあ、楽しいと感じるからだよ、と言おうとするのをさえぎるように、
「おう、東条久しぶりだな! 覚えてるか、俺のこと?」
誰かが僕の名前を呼んだ。僕は振り返る。
そこには、3人ほどの取り巻きを引き連れた、背の高い少し赤めの髪で、面長な顔に鋭い切れ長の目、なんで内田がここに?
「何なんだよ。何でお前が、ここにいるんだよ」
内田は鼻で嘲笑うような声で、
「何なんだよ、って、そりゃあ、決まってんだろ! 久しぶりにあったお友達に、あいさつしたまでだよ。通学路が同じだからな」
と答えた。
「へぇ」
緊迫とした空気が、小うるさい音楽が流れるおしゃれな空間に漂う。
「よし」
僕は九条の手をつかんで、
「逃げるよ」
全速力で逃げた。
「おい何なんだよ、いきなり!」
食べかけのアイスを持ちながら、僕に手を引っ張られる九条。
「おい待てよ! なんで逃げるんだよ!」
逃げる僕を追いかける内田とその取りまきたち。




