第三話 惚れる日
次の日
私はまた今日も、一人でボーっと学校へ行った。
今日は早く来たはずなのに、教室の中はいつも以上にざわついている。
松島凌輝の好きな人がばれたという噂が広がっているらしい。
「お前、好きな人だれなの?」
「いやーやめて。絶対に言うなよ!小林!」
「ふふふ。どーかな。」
そんな会話が周りのあちらこちらから聞こえている。
どうやら小林は知っているらしい。
まあ、私はあんまり関わらないでおこう。
でも・・・好きな人か・・・。そんなこと私は一度も考えていなかった。
・・・いや、私の好きな人はすぐ隣にいるかもしれな―
「おーはよっ!」
「え、わわー!」
「どうしたの?」
「いや・・・もうすぐ君が来るかなあ・・・と思っていたから・・・」
あわててごまかす。
「おおー!それはグッドタイミングだったね!」
「う、うん・・・」
やっぱり、何でもないかっ!
でも、やっぱり気になってしまっている。
でも―
「ん?どうしたの?」
「え、いやー今日は晴れてるなあーって」
「ははは。何それ。うける」
「ははははは・・・」
ボーっと見ていると、やはりこういうことになる。
今日の一時間目は、体育だ。
更衣室に行く。
相変わらず中はがやがやしている。
佳留子と話していると、隣から声が聞こえてきた。
渡川さんだ。
「さきちゃんって、よく見るとかわいいよね」
「え・・・そうかな・・・」
そう言っていると、佳留子が笑いながらつんつんしてくる。
―んもーそんな冗談言わないでよー。
とは言ったものの、とても嬉しかった。
授業が始まった。
今日からダンスをやる。
七~八人くらいでグループになり、創作ダンスをやる。
グループを作る。
私は、佳留子や麻美、三月や美穂と一緒だった。
そして、渡川さんとも一緒になった。
「またよろしく」
「うん」
そして、基礎的な練習を始めた。
渡川さんはダンスがすごく上手かった。
だから、みんなで渡川さんに習った。
私も、渡川さんに、体をたくさん使ってあれこれ教えてもらった。
とっても楽しかった。
終わって、更衣室に行く途中、私は渡川さんと話していた。
「突然なんだけどさ」
「ん?なあに?」
「今更だけど、私、渡川さんのこと、琴香って呼んでいい?」
「え?ハハハハ、何言ってんの。当たり前じゃん。超うける」
「え?あ、あはははは、そうだよね」
「それになんで今までそうじゃなかったの?」
「そりゃだって・・・あんまり接してなかったし・・・」
「そんな気にしなくたっていいのに。それに私たち友達だと思ってたんだけど・・・咲ちゃんのこと好きだし」
グサッ!
友達!?好き!?
思ってもなかった言葉が返ってきたので、返答に戸惑った。
妙に胸が高鳴っている。
落ち着け、落ち着け。
でも、ドキドキは変わらない。
どうしてだろう。
そんなことを思いながら、着替えていた。
教室に戻り、私たちは次の授業に備える。
私はまだドキドキしている。
授業が始まる。
次は理科だ。
「咲ちゃん、消しゴム取って。」
「はい」
「ありがとう」
天使のような笑顔。
ポッ
三時間目 家庭科
「琴香、これ糸通せる?」
「いいよ、ちょっと貸して。うーん・・・」
どきどきどきどき
四時間目 国語
今日は、朗読だった。
順番に回ってきて、私も読む。
「咲ちゃん、読むの上手いね」
「え、いや・・・」
「いやいや、上手いよ。私だったらいつもつっかえちゃうし」
「そんなことないよぉー」
「なんていうか・・・かわいい」
グサッ!!
え!?
この感覚・・・初めてしゃべったときの感覚・・・。
そして、私は確信した。
私は、渡川琴香のことが好きだ。
恋みたいなものかはわからないけど、好き、は好き、なのだ。
給食
私たちは、手を洗い、席に着く。
「咲ちゃん、さっきから様子変だけど、何かあった?」
「い・・・いや・・・大丈夫!」
「顔赤いよ」
「えええ!大丈夫だよ・・・」
そう軽く言う。
まずい、このままだとばれてしまうかもしれない。
でも、好きなのはまだ変わらない。
いただきますをして食べ始める。
「咲ちゃんのお昼ごはんかわいいね」
「えっそうかな・・・」
「・・・そういえば、成島と渡川ってそんなに仲良かったっけ」
「え、いや」
「うん!そうだよ!」
え、ええええー!?
いや、ちょっと待って!
思ってなかったわけじゃないが、そういわれてしまうと戸惑うし、困る。
でも、嬉しい!
そして、昼休み
佳留子と図書室に行く。
「最近琴香と仲良いよね」
「えっやっぱそう見えるの?」
「うん」
「隣の席だからじゃない?」
「そうかな・・・」
そうすると、誰か入ってきた。
琴香だ。
「おおー、咲ちゃんと佳留子ちゃん」
「やっほー」
「や、やあ」
まずい。
このタイミングで来るとは思っていなかった。
でも、そんなあいさつを交わした後、琴香はすぐに自分の世界に戻った。
私たち二人は、図書室を出た。
「わかった!」
「何が!?」
「咲美が琴香といるとなんかおかしくなるの!」
「えっええ!?」
そうすると、佳留子は私の耳元でささやいた。
「好きなんでしょ、琴香のこと」
「・・・」
「でしょ?」
「・・・ええー!そんなこと・・・ないって!だって!」
「私はそういうのいいと思うけどなー」
「う、うう。でも、好きってわけじゃ・・・」
「いい加減認めなよー!」
「でも、女子が女子を好きになるのって・・・」
「いいじゃん!」
「え?さきみん、好きな人いるの?」
「え、いやー、好きな食べ物の話してただけだよ!」
「えーほんとー?」
「そう、そう!そんな感じー!じゃねー」
「うん、ばいばーい」
いきなり美穂が現れ、びっくりした。
「ありがとう、佳留子」
「いやいや、一応誰にも言わないでおくよ!」
「やっぱり好きなのかな・・・」
「そうだよ!きっとそうだよ!頑張れ!」
「何がよ!」
来週は修学旅行もある。
できるだけ、知られないように・・・。
「・・・」とか「!」、「かわいい」がちょっと多くてすみません。
気にせずお読みください。