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Chapter 1 最悪の出会い


 入学式のころまで咲き誇っていた桜の花が散り、芽吹いた若葉が青々と繁るころ。


 高校生になったばかりの僕は、机の上に体を伏せながら、スマホの画面とにらめっこをしていた。


 ゴールデンウィークを目の前にしながらも、僕には話をしたり、昼食を一緒に食べたりする友達はいない。というより、「必要ない」といった方がいいかもしれない。


 父さんや母さん、担任の先生は口を揃えて、


「友達を作りましょう」


 と目を輝かせながら言う。


 だけど、僕にとっては、何で? としか思えない。


 常に誰かの言うことを聞き、自分の時間や金銭を浪費してでも付き合い、自分を押し殺しながら生きる。僕にはそんな芸当はできない。


「学校は馴れ合いのための『出会い茶屋』ではなく、『勉強をするため』の場だ」


 毎日自分にそう言い聞かせ、昨日の疲労感と倦怠感を今日に引き継がせ、トボトボとした足取りで学校に向かっている。


 ごく平均的な男子高校生と比較すると、かなり冷めていて、ひねくれている僕。当然僕みたいな人間には誰も近づこうとしない。そう思いながら、家から持ってきた文庫本を読んだり、一人物思いにふけったりしていた。


 だが、入学早々、うっとうしいやつに付きまとわれている。僕につきまとってくる少年の名は、九条明くじょうあきら。僕のクラスメートだ。


 ひっそりと高校生活を送ろうとしていた僕に、明が付きまとうようになったきっかけはこうだ。


 入学してから3日目の朝。僕はいつものように、一人で騒がしい教室の中へ入った。


 まだ学校が始まったばかりだというのに、男子も女子もグループを作り、くだらない話に興じている。といっても、同じ中学出身者同士の固まりでしかないのだが。


「こんなつまらない馴れ合い、何が楽しいんだ。もっと時間を有意義に使うということを知らないのか?」


 楽しそうにしているクラスメートを一目見た僕は、心の中でそうつぶやきながら、席に着いた。


 机の右脇にあるフックにカバンをかけ、その中から本を取り出して読む。


 本を読み始めてから20分ぐらい経ったころ。


 僕は大きなあくびをして、両腕をゆっくりと伸ばした。そうしないと、目が疲れるし、肩も凝ってしまう。


 目の休息のため、うつ伏せになって考え事をしていると、


「ねえねえ、何読んでたの?」


 左側から声をかけられた。


「何?」


 僕は面倒くさそうに反応した。


 視線の先には、少し長めではねた髪が特徴的な童顔の少年が、僕と同じ目線になるようにしゃがみ込み、こちらを見ている。


 少年は目を輝かせながら僕に聞く。


「何読んでたの?」


 何読もうが自分の勝手だろうが、と僕は心の中でつぶやいた。静かな学校生活を送るために、話しかけるなオーラを出して、外との関わりを遮断している。入学早々、みんなは雰囲気だけで察しているのに、何でお前はそれがわからないんだ。


 僕は心の中でつぶやいたことをそのまま、冷めた口調で言い放った。


「そうだよね、馴れ馴れし過ぎだよね。あ、君は東条とうじょうくんだね。僕は九条明。よろしくね」


 九条は爽やかだが、どこか悲しい感じの笑みを浮かべて、自分の席へと戻っていった。

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