第七話 人身事故
今日は、麻美と、三月と、修学旅行で仲良くなった園華と、琴香で、 私たちの市よりはちょっと栄えているところに、遊びに行った。
帰りの電車は混んでいて、身動きが全然とれなかった。
麻美と三月と園華は、私たちが降りる一個前の駅で降りた。
小学校が一緒なのに駅が違ったり、逆に小学校が違うのに駅が一緒だったりして、この辺はそういうところは複雑だ。
三人が降りた駅は、大きな駅だ。
そして、その駅でたくさん降りたおかげで、先ほどまでの混雑はなくなり、すっかり車内はがらがらになった。
「よかったあー!やっと帰ってきたー!」
「そうだね!楽しかったね!またこうして行きたいねえー」
「すぐ、行けるよ!あっそろそろ着くよー」
その途端ー
『急停車します』
「きゃあ!」
突然の電車の動きに、弱音を吐いてしまった!
「・・・だ、大丈夫?」
「琴香、ごめんね」
「いや、大丈夫ならいいけど・・・」
「怖かったー一体何?」
「なんだろう」
そうしたら、車掌さんのアナウンスが流れた。
『ただいま、人身事故が起こったため、この電車、急停車いたしました。ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。なお、復旧のめどはたっておりません。くれぐれも、ドアから飛び降りないようお願いします。そして、これから私車掌は、安全確認をしに行きますので、しばらく放送はなくなります。ご了承下さい』
そうすると、琴香がこそこそした声で言った。
「人身事故だって~怖いねー」
「ね、ほんと、どんぐらいで帰れるかなあー」
「ここでお泊まりとかになったらどうしよう」
「いや、さすがにそれはないんじゃないー?」
それでも、やはり二人とも心配であった。
「・・・どうする?」
「とにかく、待たなきゃねー」
「う~ん」
そして、また無言になった。
なんか話を続けなきゃ!
でも、話題が出てこない。
すると突然、琴香が話題を作った。
「咲ちゃんってさ、」
「うん」
「好きな人とかいたりする?」
え!?
いや、私の好きな人は目の前にいるんですけど!
っていうか、そんな話、ここでする!?
とりあえず、なんか言わないと!
「い、いることにはいるけど・・・」
「え?いるのー?」
「う、うん・・・」
「そうなんだー・・・だれ?」
「え!?そ、それは、えっと・・」
「ふふ、冗談よ。咲ちゃん、かわいいねー」
そんな会話をしていると、さっきまで人身事故のおかげで緊張していた気持ちが、和らいできた。
「処理、終わんないねえー」
「ほんとだね。何かしよ!」
「じゃあ、しりとり!」
「うん!いーねー!」
「じゃあ、リンゴ!」
「ご、ごま!」
楽しい!楽しい!
ドキドキしているけど・・・。
顔、赤い?
でも、お互いのぎこちなさは、だんだん和らいできた。
そうしているうちに、一時間かかった、人身事故の復旧作業は終わり、電車は駅に向かって動き出した。
「ああー!やっとお家に帰れるー!」
「良かったー!」
そして、電車のドアが開いた。
「着いたー!」
「大変だったねえー!」
「うん!でも、琴香と一緒にいて、楽しかった!」
「そう?まあ、そだねー」
そうして、二人で笑い合った。
二人とも、お互いに、すぐにこの場から離れたくなかった。
別れるのが、惜しかったのだ。
それから三十分くらい話して笑いあって・・・。
やっと、時間が遅いから、と別れることにした。
別れ際、お互いに見えなくなるまで手を振り合った。