オープニング 恋バナ
「静子は誰が好きなの?」
「あたしは…ここだけだよ?」
「え~…誰?」
「3組の清水くん」
「えーーー!うそーー!」
今日は修学旅行で、京都に来ている。
やっぱり、修学旅行の夜は恋バナがつきものだよね。
私は、成島 咲美。中学生だ。
自分で言ったらなんだけど、見た目は純粋な普通の女子中学生。
別に変わったところはないが、みんなから忘れられるほど影は薄くない。
要するに、中の中ぐらい。
…いや、でも他の人から見たら変わっているのかもしれない。
私の、恋の事情が。
できればこの恋バナで私の方に回ってきませんように!
でも、そうはいかない。
「咲美ちゃんは誰好きなの?」
「えっと…私は…」
やはり対応に困る。
同じ部屋にいるのは、昔から友達だった、松原 麻実だ
その他は、遠藤 静子、小和田 美穂、川合 三月、塩野 佳留子、糸数 園華、
そして、渡川 琴香がいる。
話は続いている。黙々と過ぎる時間の中で、みんなの視線が私の方に集まってくる。
ここで言ってしまったら、修学旅行中の楽しみが奪われてしまう!
「私は…いないかな。」
とりあえずそう言っておく。
「え~なんだつまんない」
でも、この修学旅行中だけはせめて楽しく過ごしたい。
それだけが、今夜の願いだった。