第一話 日常
私、成島咲美は、今日もいつものように学校に行く。
教室に入ると、いつもよりざわざわしているような気がした。
いや、私が少し遅く来ただけか。
先生のホームルームがさっさと終わり、一時間目が始まる。
一時間目は数学だ。
私はひっそりと少人数教室の隅っこで、授業の開始を待っていた。
ちなみに、自慢ではないが、私は一番上のクラスだ。
隣の席は静子だ。
「咲ちん、きょう宿題ってあったっけ」
「え、ないと思うけど・・・」
「そうだよね。ありがとう」
そうして一瞬で会話が途切れる。
私は実際、そこまで明るい方ではなかった。
だが、話せる友達はたくさんいた。
一時間目が始まる。
「咲美、消しゴム貸して」
後ろから三月が小声で尋ねてくる。
「いいよ、はい」
「おっありがとう」
そしてまた会話が途切れる。
なんだかんだで、今日も変わり映えのない午前を過ごした。
給食の時間になった。
「咲美、トイレ行こう」
「うん、いいよー」
そう言いながらも私はいつも考えていることがあった。
トイレに行く度に誰かを連れていく女子同士のこの儀式的なもの。
一人で行けばいいのに、と思うが、そうも言えない。
確かに孤独は私だって嫌だ。怖いと思う。
しかし、そんなことで友達なんて減るわけじゃないし、とも思う。
トイレから出てきて、流しに向かう。
流しはいつもの通り混雑している。
なぜか手を洗う位置は、いつのまにか男女に分かれている。
私も女子の中に行き、手を洗う。
石鹸を取ったら手が滑って、流しを伝って他の人の所まで行ってしまった。
そこにいたのは、渡川琴香だった。
同じクラスだが、私とはあまりしゃべらない。
ごめーん、取ってー、と言おうとしたら、その言葉は出て来ず飲み込んでしまった。
しかし、渡川さんはすぐにそれを取り、
「どうぞ」
と渡してくれた。
その笑顔は、とても優しかった。
席について、給食を食べる。
相変わらず、あまりしゃべることもなく、私の班は割と静か。
時々、麻美が口を開くくらいであった。
それにしても、さっきの流しのことで、渡川さんのことが何か気になっている。
まあ話す機会もないからなあ。