05
見た事もない! 魔物か?! 丸い目玉が印象的であり、体から多数の棘が多く出ていた。その棘を飛ばして攻撃してくる。この棘に刺されば無事では済まないだろう。
僕は咄嗟に横跳び、棘を回避、そしてカード銃を乱射した。ヒューンヒューン
あれっ……効き目がない!!
どうする? フルパワースーツを装着するのは時間が掛かる。武器はカード銃と父の銃、剣だけだ。
カード銃は効き目がない事から捨てて、父の銃を撃ったが、これも効き目が無かった。最後は剣だけだ。
父の銃を目玉に投げる。それと同時に剣で目玉を突く!!
うっ!! 相打ちだ! 剣は目玉を深く刺したが、僕の右腕にも棘が刺さっている。僕は意識が朦朧となり倒れた。
次に意識を取り戻したのはベッドの上だった。女性がいた。
「目は覚めましたか?」
「あぁ、ここはどこだ?」
まだ、朦朧としている。反射的に受け答えをしているだけで、今直ぐ寝たい。
「航宙艦の中です」
「やっと入れたのか? どうやって入れた?」
「試験に合格しました」
「試験とは一体?」
「精神力、体力、知力、共に合格し、古代の剣と銃を持っている事です。まぁ、追々お話しして行きましょう」
「あぁ、宜しく頼む……。もうひと眠りさせてくれ」
翌朝、まだ気怠い感じがするが、立ち上がれなくはない。
立ち上がり、コックピットらしいところ迄、歩いた。
「大丈夫ですか? 3日も寝ていましたが」
コックピットにいた、女性が心配そうに聞いて来た。
ここで、初めてまともに女性の容姿を確認出来た。髪は緑色で長く、目は切れ長で薄茶色、ロングスカートを着用していて、足は裸足だ。質素で儚い感じが漂う。
「翌日だと思ってたが、3日も寝てたか。ところであなたは誰です?」
「私はこの航宙艦の守護者であり、この航宙艦の1部です」
「あの魔物はどうしたんだ?」
「あれは、私です」
僕は咄嗟に身構えた。
「大丈夫です、試験には合格していますので」
「だが、あの魔物は君なんだろう?」
「変身すると、あの魔物になるくらいです」
どうと言う事はないと言う感じで言った。
僕はただ、この塔に興味があったから来ただけだ。収穫はなかったが……もうそろそろ航宙貨物船に戻りたい。救助船が来ているかもしれないのだ。
「それで、守護者さんはこれから、どうするのか?」
「この航宙艦はあなたの物になりました、マスター」
この航宙艦が僕の物? なぜ僕の物になるのか。これは冗談か何かか?
「僕を解放してくれないか? 航宙貨物船が気になるのだ」
「この航宙艦を動かす事が出来るのは、その古代の銃と剣の所有者だけです。そして、試験にも合格しました。只今からマスターの物です」
僕の航宙艦……。ピンと来ないが。これが本当なら、夢でないのなら。長年の夢が叶った事になる。やった~と、叫びたいが、呆気ない程、急な事で面を食らって、何が何だか分からなくなってしまった。夢が叶うとは呆気ないのかもしれない。
「本当に僕の物?」
「そうです、マスター」
まだ、信じられないが、もしそうなら、これからどうする? 航宙貨物船の積み荷をこの航宙艦に乗せて。それから、どこに行く? 宇宙を彷徨うか? 星に立ち寄るにも通行手形が必要だぞ? 食料は? いろいろな事が頭を巡り、訳が分からなくなった。それでも1つづつやって行くしかない。
「この航宙艦は何が出来るのだ?」
「防御、攻撃、潜水、ワープ、タイムワープ等が出来ます」
タイムワープ? 時間操作が出来るのか?
「タイムワープとは、過去にも未来にも行けると言う事か?」
「そうです。又、違う宇宙にも行く事が出来ます」
う~ん。この宇宙の事も知らないのに、他の宇宙の事まで考えられないぞ。
「ちなみにこの航宙艦の名前はあるのか?」
「マスターが付けて下さい。私の分も」
「では航宙艦の名前は……ん~と。プラズマで、君の名前はマリーでいいかな」
プラズマは幼いころから、考えていた航宙艦の名前だ。マリーは適当だ。
「はい、登録しました」
「それで、マリーはアンドロイドでいいのかな?」
「ホログラムです。そして、航宙艦の半径100キロでしか活動出来ません」
良く出来たホログラムだ、実物だとしか思えない出来だ。古代の技術は凄い。
そして、操縦席に座ったが、操縦の仕方が分からない。従来の航宙艦の操縦とは違うのだ。
「これは、どうやって飛ばせばいいのだ?」
「そこの凹みに銃を、その横の溝に剣を刺して下さい、マスター」
これか、銃を凹みにセットして、剣を溝に刺してっと! おう! 起動はしたみたいだぞ、パネルやボタン等が光り出した。
「そして、オートボタンを押して下さい」
オートボタンはこれか。ポチッ。
おっ! 塔の先端部が開いて行くぞ。そして、航宙艦が上に飛び、瞬く間に星の上空に辿り着いた。
「航宙貨物船の場所まで行きたいのだが。どうすればいい?」
「念じれば、その場所まで行けます」
「では……。う~ん、これでいいのか?」
なんだか、飛んでいるように思えるが大丈夫か?
「到着しました」
「何か、パネルみたいなのがあれば、視覚的に確認出来るんだが?」
「それでは、パネル表示させます」
目の前にパネル大画面が表示され、航宙貨物船が見える。
その後、航宙貨物船の荷をプラズマに乗せ飛び立った。
「マリー、飛び立ったはいいが、目的がないのは辛いぞ」
「では古代の3種を探しましょう」
3種??? 後3つの何かがあるのか? 銃、剣、航宙艦は持っている。3種とはいかに。
「3種とは何だ?」
「後の3種はハイドロフルプレートアーマー、リング、書物があるらしいのです」
んっ! らしいとは? マリーでも知らないのか? どこにあるのか分からない物を、この広い宇宙で探すのは無理だぞ!
「マリーでも知らないのか?」
「はい、申し訳ありませんが、知りません」
「それは無理だと思うぞ」
「同じ形の塔だと言う事くらいしか分かりません。情報を見つけるしかありません」
「情報か……。酒場に行けばあるかもな。しかし、通行手形がないのでその星自体に行けないのが痛いぞ」
「まずは、中立海域に行き、情報を集めてみるのが手だと思います、マスター」
パネルに宇宙図が表示され、ここの位置と中立海域の位置が点滅している。
中立海域とは、中立でどこの所属にも属さない海域だ。一般常識として荒くれ者の溜まり場であり、犯罪海域とも呼ばれている。
「積み荷にある麻薬を売ってお金にする事も出来るでしょう」
そう言えば、お金が全くないのだ。今後の為にもお金がいるだろう。
「では、行ってみるか」