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灰色の御用聞き  作者: 秋
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3話 装備(レベリング)の準備2

ヒノワ様との出会いから1か月、ナインと出会ってから2週間というところで、

「年明け1月に迎えに来るから、『楽しみ』にしておくように」

と、ヒノワ様から物凄い短い文章の手紙がきた。

多くは書いていなかったけれども、これはおそらく

「1月からパワーレベリングするからレべリングの為の準備をしておけ」ということだろう。

今のところ、準備には余念がないので、早くヒノワ様の領地にお伺いしたいところではある。


とりあえず、ナインの開発しているアーティファクトの開発が終わるまでは、『鑑定』スキルの修練と強化を行うつもりだった。

あくまで『鑑定』はレベリングの準備の為の物ではあるけど、商人としての仕事でも勿論使えるし、レベリングするにしても『鑑定』で分かる物が多いというのは利点しかないから、多分生涯修練し続けることになるだろう。

『魂の器』は、ナインの言葉から仮の呼称にしただけなので正式名称は分からないけど、とりあえずソレは筋肉と同じで負荷をかけて鍛えるとEXP粒子を使って成長し、EXP粒子を蓄えて肉体と魂を強化していくらしい。

かといって、3歳の最大値なんて知れているから、消費MP(?)の少ない『鑑定』はうってつけなのだ。

目標としている職、商人としても必要不可欠なスキルでもあり、有用で、レベリングにも使えるというは一石二鳥どころか一石三鳥にも四鳥にもなる便利スキルである。


チート能力は持っていないので、今のところ戦闘力は皆無に近い為、お手軽にサクッとレベル上げにモンスター狩り、なんていうふうには出れないけど、こればかりは致し方ない。

とりあえずできるところからコツコツと、だ。

鑑定系の初歩、初級『鑑定』スキルは、初級ながらも様々な鑑定が可能だった。

祖父に聞いてみたところ、鑑定系のスキルは修練が進んでグレードアップするとデータ量(項目)が増える、見えていない部分の鑑定ができるようになる(内部探針ができる)という感じらしく、上級スキルを超えてくると『詳細な成分の分析』のようなことはできるようになるらしい。

一般の商人でも基本的に取引先との信頼関係のもと、相手の目の前で商品を『鑑定』し、商品価値を確認してから取引することが暗黙の了解となっているほど一般的に普及しているそうで、しかも同じレベルの『鑑定』を使うと、誰がやっても必ず同じ被鑑定物のステータスが表示される、という、まさにゲームといったシステムだけれど、その辺りは明瞭会計で良いなと思う。

成分分析機にかけたりX線検査機に入れてようやく分析ができた前世と比べると、初歩スキルに近いスキルの延長上でこんなことができることに驚いた。

そして、『鑑定』を使った後、『分析』スキルを使うと、そのデータを基に指定データが指定グレード分けにどの程度分布しているかなども判明するようになる。

こちらも、『鑑定』と似たような成長具合だそうなので、ワンセットで使用する可能性が高いこの2つのスキルは商人としても、レベリングの準備のためにも必要なスキルだと言えるだろう。


ナインから預かった、特級レアアーティファクト『通信機』を手に取ってみる。

『鑑定』『分析』


鑑定(成分分析):鉄炭素合金、金、銀、サーボナイト、疑似ABS樹脂、粒子結晶複合体、粒子配線用結晶複合体

   粒子出力量 規定450最大2000、粒子吸引量 250、

   粒子付与機能『通信機同士でのみ音声のやり取りができる』能力あり

   制限付与『登録された同型機1台とのみ通信可能』

分析(用途分析):外観『タバコの箱程度の大きさの携帯電話』

   内部『機械部品による構成』

   使用用途『離れた同型の通信機と連絡を行う』

   最大有効距離『140km程度』

   最大通話時間『5分。使用後、粒子量の充填に最大20時間程度必要、充填中は使用不可』


特級レアアーティファクトの名は伊達ではなく、電化製品のない世界で最大140kmも離れた相手と会話が可能になる装置。

同型機1台とのみ通信可能という制限をつけることによって可能になるらしい。

電波とは違って、特定の属性を付与された粒子はあらゆる物を透過して、定められた対象にのみ定められた目的で吸収される、というとんでも粒子の特性を利用した機器らしく、山の中や海の上、洞窟の中でも使用可能というチート能力もかくやという性能だ。

しかもこの道具、ブースターとしての役割もある為、省エネでもあり、私でも使用できる。

祖父と二人で予想した市場価格、約『1~4億』ドエン。

ドエンが通貨で、きゅうりみたいな野菜が1本50ドエンなので、そこから相場を想像してほしい。

『君には連絡用にこれを渡しておく』と、ポンと渡されたレアアーティファクトだったので、その瞬間は価値について深く考えていなかったが、帰宅したあとにプルルルルという着信音のあとに『もしもし』と電話がかかってきたときには祖父と二人でなんてものをよこしたんだ、と身震いした。

軍指揮官や王族が持ちたがること間違いなしの装備品であるし、作れば作った分、言い値でも確実に売れるはずの物であるが、量産していないらしく、存在を知っているのもナインとサキカワ所長だけ、所有しているのは信頼のおける人達のみ、総数でも両手の手で数えらえる程度しかいないらしい。

どうも、軍事色の強いレアアーティファクトは基礎技術開発として経由する為には開発しても、量産は行わないらしい。

彼らは先代~サキカワ所長が職人として採用する際に選別し、自分の目標とするとんでもない技術を開発することだけを史上目的とした変態だけが在籍しており、その途上で製作した物で戦争事情を変化、加速、促進させるつもりはないらしい。

サキカワ所長旗下、サキカワ工房の職人達はほぼ求道者のような技術者と言っても良いかもしれない。

ナインやサキカワ所長はこの世界でトップレベルに分類されるグレードの職人なのだからもっと稼いでいると思っていたけど、実際金銭目的ならもっと稼げるところを、拒否しているそうだ。

大半は依頼で求められた物を、作れそうな職人が担当して製作して販売し、その利益で自分達の研究をする予算を捻出する、という研究のために研究するヤバイ集団らしい。

が、サキカワ所長とナインは技術的閉塞感の解消を目的として比較的外部からの交渉に応じていて、父レナルトを窓口にアグリア商会を経由して取引に出した製品の数が100ではきかない数を卸しているとのこと。

ナインの取り分は分からないけれど、1個当たり1千万ドエンを下回ることはないと言われているレアアーティファクト製作者であるのだから、その一部が収入になっているとしても、とんでもない金額が手元にある金持ちなのは間違いなさそうだ。

目指す物に辿り着くまでの経過ですら予算が天井知らずだが、そこに辿り着くまでの予算をケチるような精神すら持ち合わせていない職人達の集まりに所属しているのだから、ナインも手元には残していないかもしれないけど。

サキカワ所長もナイン以外にもレアアーティファクトを製造する職人を十人以上抱える工房の主なのだから、相当稼いでるはずだけど、全然金持ち感を発揮していない。

サキカワ所長だけじゃない、他の職人さん達も擦り切れた作業着を着古しており、とても高給取りには見えない。

この工房は良く言えば清廉な職人達の集まり、悪く言えば身の回りのことを全て放置して全てを研究に費やすことすら厭わない激しい浪費家だらけの職人達の集まりとも言えるかもしれない。

そして、サキカワ工房の職人達は恐ろしいことに全員が破格の戦闘力を誇るらしく、全員が護身用どころではない戦闘用のレアアーティファクトを自作して武装し、市場には出回らない威力の物も所有している。

過去数回、豊富な粒子目的、金銭目的、もしくはアーティファクト目的でサキカワ工房を襲撃してきたモンスターや強盗団を経験値稼ぎに丁度いいから、と職人達が我先にと自らで討伐し、巷を騒がせたこともあるらしい。

ちなみに戦闘レベルが高い理由は、粒子放出量の多い材料を扱う事が多い為、高濃度の粒子を浴びる頻度が非常に多いから、というのもあるが、『モンスター討伐隊に同行して特殊調達素材を集めたりする』から単純に戦闘経験も積んでいるから、というのもあるらしい。


『もしもし、聞こえるかい、フェーナ』

「聞こえるよ、ナイン。どうしたの?」

『君用のアーティファクトの給電問題の件でね。

 充電池は組み込み式にすると使い切った際の継ぎ目が気になるから、差し替え式にするって言ってたけど、金属部分の固体電池化作業が安定化に成功したから、そっちを採用したよ。

 おかげで、概ね小型化のプランニングも済んだんで、報告しようと思ってね。』

「固体電池完成したの・・・!?すご・・・。」

『ははは、ファンタジー要素使っちゃってるから、純粋な科学技術ではないし、本来の固体電池とは違うだろうけどね・・・。

 障害になってた『粒子を抜く』作業が形になってからこっち、めちゃくちゃやれることが増えてね。

 小型化も急速充電の目途もたったし、ベルト型にしようかと思うんだけど、どうかな。

 腰にポシェットみたいなのを付ければいけると思うんだけど・・・。』

「ベルトとポシェットならつけてても不自然じゃないし、忘れたり落としたりもなさそうでいいね。」

『だろう?

 よし、じゃあベルト型で製作するね、多分明後日には完成するよ。』

「はっや!えぇ・・・ナイン、ちゃんと寝てるの?」

『1日1時間は寝てるよ、興がのっちゃってね、興奮して眠れないんだ。

 あと、舐めてもらっては困るけど、僕は君がレベリングが好きだってことと同じくらい、アーティファクト作成が好きなんだ。

 それこそ、作りたい物を作る時は、寝る間も惜しいほどにね。

 しかも、素材の問題で行き詰まってからここ3年くらい、素材についての障害以外については素材さえあれば確実に実現できるだろ、くらいまで理論は完成させてたんだ、素材さえ目途がついたのならやりきりたくなるのは当然さ。

 完成させたらゆっくり寝させてもらうよ。

 差し当たり、報告はこれだけ。

 で、報告とは別に、ベルト式のアーティファクトの今後の開発計画について話しがしたい。

 ちょっと長くなるかもしれない、というか数日こちらに泊まり込みで打合せをさせてほしい。

 現物のテストもあるし、今週末からしばらくこちらに来れないかい?』

「分かった、お爺様に相談して、週末からそっちに行けないか確認してみるね。

 お返事、明日になっても構わない?」

『構わないよ、僕はトイレ以外は寝てる時もずっと工房の作業場にいるから、いつでもいい。』

「ちゃんとお布団で寝てね・・・。」

『9時には寝てるお子ちゃまとは違うし、何、僕も粒子で肉体強化は進めているし、大丈夫さ。

 あと、来てくれた時までに完成しているかどうかは不明だけど、打合せしたい内容についての試作品みたいなものはサッと作ってしまうので、来た時にそちらも確認してもらえると有難い。

 じゃあ、返事を待ってるよ、こちらは作業に戻るね。』

「また明日、おやすみ、ナイン。」


ナインと通信機で打合せを重ねながら、時にはサキカワ工房で直接打合せや実証を行っていたけど、彼は2か月どころか、3週間、11月頭にはレアアーティファクトを仕上げてくれた。

完成までの間、試作品も試験的に何回か装着してみたけど、完成品の本出力は、桁違いの、目を見開いてしまうどころではない、目が飛び出そうなほどのエネルギーの奔流を感じた。


「どうかな?

 僕も自分でテストロットから何個か試しながら調整してたけど、君のつけてる完成品はパーツ、仕上がり共に完璧で、自信作なんだけどな。」

「完璧だよ、ナイン。

 目が飛び出そうなことを除けば。」

「はは、慣れない内はそう感じるかもしれないね。

 多分、身体が活性化されてそう感じるんだろう。

 君は元のキャパシティがめちゃくちゃ小さいから、元の自然吸収分がかなり少ないし、現状だと無理矢理に器をいっぱいにしている状態なんだろう、成長前はかなりつらいだろうね。」

「こんなに粒子が溢れたら勿体ないね、早々に何か考えないと・・・。」

「いや、大丈夫だ。

 一時的には溢れるだろうけど、あくまで今は自然吸収分を強制的に収集して無理矢理点滴しているようなものだ。

 それだけ供給されていれば、まぁフォアグラとは言わないけど消化器官はすぐ大きくはなるだろう。

 成長して器が大きくなったら、この程度では溢れなくなるんじゃないかな。

 低レベルの時の方が、レベルアップの間隔は短いわけだし。

 あとは、実際にモンスター討伐系のレベリングで恣意的に吸収する粒子量がどうなるか、だね。

 こればっかりは、そう簡単には行えないから検証できないけど・・・。」


この世界のレベリングはいくつか種類があるけど、大まかには、

1)自然吸収:大気中を漂っている無方向性の属性の粒子を自然に吸収して成長するパターン

  これは完全に個人の先天的・後天的な色々な才能に依存していて、何もしていないのに最強みたいな化け物もあり得るのはこの項目の才能がヤバイ場合。俗に言うチート。

2)修練:自然に吸収する分の量は変わらないけど、修練することで器は大きくなり、適正のある才能が伸びやすくなるので、成長度合いは自然吸収に比べるとかなり早い。

  これも成長度合いは才能によるけれど、1の項目に比べると自己努力で成長可能な部分でもある為、戦闘・非戦闘を問わず、皆やっている。

3)粒子所有物の破壊:任意に粒子を放出させることができる為、手っ取り早くはあるが、そもそも無方向性の属性の粒子以外は何かしらの意思があるのか、破壊に関与した要因の多い物に多く引き寄せられる法則がある為、破壊したハンマー、切り裂いた剣、刺し貫いた槍、射貫いた弓矢などの道具そのものに、そしてその使用者に引き寄せられ、吸収される。

逆に言うと、同行していても働いていない者にはEXP粒子は寄ってこない為、漂っている大気中の粒子の濃度が濃くなって自然吸収量が少し増加する程度しか効果がない。

 一番分かりやすいのは、粒子貯蔵量の多いモンスター討伐によるレベリングではあるが、農家、林業、猟師、漁師、料理人のような生命体の生命活動を停止させる職業の仕事でも被破壊物から粒子はよく放出され、職人達や使用する道具もそれに応じてよく強化される。

 又、高濃度の粒子に晒され続けた物体も有機物無機物を問わずに物によっては粒子を貯蔵し、粒子放出体となることもある。

 宝石の破壊等でも粒子経験値は得られるが、微量の為、効率はかなり悪い。

 戦闘職や、高レベルに至る為のレベリングを求める者は基本的に一番効率のいい生命体の破壊を選択することになるが、一番身近であるヒトを殺害した場合はヒトのコミュニティ内の問題に発生することに加えて、魔獣よりも強い戦貴族が討伐にくることもあり、基本的には街の外に出てモンスターを倒すのがレベリングの定石らしい。

この世界のモンスターは、生物の延長上、存在し得るレベルの生物ばかりで、ゴーレムみたいなのは伝説にしか残ってないくらい目撃されておらず、聞く限り大半はRPG的に言えば雑魚ばっかりだ。

ただ、簡単に言うと、街の防壁を離れると、その外は柵のない動物園というかサファリパークだ。

更に、ヒトだけじゃなく、モンスターもEXP粒子の影響を受けて成長する。

長命のモンスターは知恵を持って、言葉を覚えている者もいるほどらしい。

雑魚に当たれば、武装していれば撃退できるかもしれないし、狩りに出て仕留めることが出来れば食糧や毛皮も手に入るわけだが、森からいきなり虎や狼が大挙して襲ってきたら、一般人が生き残れないのは自明の理だ。

何度死んでも大丈夫なゲームではなく、一回死んだら終わりのリアルな生身で、訓練も受けていない3歳の非戦闘職が武装して戦ったところで、生き残れるだろうか?

生き残れたとしても、初見で、更にステータス上の数値で負けている虎並のモンスターを討伐して経験値を取得することができるだろうか?

年齢はともかく、職については戦闘専門職でもない限り無理だろうね。

普通にやれば。

初代国王様の建国時等は、モンスターとは比較にならない魔獣が跋扈していたというのだから、レベリングには困らなかったとしても、一般人の死亡率は極めて高かったことだろう。

魔獣や守り神レベルのモンスターがヒトのいる領域にほとんど出てきていないのは、戦貴族の方々が討伐したり追い払ったりしていて、加えて戦貴族の方々が出張るまでもないモンスターに関してはハンターや領主が率いる軍隊が定期的に討伐や狩猟を行っていて間引きしていて大物が寄り付かないように予防策を普段から講じているからだそうなので、非常にありがたいことだ。

おかげで、ヒトの生活圏が広がり、比較的低レベルの者も街の外に出られるようになり、更に街と街を繋ぐ行商が成り立つようになった。

と言っても、行商を戦貴族が護衛してくれるわけではないので、行商で街の間を移動する際は、戦力的に普通のモンスターを討伐できて商人や荷物も守れて、人格的にも敵前逃亡や盗賊化したりしない、という信頼がおけるギルド等がバックボーンとして保証してくれる護衛者でなければ雇えないし、不用意に危険に突撃しないように回り道をしたりモンスターを刺激しない方法で護衛対象を移動させる必要がある等、求められる要素が非常に多い為、行商の護衛は一般的には俗に言う冒険者、ハンターの中でも高給取りの部類だ。

各商会がお抱えを雇用している場合もあるけど、距離や荷物の重要度、道中の危険度の情報等により、その都度、条件にあった傭兵をギルド経由で臨時求人することが多い。

アグリア商会では、重要度の高い商品の輸送等について、いつもお願いしている上位ハンター15人程度をリストアップしていて、その中からその都度、都合のつくメンバーを10人ほど選出して護衛としているようだったが、一般的な行商であれば5人も雇ったらかなりちゃんとしている、と言われるレベルの世界なので、商隊を組織して10人のハンターを付けて輸送を行うアグリア商会は都市間の物品輸送では最高セキュリティに近い扱いだった。

護衛は多く雇えばその分高くつく為、商隊に大きく頑丈な荷馬車隊を編成可能で、一回の運行で多くの商材を運搬できるアグリア商会だからこそできることである。

普通の商人や商会だと荷馬車一台に毎回護衛をつけていたら護衛代の方が高くついてしまうような事例も多い為、特段急ぐ仕事でなければアグリア商会に依頼して、荷馬車隊に相乗りさせてもらって商材を運搬するケースも多いらしい。

基本的には、前世でよく読んだ物語に登場した、よく主人公が所属するハンターギルドとか冒険者ギルドとか、そういう類の組織が各街に設置されたのは、おそらく異世界転生した人達が最初に自分達の活動を支援する組織を作ったものが始まりだろうとされていて、最初期の転生もしくは転移した人達は、自分達の後に転生・転移してくる人達の受け皿を構築しようとした意図もあったのだろうともいわれている。

現在は運営している人も所属している人も、元々こちらの世界にいる人も、異世界転生・転移した人も所属している。

ランクに応じた仕事のランク分けや定期的なレベリング補助、既存のモンスターは勿論のこと新しいモンスター周知等もあって、不測の事態でもない限り、ハンター達が死ぬことはあまりないそうだ。


「このベルトつけてハンターの狩りに同行させてもらったらレベリングも進みやすいとは思うけど、

 しばらくは自然吸収分をブーストした分だけでも十分だろうと思うし、無理しなくていいんじゃないかな?」

「そうだね、レべリングは、ノウハウのある人に教えてもらうまでは無理しないほうがいいかな。

 ヒノワ様の領地に行けば、パワーレベリングさせてもらえるのだろうし。」

「うん、そう思うよ。

 技術だけは修練が必要になるから、何をやるにしても、先に修めるべき技術を身に着けて、そちらを修練することを優先した方がいいかな。

 ところで、フェーナは何を修めるつもりなんだい?

 あんまり商人って戦闘系のスキルとか聞かないから、普通の護身術系のスキルを取得するのかな?」

「うーん、戦闘は怖いかなぁって思ったりしたんだけどね・・・。

 魔法とかあるなら魔法で、って思ったけど、魔法だと出力の問題で並の才能じゃモンスター討伐なんて無理って話だし・・・。」

「魔法か、魔法も有りだと思うよ。

 創造系の魔法はない、というか実現できるレベルの粒子が人間の器に貯蔵できないっぽいから、僕は取るつもりないけどね。

 攻撃魔法単体でのレベリングとかはかなり難しいと思うけど、補助魔法、回復魔法なんかは使えるのもあるよ?

 そりゃ、適正があるから、効果はピンキリだけど、使えるのと使えないのとじゃ天地の差だろうからね。

 フェーナは魔法の適正があったの?」

「うぅん、ないない、一般人並みだって言われたよ・・・。」


自分で取得するかどうかは、あんまり気は進まないけど、この世界には魔法もある。

あるにはあるけど、元の世界の物理法則に近い特殊なシステムに縛られてる部分も大きく、

どちらかというと生活の補助になる場合が多くて、戦闘や仕事で魔法を使う人はほとんどいない。

何せ、剣、槍、斧、弓等の物理武器が、元から兵器として強力であるのに、こちらの世界では更に加えて粒子による強化も存在する為、物理攻撃が強すぎるのだ。

それらと比較すると、出力に依存する魔法は相対的に弱いと見られている。

魔獣を代表とするモンスターは、粒子で成長して強力になっている為、物理攻撃と比較して元々威力の低い攻撃魔法のみで、魔獣を単体で討伐できるレベルの出力が出せる人間が少ない、というかほぼいないというのが通説らしい。

実際、12色の戦貴族にも攻撃魔法で名を連ねている派閥は存在しないのは間違いないから、これまで主占領として一翼を担うほどに重要視されてこなかったのは確実だ。

象や虎を倒すのに、手に持った焚き木で倒せるだろうか?

倒せるかもしれないけど、まず一般人には無理だ。

魔法については出力の問題が最も大きく、火は起こせる、水は出せる、氷も作り出せる、電気も発生させられる、だが人一人が発生させられるエネルギーはモンスター討伐に堪え得るものではないらしい。

出力の問題が解決できれば問題ないかもしれないが、研究も聞いたことがない程度には多くはされておらず、とてもではないが主戦力として戦闘に使用するにはまだ時期尚早な技術であるとのことだった。

大魔法と呼ばれる類の物が研究されたこともあるらしいが、戦貴族レベルの人達が自分の身を危険に晒さなくてもよくなりそうな遠距離攻撃の技術は実戦配備されることはなかったようだ。

一般人が使う魔法は本当に生活実用レベルの物で、着火剤の代わりにライターのような火を出したり、飲み物に入れる氷を出したり、回復魔法という名の魔法も擦り傷の血を止めて消毒できる、浅い切り傷ならくっつく、という程度だ。

エネルギーの問題が大きいのか、何もないところに魔法で何かを作り出す、という大規模創造系の魔法は大人数による大魔法でも不可能だったことからほぼ淘汰されたようで、いろんな本を読んでも昔は研究されたが今は存在しない、としか書いていない。

但し、何事にも例外は存在するらしく、めちゃくちゃな威力の魔法を使用可能な才能を持つ人間は稀に生まれるらしく、魔法使いとして戦貴族に高給で雇われたり血族に組み込まれたりしているが、血統によって頻出しやすくはなるそうだが目に見えて遺伝で増えました、という感じでは増えていないそうなので、特殊な先天的なアビリティが主に影響しているのだろうと言われている。

滅茶苦茶チートな才能になるけれど、ちなみに私はそんな才能は持っていない。悲しい。

錬金術やら製剤については、エネルギーの問題というより不思議粒子の影響か少し系統が変わるらしい。


「そもそも、出力の補正に先天的なアビリティとか血統が影響するのって、なんでなんだろう?

 どういう原理でそうなってるんだろうね。」

「うーん、まぁ、こればっかりは理論は存在しないけど、『粒子に意思が存在する』っていう説もあるね。

 そもそも戦闘や創作でレベリングが可能なのは、粒子に意思があって、好んだ者に宿りたがる、という説。

 『粒子の意思に沿う人間』や『粒子の恩恵を受けた血筋の人間』が、粒子に愛されているので粒子がやる気を出して高出力になっている、というようなものだね。

 そもそも魔法系のアビリティ持ってる人はチートなんだよね、便利過ぎるっていうか。

 どっちも生まれつき恵まれた物であって、後天的にはどうしようもないし。

 僕に創造系の魔法の先天的なアビリティがあったら、今頃なんでもできてるよ、きっと。」

「うん、まぁそうだよねぇ。

 空を飛んだりする魔法はあるのに、それを実現できるレベルが今を1としたら最低100必要だとか、めちゃくちゃ遠くて悲しいことになりそうだし。」

「羽のある飛行型の亜人種族に転生していたら生まれつき空は飛べたかもね。

 亜人種族や竜が空を飛べるのは、明らかに粒子の恩恵を受けているだろうけど、反重力やホバー状態なら直下はヘリコプターとかの比じゃない、尋常じゃない風が吹いててもおかしくないけど、そういうのが確認されたことはないらしいからね。

 まぁ、竜は空を飛んで火を吐く、とかも聞くから、火も吐きたいなら竜も良かったかもしれないよ。」

「竜に生まれたら、戦貴族の討伐部隊に狩られて鱗とか爪とか剥がれるんでしょ、嫌だよ・・・。」

「魔法の原理は不明だけど、粒子エネルギーの出力の問題なら、アーティファクトでブーストして変換効率も改善すれば、大魔法は無理でも戦闘用魔法としては使い物になる可能性もあるけどね。

 作ったことはないし、そんなに理論だった魔法理論を構築してる人にはあったことないけど。

 制御が複雑すぎるんだよね、制御チップとかでも作らない限り、人間が携帯できる装置にはならないと思うよ。」

「レアアーティファクトに分類されてる物の粒子結晶の制御機能自体が魔法みたいな感じだけど、無理なの?」

「レアアーティファクト分類のアーティファクトは完全に粒子のエネルギーに依存して機械的に動作を制御しているから、同じ様式に則って魔法を稼働させるのは無理なんじゃないかな。

 魔法的な処理はまた別に、魔法の原理に則って制御できるように構成すれば、基本的には同じように粒子を用いたシステム的な魔法もブーストできるんじゃないかな、とは思うけどね。

 正直魔法の原理はまだ勉強できていないんだ。

 まだ勉強はできていないけど、魔法って本来必要とされる制御動作が複雑すぎると思うんだよね。

 粒子自体がある程度自発的に制御してくれていて、術者は粒子に指示だけして実際は粒子が魔法を制御していると考えないと、説明がつかないような気もするんだ。

 理論立てて理解できてない人でも独力で魔法使えてる人もいるし、直感的に全て制御できるようなとんでもない特殊な能力を持った人達が、そんなにたくさんいるわけもないだろうし、どうやって細かい制御してるんだよ、って話だからね。」

「じゃあその辺りはこれから勉強してもらうしかないかな・・・。」

「勿論、それはやることになるだろうけどね。

 で・・・まぁそれに関連してるかどうかはこれからの話になるんだけど、ベルトの今後の開発計画だ。」

「ベルト・・・はベルトだけど、なんか名前つけないの?

 ナインから聞いた話やサキカワさんから貸してもらったカタログの本見ても、こういうの作ったの、ナインが初めてなんだよね?

 最初に作った人が名前付けちゃっていいんじゃないかな。」

「うーん、それはまぁいいかなぁ・・・、ベルトで。

 秘匿性高い方がいいと思うよ、多分だけどね。

 何せ、これは物凄い計画になる予定だから、だ!!!」


ここからナインは、物凄いテンションで話し始めた。

常時身体に身に着けるタイプの物で身体機能を補助する装備品を作る場合、イヤリングやネックレス等は簡易補助品、指輪やベルトは固定装備品に該当するらしく、アーティファクトとしての機能を持たせる場合、市販品として自由度を持たせていないものでなければ、基本的にワンオフに近い自由な物になるらしい。

今までの固定装備品は指輪が多く、大半は毒があるかないか判別する等、簡易な機能を持たせたものが多かったそうだ。

戦貴族の方々は10本の指全部に戦闘補助系の指輪を付けていることが多いが、特殊なレアアーティファクトでもない限り、剣を振る時に筋肉の揺れを抑えてくれる、だとか、弓を射るときに指の震えを少しマシにしてくれる、といった筋肉に少し補正を入れることで技術+αを行っているらしい。

ただ、ベルトや額当てのような固定装備となると、防御系の物が多く、衝撃を受けた際に衝撃をほんの少し軽減する、内臓に衝撃が加わった際に吐き気等を抑える、眼球や鼓膜の破裂を少し保護する、といった機能の物だったそうだ。


「それだけでも十分凄くない?

 それ、プロの人がみんな欲しがるような補助機能のような気がするんだけど。」

「あくまで、既に技術の極みにある達人が足りないと思った部分を補強する為に依頼に来られて、提供する物が多いからね。

 ただ、君と僕で開発を進めているこのベルトはそんなものとはレベルが違うよ。

 何せ、出力もそうだけど貯め込めるエネルギーが違う。」

「うん、まぁ、私には良く分からないけど・・・分からない人間から見ても、ナインは物凄い物を作ったんだな、ってのは分かるよ。」

「これはあくまで例えだよ、例えだけどね。」

「うん。」

「フェーナ、男のロマンは、理解してもらえるのかな・・・?」

「ナイン、それはどういうものかにもよるよ・・・。」

「変身・・・してみたくないかい?」

「変・・・身・・・!!」


野太い声で脳内再生されたけれども、ナインからの提案はとってもロマンのある話だった。

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