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灰色の御用聞き  作者: 秋
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4話 変身(レベリング)の準備

変身。

それは、キラキラ光りながら一旦全裸になって全身に新しい服が装着されたり、

改造されたりバッタをコンセプトにした外装を装備したりして、常人を遥かに超えるパワーを得る、という前世でよくある、パワーアップを目的としたもの。

なまじ、ベルトであるだけに後者のイメージが脳内に浮かんでしまうけど・・・。


「それって、かめn

「うん、やめておこうね。」

 何、別に変身って言っても、改造したりとか、そういう訳じゃないからね。」

「え、改造しないの?別に改造でもいいんだけど・・・。」

「え!?いいの・・・!?」


・・・。

・・・。

ナインの瞳が無垢な輝きから、うっすらマッドサイエンティストの光を帯びた輝きに

変わってきている気がする。

何、ええんやで、それで・・・。


「いいよ?」

「・・・マジで?

 オーケー、そういうことなら話は早いじゃないか。

 この世界だと、戦闘システム自体はなんとなくゲームっぽいファンタジー要素たくさん

 あるんだけど、どこを切られても刺されてもHPが減るだけ、とかそういうのがないから、防御力ってのはとても大事だと思うんだ、特にレベルの低いうちはね。

 指を切られれば指は飛んで無くなるし、腹を刺されれば内臓が傷ついてすぐ死ぬ。

 そういうのを避ける為の局所的なバリアみたいなのを構成できないか、ってのを考えた。

 理想は全身を覆うほどの防壁だけど、局所的な障壁くらいなら、低出力のエンジンでも構築できると思うんだ。

 レベリングならとりあえずスライムとかゴブリンからかな、って言って骨も帰ってこない冒険者もたくさんいるわけだし、攻撃力はともかく、防御力は初期から必須だと思っていい。

 ただ〇〇レベルの戦士が〇〇レベル相当の武器防具を装備しました、戦いました、△△レベルのモンスターなら絶対無傷で勝てます、みたいなレベル制RPGではないわけだからね。

 それなら防具でカバーされてない箇所の身体を保護する装備が何かしら必要だろう?」

「もうちょっとゲームっぽいシステムでも良かったんだけどなぁ・・・。」


そもそもモンスターじゃなくても、3歳の私からしたら普通の人間の10歳の子供が刃物持って襲って来られただけでも普通に殺されかねない。

武術をやっていた経験もないし、戦闘技術も体力もリーチも何もかもないわけだし、加えてチートも持ってないし、血管やら内臓やら傷つけられただけでも普通に死んでしまう。

今はまだ、普通のボディしか持ってないのだから・・・。


「言うまでもないかもしれないけど、化け物だからね、モンスターって。

 まだ野獣ならマシかもだけど、野獣ですら犬猫みたいな大きさじゃないからね。

 で・・・そこで変身システムだよ!」

「お、おぅ・・・。でもどうやって変身なんてするの・・・?」

「少し話を変えるけど、こちらの世界ではほとんどの人の知っている『まとい』っていうスキルがあってね、一兵卒から戦貴族まで、レベルの差はあれど皆使ってるんだけど。」

「うん、私も知ってるよ、身体強化系のセルフバフタイプのスキルだよね。」

「そう、自己身体強化系っていう一番ありふれてるやつだね。

 あれは操者の内側から発する物だけど、今回変身と呼称する外装には、『纏い』に似たスキル様態の、『纏い』より外側に、ベルトから相対距離を設定した小分けにしたバリア、というか障壁のような物を構築して装いとする。

 小分けにすれば、箇所毎に必要とする出力に応じて、部分的に外装の出力を上げる方ことができるし、全身を覆うほどの出力がなくても構築することができる。

 身体が主体の『纏い』なら部位ごとの出力調整は可能だろうけど、これは外部装置で調整するものだからね、『纏い』ほど繊細な調整はできないと思ったほうがいい、流石にそこまで万能な装置にはならないから。

 『彼ら』も、必殺技の前には溜めを作るだろう?あんな感じだと実際の戦闘だと隙だらけだけど、スイッチを操作して指定箇所の部分的な出力を操作するセットを自分で設定すれば、自分の必殺技モーションを使いやすいんじゃないかな?

 ジャンプキックなら、主に足とジャンプに必要な筋力を補強する、そして前面を強化した外装を構築して、逆に背面の外装を弱い出力にすることで一時的な出力増強の負荷を軽減する、といったようなセットを設定すればいい。

 常時全身一括で全力構成して全体出力を賄うには君のエンジンはひ弱過ぎるし、成熟まで時間がかかりすぎるから、そのあたりは論外かなぁと思ってる。

 勿論、それが賄える状況になれば、常時全身全力出力がいいのは間違いないんだから、構成できるようにはチューンする、今の話だよ、怒らないで聞いてね。」

「うん、大丈夫だよ、それは私もわかってるから。

 それはまぁ、そうだよねぇ。

 それに全身一括で構成してたら、無駄な出力してるとことかエネルギー勿体ないよね多分。

 常時発動する余力があるのなら、他のことに余力割いた方がいいかもね、私はあんまり最前線に出てるわけじゃないだろうし・・・。」

「まぁ普通、『纏い』が戦闘職の初歩的な防御の技術として、前提条件みたいな形で装備品も構成されてるから、ある程度成長したらそちらから押えるもの手だと思うよ。

 こちらの世界の防具って、他の部位は怪我するかもしれないけど、致命傷避けられたら御の字でしょ?急所だけ守っとけばいいよ的な雑な感じだし・・・。

 まぁ、元々、君は商人がメインだっていう頭があったから『鑑定』が最初に頭に浮かんだろうね、確かに今のフェーナでも発動できる商人としては基本にして究極のスキルではあると思う。

 でも、僕たち職人や戦闘職なら、まずは『纏い』が一番最初に修めるべき基本にして、そして究極のスキルだから。

 装備品、特に防具の着用時の前提としては『纏い』は不可欠だよ。

 一番初歩的だから、高レベルでなくても使うだけなら誰でも使えるしね。

 戦闘だけじゃなくて鍛冶や大工、はては料理人でも使ってるようなスキルだよ。

 徒手空拳で戦う人達もいるから、彼らの身体強化が一番参考になるかもしれない。

 『纏い』は特定の肉体の細胞に粒子を集めて肉体の細胞を保護し、普通では有り得ない強度まで限界を突破させるスキルで、極めると徒手空拳で岩が砕けるようになるどころか、モンスターを倒すことが出来るレベルまで成長することも可能になる。

 勿論、剣や槍、弓等の武器を使う人達も、武器を使う反動を抑えたり、武器を持つ手等を保護したり、局所的に強度を増して防御の代わりに使用したりするわけだから、使っていない人と使っている人では破格の差が出るわけだ。

 何せ、粒子を帯びた武具類の破壊力は尋常じゃないからね、『纏い』なしで武具を使ったら、持ってる手が反動でぶっ壊れる可能性が高い。

 と、ここまで『纏い』については語ったけれども、だがしかし、だ。

 こういう話だから、おそらく君もヒノワ様の領地に行くと最初に『纏い』からやることになるだろうから、そこは詳しくは除外しよう、と思う。

 実際、きっとヒノワ様の方がちゃんと教えられるから詳しくはヒノワ様の領地で聞いておくれ。

 ここでしたいのはその先の話さ、『纏い』は性質上、身体から発して己に被覆するわけだから、硬さ、厚さの違いはあっても、基本的には『自分の身体を強化する』という1種類の層でしか全体を構築できない。

 ひょっとしたら防御に特化した人なら、それ以上に多種の構築をしている人はいるかもしれないけど、以前聞いた話では、戦貴族の方々でも2層以上構築できる方は聞いたことがないらしい。

 『纏い』はもちろん必須級だけど、その層の外側に別の層を張り直すことが出来たら・・・防御的な死角はかなり減るんじゃないかな?

 あわよくば、そのまま攻撃面への強化になるんじゃないだろうか。」

「そんなことが出来るなら・・・確かに大分凄い装備になりそうだけど、できるの・・・?」

「できる。これは確信だ。

 まだ現物は存在しないけど、失敗作の試作品をいくつか作っている中でも手応えはあるから、実装まできっとそう長くは掛からない。」

「おぉ・・・それは凄い・・・。

 きっと、革命的な発見というか装備品になるよ!」

「そうだね。

 でも、現実的な話、今の技術じゃベルト単品だけで全身をピッタリ覆うほどの、変身と断言できるほど細かい設定を加えた疑似的な『纏い』は展開できない。

 なので、粒子放出元としてベルトを親機として、溜めた粒子エネルギーを放出、それを受けた子機が展開範囲を補うような形にする。

 具体的には、ベルトが親機で子機は手首、足首、肘、膝、胸、頭部の10箇所ってとこかな。」

「なるほど・・・。

 でもそんなに装備品付けてたら、変身してない時、すごい目立ちそうだけど・・・。」

「親機は必然的に大きくならざるを得ないけど、子機は中継するだけだから装置としては極小で収まるよ。

 で、これは献体で人体実験をしてからになるけど、子機に関しては、『体内に埋設する』方法が一番いいんじゃないかと思ってるんだ。」

「うん、まぁ、それなら目立たずに済みそうだね。

 触れられたら分かるかもしれないけど。」

「埋込する子機装置に関しては薄くて小さい、平べったいカプセルみたいな物をイメージしているけど、こちらについてはこれからの開発になるので、具体的な大きさや厚みなんかは未定だ。

 筋肉に埋め込むと動きに影響するだろうし、炎症の元になるから、皮下脂肪の下、筋膜との間に埋め込むことになると思う。

 治癒魔法を重ね掛けしていけば、手術痕もほとんど残らないと思うから、傷痕はあんまり気にならないとは思うけど、そこは納得してもらうしかない。

 構わないかい?」

「目立たないなら本当に、一切気遣い無用!全然、構わないよ。

 いっそ、どうせやるなら私の細かいことは気にせず、コンセプトを決めて出来ること全部盛り込んでやっちゃおう!

 この世界に来た時の神様?の言い方だと、リアルに何か起きても加護的な保護はなさそうな予感しかしないから何かあったら本当に普通に死んじゃいそうだし、折角こんなに早い時期にナインっていう天才技師と知り合えてレベリングを推進できる人体実験体にしてもらえる、ってことなんだから、大歓迎だよ!

 それに、目立ったとしても、役に立つなら私も基本的に全部受け入れるつもりだし。」


チート能力はない。

チート能力はないけども、私は環境に恵まれた。

アグリア商会が身近にあり、サキカワ工房に紹介を受けられ、ナインに出会えた。

躊躇するなんて、勿体なくてとても出来そうにない。

というか、この環境でやるだけやらなかったら、それこそ後から後悔することになる。


「君を人体実験体にするつもりはないんだけど・・・人体に危険な実験は、重罪人とかを領主様からお借りしてやることが多いんだ、こっちの世界の重罪人は貴重だからあんまり使いつぶすな、とは言われるけど・・・。

 まぁ自分に移植されるアイテムの実験だから、その実験でフェーナに『鑑定』してもらうのもいいかもしれないけど・・・。」

「立ち会わせてもらえるなら、是非お願いします!

 それで、話の続きだけど・・・。

 多分、『纏い』って内側に向けたら高速で動いたり衝撃を受けた時に筋肉や骨、関節や靭帯、内臓や眼球、鼓膜とかを保護したりとかって効果も付与できるんだよね?

 なら、外側にも層を展開したら加速したときの身体の保護能力はもっと高くなるよね?

 とすると、いずれ自分の機動力に脳内の処理能力がついてこなくなるんじゃないかな。

 知覚速度を高めて、というか知覚時間を加速するスキルとかってないのかな?

 そういうスキル取得か技術を習得してないと、脳内の処理速度に引き摺られて機動力の上昇速度が落ちそうなのが気になる。」

「そんなスキルあったかなぁ・・・。

 多分、皆そういうのは身体で覚えて徐々に成長しているとは思うんだけど。

 既存スキル例になければ自分で設定して育成してみればいい、この世界のスキルシステムなら、そういう自由度はある。

 しかし、もしかして、フェーナ、君・・・まさかカブトムシのアレやりたいのかい・・・?」

「出来るなら、全部やりたい!っていうのが、私のこの人生での目標なの。

 攻撃力、っていうのかな、そういうのは総合力になると思うけど、単純な破壊力って強度とエネルギーがメインじゃない?となると、私じゃそういうのを手に入れるまで時間がかかりすぎると思うの。

 だから、力がなくても出来ることを鍛えて、私はレベリングを開始したい。」

「分かった、君のイメージは僕の中にもある、アレはカッコいいよね・・・。

 拡張性は取れるように製作するけど、バージョンアップに応じて、ひょっとすると中継器は一定期間ごとに交換することになるかもしれないけど、構わないかな?」

「構いませんとも。じゃんじゃんあれこれ盛り込んでやっちゃって下さいな!」

「ふふ、本当に楽しそうに話すね。」

「夢が膨らんで仕方がない状況だもの!

 じゃあ、私の思いつく発想は全部紙に書いておくので、使えそうなのがあったら使ってね!」

「そうだね、そうしてもらえると助かる。

 とりあえず、ベルトの改良品の完成に一か月半程度、拡張品の完成に一か月弱程度はかかるだろう。

 君がヒノワ様の領地に行く直前には一通り納品できる。

 パワーレベリングされるにしても、レベリングする為の汎用の装備品は賄えると思ってくれていい。

 素手か武器かは分からないけど、君が主武装を決めたら、また連絡をくれたらいい。」

「分かった、有難くナインのご厚意に甘えるね。

 私に出来ることがあったら、何でも言ってね、本当に。

 研究費用も製作費用も全て持ってもらってるし、実際そのベルトの完成品買おうと思ったら滅茶苦茶高いっていうかきっとお屋敷買えるレベルだよね多分・・・。

 何かお礼したいの。」

「ふふ、何、君が気にする必要はないよ、君のおかげで、僕の研究は15年以上は短縮できた。

 その間に費やしたであろう研究のストレス、浪費したであろう若さと時間、浪費したであろう膨大な予算を、君は計算するべきだ。

 15年もあれば、『研究のついでで作るであろう僕の目的とは違うどうでもいいレアアーティファクト』なんて、最低でも300個はあるだろう。

 納得のいかない製品を300個以上も作って、日々ストレスを感じながら納品して、僕の望む物が出来ないと苦悩する日々が15年くらいは短くなったことになるんだよ。

 それに、君は思い違いをしていないかい?

 君の装備品については勿論ワンオフだし、僕は基本的に同じ物は技術検証用の試作品と完成品一つくらいしか作らないけど、それは信条的な問題であって、絶対に一つしか作れないというわけではないのを忘れていないかい?」


確かにナインは基本的に同じ製品は2個作っていないという話は聞いていたけども、通信機は信頼のおける人達にはいくつか量産して渡しており(通知していないらしいけど念の為にナインの親機からの発信で基盤部品当たりは爆破できるらしい)、他にも必要と思った物は複数作っていたんだった、というのを今思い出した。

『男のロマン』とそういえばさっきも言っていたのだし、ナイン本人も変身したいんだろうな、きっと・・・。

語り口のテンションは上がる一方だ。

きっと、テンションが上がり過ぎて歯止めが利かない状況になっているんだろう、寝不足だろうし・・・。


「既に君よりレベルも高くて、力も身体もあり、レベルが上がりにくくなって久しく、しかしレベリングには貪欲である人間で、日々ストレスを感じており、しかも男のロマンである変身まで可能になるだろう装備品を装備したい人間がいるのに、同様の装備品を作らない理由があるだろうか?

 否、否だ。そんな馬鹿げた理由なんて無い!!!男なら誰だって変身したい!!!」


顔がもう晴れやかを通り越して、なんかもう恍惚というかイッちゃってる感じになっていて、ちょっとヤバイ感じだった。

ここ数週間である程度分かってきたが、ナインも大概ド変態だった。

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