2017年8月20日
2017年8月20日 日曜日
空返事は良くないっていうのは本当だ。
……今更になってやっぱ無理は怒られるだろうな。
どうしよ。何書けば良いんだろう。
以上、2017年8月20日の日記より(一部抜粋)
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彼女が小説家になろうに投稿している作品が分からないまま、ボクは受験勉強の合間をみてはハイブァンタジーの作品を読み続けていた。
ただし、一つの作品を全話読むのではなく、初めの三、四話を読んでみて彼女の書いた作品どうかを予想するといった、ちょっと変わった読み方をしていた。
最も彼女から貰った三回のチャンスは全て外してしまっていて、ちゃんと正解を教えて貰うのは受験後になっているままだ。
それなのに、一人で勝手に彼女の作品を予想しているのは、単に当てられなかったのが悔しかったから。
自分でもよく分からない負けず嫌いが発動していた。
それに、彼女はボクと違って絶対に嘘はつかない。彼女がハイファンタジーのランキングにあると言えば間違いなくある。
探す範囲がキチンと決まっていたことも、ボクが一人で探すことを止めない理由の一つになっていた。
ランキングに載っている作品を全て読めば、その中に必ず彼女の作品がある。
その一心でボクは読み続けたのだった。
その作業のせいで、只でさえ受験勉強で夜遅くまで起きているのに、この頃のボクの睡眠時間は極端に短くなっていた。
この愚かな理由で、当時のボクはよく日中にウトウトしていた。
上にある日記の日。2017年8月20日もその例に漏れていなかった。
この日は、彼女と喫茶店で勉強していたのだが、ボクは終始眠い目を必死に開けながら勉強していた。
休憩時間になった頃には起きているのがやっとで、彼女には申し訳無いが彼女との会話は完全に上の空だった。
「ねえ聞いてる?」という彼女の言葉でハッと目を覚ました時にはもう手遅れで、
「聞いてるよ!」
と、眠いのがバレないように元気に答えるのがやっとで、とても聞き返すことは出来なかった。
ボクが話を聞いていなかったのがバレなかったのか、はたまた彼女の優しさなのかは分からないけれど、彼女はボクの言葉をすんなりと受け入れてくれて話を進める。
「それで、どうかな? もし良かったら協力してほしいんだけど」
「う~ん……」
ボクは唸りながら考える。
最も考えている内容は彼女からの問いについてではなく、『何に協力するのか』を必死に考えていた。
考えているものの、彼女の話を聞いていないのだから答が出るはずもない。
最終的には真面目な彼女の事だから、変なお願いはしてこないだろうとボクは高を括り、彼女に協力する旨を伝えた。
それを聞いた彼女はパアッと可愛らしい笑みを浮かべて衝撃の言葉を口にする。
「良かった~。前回もかなり大変だったみたいだけど、ホントに人が集まらなくって……。一般募集しても数人しか集まらないから、自分達の彼氏にって話になったんだけど、A子も○○ちゃん(彼女の文芸部の友達)も彼氏に頼んだけど断られたんだって~」
……他の人は自分の彼女に頼まれても断る事をボクは承諾してしまっていた。
テーブルの上のケーキは半分しか残っていないし、大喜びしている彼女をガッカリさせるわけにもいかない。
ボクは腹を決めて、協力する内容の把握に努める。
「具体的にはどんな感じなの?」
「基本的には小説でお願いをしたいんだけど、中には部活の実績発表みたいなのもあるから、比較的自由な内容で大丈夫だよ。ホントは前回のがあれば良かったんだけど、A子が持ってってるから手元に無くって。今度持ってくるからちょっと待っててね」
……この日、ボクは何かしらの文章を書くことになったのだった。




