2憂鬱な入学式
そんなこんなで迎えた高校の入学式。
気分は最悪だけど、小鷹くんとは違う高校だから少し気が楽になった。
夏実とは相変わらず一緒に登校した。
夏実と同じクラスがいいなぁなんて淡い期待を抱きながら、クラスの振り分けを見る。
私は…5組か。
夏実はどこだろ…うーん…同じクラスではなさそうだなぁ…
「私5組だわー、夏実は?」
「うちは4組ー、離れちゃったねー」
寂しそうに言う夏実に少し安心する。
きっと、夏実はこれからも、私のこと見捨てないよね?
「だねー、でも隣だし!」
「うん、絶対そっちのクラス遊びに行くから」
夏実とは廊下で別れて、5組の教室に入る。
早めに来たから一番乗りかな?
中には外を眺める男子がいた。
空いてる窓から靡くさらさらな黒髪に目が引かれた。
横目に見ながらも、席順を確認する。
まあ、確認しなくても、私、朝日だから多分1番前…。
えっ!
まさかこの人の隣か!
なんか、がらんとした教室の中にふたりっきりで、しかも隣に座るなんてなかなかハードルが…!
でも、私の席隣だしなぁ…うーん…
まぁ、座るかぁ。
とりあえず名前だけ名乗っておくか。
「あの、隣の席の朝日苺です。よろしくお願いします」
「タメでいいよ」
「え?」
「同い年じゃん。タメ口でいいよ」
実を言うと同い年ではないけどね。
私の誕生日4月1日だから。
まあ、そんなこと知ったこっちゃないし、訂正する必要もないか。
「うん、よろしく、えーっと」
「月城晴輝」
「あ、うん。月城くん、よろしくね」
「よろしく朝日さん」
月城くんは低めの声で、いわゆるイケボとやらだ。
見た目からして、絶対モテそうなのに気取ってない感じ。
そんなことを考えてると、人が何人か入ってきた。
「おー晴輝いんじゃん」
「ほんとだー」
「よっ」
どうやら月城くんのお友達みたいだ。
沈黙の中ふたりきりでいるのも正直気まずかったし、ちょうど良かった。
私は女子が来ないので、夏実のところに行こうと席を立つ。
夏実はすでに友達ができたらしく、3人くらいで話している。
夏実が私を紹介してくれて、他のふたりも仲良くしてくれそうだった。
いい子たちそうでよかった。
夏実と、夏実が作った新しい友達と話していたら、夏実のクラスにだんだん人が増えてきたから、さすがに居ずらくなって自分のクラスに戻った。
戻ったら結構人が増えていた。
みんなそれぞれ誰かと話してみるいて、完全に出遅れたみたい。
まあ、裏切られるくらいなら友達なんて作らない方がいいかなんて考えながら席に戻ろうとする。
しかし、月城くんはグループの中心のようで、私の席の周りには人だかりができている。
どうしたものかと突っ立っていると、誰かが私にぶつかったのと同時に聞こえたか細い声。
「あっ…ごめんなさい」
「いや、突っ立ってた私が悪いから」
「…そんなこと…ない…です」
そのまま足早に行ってしまった。
するとその女子は私の後ろの席に座った。
私も席に向かったが、途中で何人かの女子に引き止められた。
「私たちと話さない?」
断ると角が立つからそのまま話してると、先生が来た。
みんながばたばたと席に着く。
入学式の行われる体育館へ連れてかれ、顔を背き先生たちの長い話を聞き流す。
すると、月城くんの名前が呼ばれたことに驚き、顔を上げる。
月城くんが新入生代表のようだ。
首席ってこと!?
頭いいんだなぁとぼんやり眺めていたら、周りがざわついていた。
「あの人かっこよくない?」
「どこぞのアイドルよりかっこいいよね」
と女子が騒いでいた。
そんな声は聞こえてないかのように、月城くんは新入生代表挨拶を淡々とこなした。
そうして入学式は終わり、家に帰った。