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灰色の御用聞き  作者: 秋
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8話 二人目の技術者

少し時間は遡る。

『トーネルト事件』が起こっている頃、私フミフェナ・ペペントリアはサキカワ工房に向かって歩いているところだった。

思ったよりもレベルアップの余波の疲労も大きく、徒歩での移動がゆっくりになってしまっていた。

昼過ぎに出発して、誘拐されて、賊撃退して、事情聴取や現場検証も手伝って、トーネルト事件の段取りをして、歩いて、という忙しい半日だったので、体力的にとんでもなく疲れたのもあるけど。

サキカワ工房についたのは午後10時にも差し掛かろうかという時間だったので、正直お腹がすいているのと、正直眠いのも疲労を手伝っている気がする。

何か食べようか、と三人で食堂に移動し、私と叔母は椅子で一段落ついた。

ナインは厨房で食事を作る為の食材を選んでくれているようだ。


「はー、疲れたぁ・・・。」

「そりゃ、今日は色々あったからね・・・お疲れ様。」

「・・・賊の方は弱かったから、全然疲れてなかったよ、ナイン。

 むしろ”それ以外のこと”のほうが疲れた。

 でも今日までにレベル上げられていたのも、賊の撃退成功したのも、ベルトのおかげだよ。

 ナイン、本当にありがとう!」

「うん、それはどうも・・・。

 しかし・・・フェーナはメンタルつっよいね・・・。

 相手は賊で、正当防衛だとは言え、誘拐されかけた上に人を殺すことになったのに・・・。」

「人を殺したら法に触れるっていうならしなかったけどね、こっちの世界だと法に触れるどころか、正当防衛で返り討ちを推奨してるみたいだったから・・・。

 バラバラにして腑分けしろ、まで言われたらちょっと私にはグロくてできないけど、やらなきゃいけないなら私にはできるよ。

 それに、レベル的には無謀な戦いだったわけじゃないよ、レベルももう36になったんだ!

 賊の頭領は40超えてそうだったけど、手下の賊達は20くらいだったから、全然危なくはなかったよ。」

「36!?え、もう36・・・!?

 フェーナ、この間までレベル10とかそれくらいじゃなかった・・・!?

 えぇ、早すぎない・・・?どうなってるの・・・?」

「ふふ、それはまた二人きりの時に話すよ、あんまり大きい声では言えないしね。」

「ヴァーナント殿、私はあちらの部屋に下がりますので、フェーナのこと、よろしくお願い致します。

 何か大事なお話があるみたいですから、お邪魔虫は去りますね。」

「あ、レアナ殿、変な気遣いは無用に・・・ほんとにそういう仲ではありませんから・・・フェーナはまだ3歳なんですよ・・・!?」

「別に、そういう仲になるのは成人(こちらの世界では15歳)になってからで、フェーナをもらうつもりがあるのでしたら、私の兄と交渉して決めてもらえればいいと思いますよ。」

「いえ、ほんとに、まだそういう話じゃないですから・・・。」

「あはははは、ナイン顔真っ赤!」

「はは、あー、お腹空いたなぁ、何か食べませんか?

 厨房に行けば何かしらあると思いますし、僕が用意しますよ!」

「露骨に話を逸らしましたけど・・・まぁ確かにお腹空きましたね、フェーナもお腹空いたでしょう、ヴァーナント殿の作った食事、いただくとしましょうか。」

「はい、叔母様。よろしく、ナイン。」

「あぁ、任せて、僕の作るごはんはここの工房じゃ一番美味しいんだぞ。」


ナインの料理はほんとに美味しくて、しかもほぼ待ち時間もなく、素早く一通りコースのような物を拵えてくれた。

日付がもう変わろうかという時間なのに、ほぼフルコース食べてしまった。

器用な人は料理を作らせても上手いらしい・・・

食べている間に、他のサキカワ工房の職人さん達も数人通りがかり、彼らからもナインに食事のリクエストがあった。

どうやらサキカワ工房の中では、ナインの料理の腕は既知のことらしく、厨房で遭遇した際は頼むのが定例となっているそうだ。

ただ、日夜を問わない仕事をする職人さんが多く、ごはんを一緒に食べる、という習慣もないらしいので、5人以上の職人が一席に会するというのもレアなことらしい。

ナインは大忙しで可哀想ではあったが、職人さん達にそういった事を聞きながら、叔母様とわいわい話しながら一緒にいただいた。

しかし、職人さんの中でも中心人物らしき人は、私を待ち受けていたような感じだった。

ひょっとすると、私が来ることを知っていて、待っていたのかもしれない。

食事も早々に終わらせ、私の正面に席を移して座った。


「やぁ、君がフミフェナさんか。

 私はローマン・ベースオーグ、ここサキカワ工房でサキカワ所長の下、技術チーフを仰せつかっている者だ。

 君のことはナインから話はよく聞いているよ。

 君がナインの試供装備を受け取ったと聞いているが・・・?」

「お初にお目にかかります、ベースオーグさん。

 おっしゃる通りです。

 御覧の通り、ナインから提供していただいたベルトを常時装備して、鍛錬しています。

 こう見えても私、皆さんには及ばなくても、そこそこ強いのですよ!」


ピラ、と服をめくって隠れていたベルトを見せる。

おぉ、と他の職人さん達もベルトを見ながら、ここはどうなっているのだ?とか、流石ナインだ、造形もいい、と言ったような論評が口々から出ていた。


「ナインの話では、そのベルトを開発するにあたって、君の助言が大きく功を奏したとのことだったが、真実か?」

「えぇ、ほんとですよ、ローマンさん。

 彼女の助言無くして、このベルトの技術はここまで到達できなかった。」

「いえ、本当にこれは謙遜ではなく、このベルトに使われているのは全てナインの技術ですよ。

 私の言葉がほんの少しでも助けになったのなら幸いですが、功があったかどうかは・・・。」

「それこそ謙遜というものだよ、フェーナ。

 この工房にいるのは皆、物を作るということにかけてはスペシャリストしかいないんだ。

 逆に、そのスペシャリストが、君の助言がなければ完成させられなかった、と言ったのだから、それは間違いじゃないんだよ。

 つまり、僕は君に本来アドバイザー料を払わなければいけないってことでもあるけどね。

 まぁ、それくらいめちゃくちゃ感謝してるってことさ。」

「あ、ありがとう・・・。」

「はは、微笑ましい光景だな。

 ナインとの要件が落ち着いたら、少し相談に乗ってくれないか、今悩んでいることがあってな。

 可能なら、外部の人間でありナインにひらめきを与えた女神たる君の助言を聞いてみたい。

 だめだろうか?」

「め、女神だなんて恐れ多いことです・・・。

 私は技術者ではない素人ですので、お力になれるか分かりませんが、それでもよければ・・・。」

「分かった、待っている。場所はナインに聞いてくれ、大体工房にいるから、いつでもいい。」

「分かりました、そうですね・・・。

 明日はベルトの調整等で試験等もしていると思いますし、今日これから、ごはんを食べ終わった後、お伺いしてもよろしいでしょうか?

 深夜にはなりますから、もし構わなければ、ですが・・・。」

「構わない、待っているよ。

 私の工房は24時間営業だ、明るいし深夜でも全く影響はない、大歓迎さ。」



ローマン・ベースオーグさんは、ナインよりもかなり年上で、30~35歳の男性だ。

髭は気が付いたときに剃っている程度かな、という程度に無精髭ともなんとも言えない程度に髭を生やしていて、髪も切るのが面倒だからか、肩甲骨のあたりまである髪を後ろで束ねている。

遅すぎる夕食後、叔母には休んでいてほしいと伝え、一人でローマンさんの研究室に訪問した。


「ようこそ、フミフェナさん。こちらだ。」

「お招きいただき光栄です、お邪魔致します。」


ローマンさんの研究室は、サキカワ工房の中でも特段大きく、小学校の体育館くらいの大きさがあった。

研究室の中はめちゃくちゃ綺麗に整理整頓されていて、見た目は完全に前世の大手電機メーカーの工場や研究室と言っても通りそうな機械が並んでいる。

照明もよくあるランタン風のアーティファクトではなく、オフィスや研究室にありがちな富士型の照明器具であることも、研究室っぽさを醸し出しているのかもしれない。

ないのは、そう、パソコン、コンピューターくらいだ。

・・・?

動力である電気や燃料も蒸気機関もない、制御装置であるパソコンやコンピューターもないのに、機械が動いている・・・!?


「驚いたかね?

 これが私の研究なのだ。」

「これは・・・どうやって動いているのかもそうですが、どうやって制御しているのですか・・・?」

「規模を大きくして多機能粒子結晶を多量に仕込んだ一つのレアアーティファクトなのだよ、これは。

 決まった作業だけをする機械なら、何も複雑な制御を設定するわけじゃない、動作の決まっているカラクリ仕掛けのようなものだよ。

 このサキカワ工房で使用されている粒子結晶の素体の大半をこれで生産しているんだ。

 元々は私自身の技術検証の意味も兼ねて設計して製作したんだけど、試験製作にしても、実際に使える物の方がいいだろう?

 人間の手で一つ一つ粒子結晶の素体を製作していたのでは大きさや精度が統一できなくてね、素体だけはこいつで賄っているのさ。

 それに、ここの工房だと飛ぶように売れる、売り先に困ることはないからね。」

「これが・・・一つのレアアーティファクト・・・!?

 すごい・・・。」


これだけの大きさのカラクリ機械を設計して作った頭脳も勿論ぶっ飛んでいるが、これだけ大きいレアアーティファクトを稼働させるためにどれだけの粒子を注ぎ込んでいるのかなんて想像もつかない、まさに全ての規模がぶっ飛んでいた。

そして、自らの所属する工房内で大量に使用されている素体販売でお金を稼いでいる商売もエグイマッチポンプである。

しかし、これが動くのなら・・・色々な作業の工業化が可能・・・なんだろうか。


「言っておくが、これは、城が買えるレベルの金がかかってる上に、私からリンクしている粒子結晶を私が操作して初めて稼働まで持ってこれた物だ、他の人間が工業機械化して使用するのは現実的に無理だぞ。」

「お見通しでしたか・・・。

 それで、ローマンさん、お悩みというのは・・・。」

「こちらに来てくれ、今、方針を模索している案件でね。」


おかしい。

いや、おかしいという表現はおかしいかもしれないが、おかしかった。

語彙が喪失するレベルでおかしい。

案内された先で目の前にあったのは、NC旋盤らしき旋盤機械とワイヤー放電加工機らしき物だった。

少し離れた所には万能製材機もあるし、さらに遠い所には反射炉のような物も見える。

ナインの技術力も相当だったけど、ローマンさんは大きい加工機械の類の製作を得意としているのかもしれない。


「あの・・・これ、NC旋盤・・・ですか・・・?」

「おぉ、よく知っているね。

 うちの工房でフライス加工や旋盤加工で成形するような金属パーツを要する場合は、私がこれで加工しているんだよ。

 さしずめ、ここはサキカワ工房御用達のベースオーグ精工所いうところだ。

 機械類についてよくご存じのようだが、前世で工業系の仕事をしておられたのかな、君は。」

「はい、それはそうなのですが・・・。

 コンピューターなしでどうやって動かすのですか・・・?

 まさか、これらも全てアーティファクトなのですか・・・?」

「はは、その通りだよ。

 機械的な処理について、コンピューターで全てフルオートで最初から最後まで加工できるほどの複雑な処理はできないが、一定の出力で一定の成果を生み出すことが可能なら、ある程度人間が操作することで加工作業は可能だ、操作するオペレーターが機械ではないから製作物はある程度誤差は出るけどね。

 全自動のコンピューター制御ではないから、まぁ極端に言えば半自動のマニュピレーターのようなものだよ。」

「すごい・・・。

 てっきり、粒子制御での精密加工作業や機械作業は不可能なのかと思っていました・・・。」

「まぁ、このクラスとスキルを修めていて、前世で工作機械の知識があった人間でオペレーターも出来る人間でもないとやらないとは思うがね。

 で、今、手をつけているのはこちらなんだが。」

「・・・ワイヤー放電加工ですか・・・?」

「ザッツライト!!!

 本当に君は良く知っている。

 加工機械自体は出来上がっているのだがね。

 最近まで、出力の大きな電気を扱うとなると雷系の魔法を使うしかなくて全く安定しなかったんだが、2か月ほど前からナインの技術協力で、電気を安定的に高出力で出力できるようになった。

 純水も加工油もフィルターもワイヤーもその他諸々も、全て私が別途生産していて、今の所は消耗品の生産も加工も支障は出てない。

 ただ、一つ問題があってね・・・。」

「それ、もう完全にコンピューターがないこと以外、ワイヤー放電加工機として完成しているような気がするのですが・・・何が問題なのですか・・・?」

「『大量の粒子が既に介在している金属』の加工について、だ。

 まぁ切れるのは切れるんだが切れ味が極端に悪かったりするんだ。

 本来、非接触切断だから切れ味やら金属の硬さなんてのは影響しないはずなんだが、こちらの世界の原理の影響・・・主には粒子の影響だと思うのだが、それの所為で作業が全くと言っていいほど精度が出なくてね、作業が進んでいないのだ。

 それに、抵抗が強くなった時に大出力にし過ぎるとワイヤーが千切れるので、またつなぎ直して、という作業も何度もやっていると心が折れそうでね。

 ということで、今、製作しようとしている物の素材のパーツカットができなくて困っている。

 その素材の強度はそのままで、現況よりスムーズに、本来ワイヤーで精密にカットできるような手法が必要なんだ。

 何かいい案はないかね?」

「そもそも、出力の調整がきいて、かつ電力も確保できるのでしたら、ガスレーザー加工も検討して良いのではないでしょうか?」

「レーザー加工か、まぁそれも良いかもしれないが、そちらはまだ手付かずだ、これから開発することになる。

 それに、レーザー加工で加工するのも、おそらくワイヤーと同じで抵抗が強すぎると思われる。

 もし完成したとしても、精密な金属部品となるので、ワイヤーの方が精度はよくなると私は判断しているんだ。」

「ワイヤー自体を強化する・・・なんてのは既に試しておられますよね?

 となると・・・やはり硬さを無視して『スパーク熱で非接触で切断する』という利点を活かすなら、加工する金属の電気抵抗を下げるか、耐熱温度を下げるしかないと思いますが・・・。

 そのパーツは、必ずその強度を保ったまま加工しなくてはいけないのですか?」

「そうだな・・・できればそうしたいところだ。」

「ナインの粒子除去技術で強度を下げてから、加工した上で、その後に粒子付与をする、というのはどうでしょうか?」

「粒子除去と粒子付与だと・・・?

 そんなことが可能なのか?」

「技術的なことはナインと相談していただかなくてはいけませんが、今ならこのベルトと私のスキルで似たようなことができると思います。

 加工に使う金属の不要な切れ端等はありませんか?」

「あるぞ。

 できるのか?」

「付与はどうか分かりませんが・・・除去だけなら私でも近いことはできるかと思います。」


ローマンさんから手渡された金属の塊には、かなり濃密な無方向性の粒子が蓄積されていた。

何に加工する金属なのか分からないけれど、『鑑定』で調べた結果、銀が主体の銀合金。

銀、鉄、鉛錫、銅、炭素、その他細かい物数種類。

大半が銀のようだけど、鑑定を使っても比率がほとんど表示できていないので、かなり特殊な金属のようだった。

ベルトの強力吸引モードをONにして触れてみると、ベルトの数値がモリモリ上昇する、問題なく吸引できたようだ。

4桁近い数値が吸引され、停止する。

10㎏くらいのインゴッドで、4桁の粒子が蓄積されていた、というのはとんでもない量だ。

家庭用冷蔵庫に業務用冷蔵庫の容量を詰め込んでいるようなもの。


「これで、どうでしょうか。」

「ふむ・・・むぅ、一体どうやったんだ?

 あれだけ大量に宿っていた粒子がほとんど見当たらん。

 これならかなり柔らかい銀合金、だが金属と同じような加工が可能だ。

 この”ホワイトベル”がこんなにも粒子を含まない状態に分離できるとは初耳だ。」

「そうなのですか?

 初めて見る金属なので詳細は存じませんが、粒子を含まない状態では出荷されていないのですか?」

「うむ、このホワイトベルは、とある部族にだけ製法の伝わっている金属なのだ。

 インゴッドで出荷された段階で君に渡した状態なので、かなり硬いんだよ、主に粒子構造が原因でね。

 おそらくスキルによる冶金の影響で粒子を大量に含むようになるんだと思うんだが、普通に削って加工するだけでも難儀するんだよ。

 ・・・しかし、今行った作業は、粒子除去と言っていたが、再度戻すことは可能なのか?」

「いえ、やったことがないので・・・。戻らなかったら申し訳ありません。

 ただ、除去ができるものに付与ができないというのも、原理上考えにくいように思えますが・・・。」

「確かにそうだな。

 粒子結晶と同様に方向性を定めながら付与しなおせるなら、レアアーティファクトと同様に規則性を持たせて出力できるのではないだろうか?

 ホワイトベルほどの粒子相性のいい金属であれば、刻印技術や粒子の付与方法次第で様々な機能が付与できるのではないか、と思うのだが、君はどう思う?」

「それがどういった技術かは私は存じませんが、ローマンさんが出来るかもしれない、と思われたのであれば、ローマンさんにならできるかもしれません。」


俗に言う、装備エンチャントの部類になるのかもしれない。

アーティファクト自体は機械のようなものなので、あくまでステータスを補助する物であったり、戦闘を補助するブースターのような物であるけれど、粒子結晶もガワの部分も含めて精密機械に近い物があり、それそのものでモンスター等と戦うほどの強度は高くないため、アーティファクトを武具として使用することはなかった。

だが、ホワイトベルという金属は粒子付与状態では加工が難しいほどに硬いのだという。

であるならば、ホワイトベルで製造された武具は、粒子を一旦取り除いて、粒子結晶に出力方法を刻印する技術?で粒子を付与しなおせば、ホワイトベル製の武具が端的にアーティファクトのような物になるのではないだろうか・・・?


「はは、はははははは、なんだ、なんだこれは・・・。

 フミフェナ嬢、君は一体何なのだ・・・!!

 何故、こんなにも、私の、夢にまで見た、望む結果を、与えてくれるのだ!?」

「ローマンさんは、このホワイトベルという金属を手に入れたどこかの段階で、これ自体を粒子結晶のようなものとみなして武具を製造する、という構想があったのではないですか?

 この金属自体を粒子結晶の代わりにすれば、武具として非常に頑丈なアーティファクトになる。

 金属自体に機能付与・・・つまりエンチャントできるのであれば、例えば鎧等にすれば今までとは一線を画す装備品ができあがるのでは?」

「そうだ、私が目指したのはそれだ。

 とある伝手から手に入れたホワイトベルという金属を調べたときから、その構想はあったのだ。

 だが、諦めていた。

 私には、これだけ粒子が濃密な金属を、まともなアーティファクトとして機能するようにした武具に加工するだけの能力がなかった。

 それならばと、アーティファクトの部品として使用し、アーティファクトそのものを武器にできないかと考えていたのだが・・・だが・・・なんだ・・・?

 これではできてしまうではないか・・・加工が・・・エンチャントが出来てしまうではないか・・・。

 黒の戦貴族『ヌアダ家』の持つ、あの黒鎧のような最強の防具が、灰の戦貴族『アキナギ家』の持つ、あの灰弓のような最強の武器が、そんな伝説級の武具が私の手で作れるというのか!?」

「あの、いえ、見たことがないので、ちょっとそれがどのようなものかは分かりませんが・・・。

 ひょっとすると、こちらの世界にしかない金属でホワイトベルと同様の物・・・例えばもっと粒子結合力の強い金属等もあるのかもしれませんし、付与技師のような方が戦貴族に実はすでにいて囲い込まれているのかもしれません。

 いくら伝説級の武具だと言っても、作った方はいらっしゃるのでしょうし、もし今はいなくて技術も残っていないとしても、作った方自体は存在したと思います。」

「なるほど、確かにそうかもしれん。

 だがしかし、金属素体としては私は現状、ホワイトベル以上の金属の知識は持っていないのだ。

 ホワイトベル以外に何かあるのか、君に何か心当たりはないか?」

「申し訳ないのですが、私もこちらの世界で生を受けてまだ3年7か月程度しか経っておりませんので、おそらく素体の知識ではローマンさんに遠く及ばないかと思います。

 私も自分の興味のあることは生後すぐからずっと調べているのですが、流石にこの世界特有の金属、しかもローマンさんがご存じないようなレアな金属については、一般の書物を読んだり商会の取引のある物を見ても聞いたことがないですね。

 ホワイトベル、という金属も、今初めて目にしましたし・・・。」

「は、はっはっは、いや、すまん、君なら知っているかもしれないと思っただけだ、確かにこちらの世界の知識というだけの意味であれば、3年7か月の君と35年生きている私では、いささか私の方に分があるか。」

「いささかではありませんよ、10倍ですよ10倍!」


知っていたら、こんな便利そうな金属、ナインに素材で提案したのに。

・・・いや、こちらの世界に出回っている金属をナインが知らないなんてことがあるんだろうか?

かなりレアな金属で、めちゃくちゃ高価な上に稀少で買おうと思っても売っていないパターン。

もしくは、ローマンさんが自分でインゴッドを作成しているパターン。

どちらかは分からないけど、前者だとしたら、私が粒子を抜いてしまって価値が落ちて使い物にならなくなってしまっていたら・・・弁償できるんだろうか・・・?

ゴクリ・・・。


「はっはっは、いやすまんすまん。

 はぁ、しかし、困ったな・・・。」

「ど、どうお困りになられたのですか・・・?

 もしや、まずかったでしょうか。」

「まずいとも。

 研究しなければならないことが増えすぎてしまった。

 私は見ての通り、こちらの世界で再現できる精密機械工作機の研究・設計・作成を日課としていたんだが、男の浪漫をチラつかされ、研究者として引き下がれるだろうか?

 否、引き下がれん。

 絶対他の研究をしていてもどう足掻いてもそっちの研究をやりたくなってしまう。

 どうしたらいい、私は一人しかいないというのに・・・。

 君も協力してくれないか、君がいれば研究は大幅に進むかもしれん!頼む!

 基本研究や設計は私が全部やる、アドバイスをもらえるだけでいいんだ!」

「え、えぇ、そうですね・・・できればそうしたいのも山々なのですが・・・。

 お伝えしておりませんでしたが、来週からヒノワ様の領地に移ることになっておりまして。」

「なんだと!?

 それは困る、私の研究に君も協力してくれ!

 金なら持っているんだ、給料は、いや報酬は払える限りいくらでも払うぞ!!

 君も懇意にしているナインもきっとそう思っているだろう、どうだろうか。

 ナインと私の為にサキカワ工房にしばらく逗留してから、ヒノワ様の領地に移るということにはならないだろうか。」

「あ、いえ、非常に興味深いお話なのですが、私も自分の浪漫を追いかける為に行くので、流石にお断り致しますが・・・。

 お話の続きですが、よろしいでしょうか?

 ヒノワ様の領地で、ヒノワ様を始めとする戦貴族の方にお会いする機会が出来ると思うのです。

 常時フル装備でいらっしゃることはないと思いますが、装備品や素体、金属のお話を聞くくらいはできるかもしれません。

 研究はできる限りご協力させていただきますが、私はレベリングをする為に、その他の業務を今こなしているのです。

 レベリングする際には、望める限り最高の状態に更新し、限界まで追求した上で臨みたいと考えているのです。

 勿論、ローマンさんと良い装備を開発できて、それがお互いにとってWin-Winになるのは理解しておりますが、申し訳ないのですが、そちらに私が掛かりきりになることができません。

 私のレベリングに役立つのなら勿論活用させていただきますが、それは限界までレベリングをするという私の願望を叶える為の手段であって、装備品を作ることそれそのものが目的なのではない、ということを理解していただきたいのです。」

「つまりは、どういうことだ?」

「ヒノワ様の領地から、思いついた事や見聞きした事は随時ご連絡致しますので、それで良しとしていただけませんでしょうか。

 ナインの『通信機』はローマンさんはお持ちですか?」

「いや、持ってはいない。

 前世で言う携帯電話のようなものだな。

 確か、アンテナ局もなくかなりの距離の通信ができるとかなんとか。」

「はい、ナインにお願いして、1台購入されてはどうでしょうか。

 私も1台ナインからお預かりしていますので、それで連絡がつきます。

 もし電話で打合せができるのであればそれで良いでしょうし、直接こちらで打ち合わせた方が良ければ、日程調整を行うことも可能かと思います。

 どうでしょうか?」

「・・・君の意志がどうしても変わらないのであれば、致し方ないか。

 ナインから『通信機』の提供が受けられれば、私もそれで妥協しよう。

 しかし残念だ、とても残念だ。

 ヒノワ様も酷な方だ、君のような、我々技術者が必要とするアドバイザーたる人材を自分の手元に手繰り寄せるとは・・・。

 こちらに帰ってくることはないのか?」

「まだ詳しいお話は聞いていないのです、終生のお仕えになるのか、研修のような短期のものなのかも。

 ですが、一度も領地を離れられない、ということはないと思います。

 ベルトの調整や新しくナインやローマンさんとアーティファクトの研究もしたいですし、可能な限りヒノワ様にお願いしてみるようにします。」

「是非、そうしてくれ。

 ・・・ついては、君の門出に、贈り物をさせてくれないかね?」

「私の門出の、ですか・・・?」

「ナインは、君と共同開発でそのベルトを渡した、そしてヒノワ様の領地に行く前に完成品を納品する。

 それである程度、報酬を払ったという義理は果たしたことになるだろう。

 だが、私は君に何も渡していない。

 今後の君との付き合いの為にも、君に正当な対価としての報酬を渡したいのだ。」

「とても有難いお話ですが・・・。」

「ナインも言っていたが、プロフェッショナルが、正当な報酬を授受し合うのは、存在意義として必須なことだ。

 受け取った後どうするかは受け取った者の勝手だ。

 それに、知的財産の供与については、ただの技術供与よりも大きな報酬を与えるべきであるから、受け取って貰わなければ尚更、私の気が済まん。

 受け取るのは受け取れ、その後は好きにしろ。ということだ。

 理解したかね?」

「・・・分かりました、ではお言葉に甘えまして、いただくこととします。」


2人で満面の笑みで、がっしりと握手した。

力の入りようがすごい、・・・こちらの手は小さいので加減してもらえると有難かったが。


その後、工房内を開陳しよう、という提案があり、案内を受けながら、ローマンさんの技術者としての矜持の成果を見学させてもらった。

ローマンさんから、”含むことのない素直な気持ちとして、近代的な機材の作成も、伝説の武具のようなファンタジーのある物の作成も、どちらも自分の夢として諦めることはない”と幾度も語られた。

工房に立ち入った時にパッと見で確認できたものは有名どころばかりだったけど、奥の方には本当にマニアックな類の機械も多数あり、かと思えば試作品の展示エリアには武具とアーティファクトを合体させようとして失敗した第1号の武具等の展示もあり、一時は造船にまで手を出そうとして売り先が造れないオーバースペックなド赤字の船を一隻所有していることなども話して貰えるなど、様々なことをお聞きした。

話してみて感じたのは、職人さん達は前世風に言うなら昔ながらの昭和感のある職人さんであることが多いけど、ナインとローマンさんはどちらかというと研究者の側面が強く、平成感というか、そのような感覚に近いように感じた。

ナインもローマンさんも職人としてのセンスも矜持も尋常ではなく優秀だということは、重々理解させられたので、もちろん職人としても超優秀だけど。

加えて、そうだな、ローマンさんはナインが更に20年職人として研究者として熟成された姿のようだ、と表現するのが正しいか。

技術も知識も、そして手持ちの機械類も全て世界に冠たるサキカワ工房でも最高峰だろう。

サキカワ工房所属の職人達がアーティファクトの造形デザインや基材デザインをローマンさんの所に持ち込んで依頼するのも理解できる話だった。

というかこれだけの機材を全て自分で作成して、自分でオペレートして加工できるし、自分の研究もして、素材集めにも貪欲で、レベリングにも造詣が深いようで、自分調べでレベルは70に達している。

ローマンさんが化け物過ぎる・・・。


ローマンさんが約束してくれた報酬は『エンチャントに成功したホワイトベル製の一作目』を、完成次第送る、とのことだった。

ホワイトベルはやはり非常に希少な金属だったらしく、今いる領地から首都を中心として点対称の位置くらいにある赤色の戦貴族様の領地の鍛冶工房から出来上がり次第少しずつ供出されていて、各戦貴族のお抱え鍛冶屋以外にはサキカワ工房を含めても5件くらいしか出荷していないらしい。

それくらい手に入らない物であり、販売自体されていない(=買うとなるとありえないくらい高額)とのことだった。

戦貴族お抱えの鍛冶屋がどうしているかは情報があまり降りてこないとのことだけど、他の工房ではその強度を活かして、武具として素地のまま頑張って加工していて造形して販売していて、購入するのも大半は戦貴族であるらしい。

そりゃ素体自体が希少だからそれだけでもめちゃくちゃ高額で、更にそれを頑張って溶かしたり叩いたりして成形して武具にする手間もかかるのだから、買うお金をそこらのヒトが用意できないのだ。

別の情報として、各色の戦貴族の序列1位の方は、古くから伝わっていて王家に所有権のある”神器級武具”と呼ばれる、特殊効果のついている武具を使用することを許されているそうで、各色の戦貴族はそれを旗印として戦闘エリートの廃人軍団である一族がまとまるレベルの強力さなのだそうだ。

逆に言うと、それくらい、超高グレードの装備品は生産数が少ない、もしくは現在は生産できない、ということの証左でもある。

ローマンさんが技術者として、我こそがその神器級の武具の製作者である、と謳うことを夢見るのは致し方ないことではあると思う。


「まぁ数が少ないとは言え、伝説級の武具が降って湧いたりするわけがないからな。

 魔物が持っていようが、戦貴族が持っていようが、製作した鍛冶屋は必ずいるはずだ。

 ならば、我々技術者に作れない道理はないだろう、そう思わないか、フミフェナ君。

 楽しみにしていたまえ、伝説級に匹敵する武具を持って君に届けることを約束する。」

「えぇ、では、お言葉に甘えまして、首を長くしてお待ちしております。」

「そうしたまえ。

 君はレベリングが趣味であり人生である、と定めたのだろう。

 であるならば、君ほどの者なら戦貴族にも匹敵するレベルに達することも考えられる。

 戦貴族に匹敵する強者の装備した、あの強力な装備は何だ?誰が作った物だ?

 サキカワ工房のローマン・ベースオーグとナイン・ヴァーナント2人の技師の作った物だ。

 なるほど、彼の技師達ならば作れるだろう。

 遂に彼らは伝説の神器級武具の製作に成功したのか、流石はローマン・ベースオーグとナイン・ヴァーナントだ!

 世界の人々がそう称賛すること間違いなしだ。

 超一流の者は武具を選ばない、どんな武具でも一流の人間を圧倒できる者に超一流の武具が必要だろうか?

 結論は、必要だ。

 超一流の武芸者の使用する武具は、超一流の武具でなければならない。

 まず、使用に耐えられない。

 そして、向上心の妨げとなってしまう。」

「確かに、それはそうかもしれません。

 まだ装備しておりませんが、ナインの話では、私が能力全開状態で戦闘すると武具が耐えられない可能性が高いと言っていましたし、これから私が成長してレベルも上がったら、更に耐久性を求めることになるのだと思いますし・・・。」

「それは当然の帰結だ。

 象並みの膂力で、全力でただの鉄の剣を振ったら、余程剣術に長けた人間でもなければ鉄の剣など一撃でグチャグチャだよ、刃毀れなどという可愛い結末にはならないとも。

 そういう訳だから、武具、とりわけ武器については、君に報酬として贈る物としてはこれ以上ないと考える。

 さて、希望の性能、希望の形状、希望の武具種はあるかね?

 君の戦闘スタイル等も教えてもらえれば、できる限り、希望に沿う物を設計する。

 ただ、銃はおススメしない、おそらく異世界転生者の技術者も幾人か銃を作ったはずだが、今この時まで使用した人間の話を聞いた事がないのには理由があるのだろう。

 シンプルに火力としては不十分、というだけの可能性もあるがね。

 君の体躯だと一撃で相手を裁断・破砕するほどの重量の物や長物の刃物も扱い辛いかもしれんから、短刀、ナイフ、カタール、スティレット、辺りがいいかもしれん。」

「うーん、そうですね・・・。

 こちらの世界だと近接武器が強すぎて遠距離武器は弓くらいしか使われていない、というのは聞きました。

 銃や石弓がダメで弓がいいという理由も良く分かりませんが、何か法則があるのですよね?

 あまり大きな武器はこの身体では満足に扱えませんから、30㎝くらいの刃渡りの短い脇差のような短刀はどうでしょうか。

 性能・・・というか、欲しい能力で言うと、刃の部分は切れ味よりも毒物を仕込むことができるような、粘度の低い液体のノリのいい物が有難いです。」

「毒物か。なるほど、確かに低レベルの内はそういった物を活用した方がレベリングもしやすいか。

 ただ、覚えておくと良いが、小さい魔物は刃に塗った少量の毒でも効くとは思うが、毒に耐性のあるモノやそもそも巨体で毒が足らぬモノも多くいる、又、ただただ数が多い場面も多々ある。

 毒が効かない、毒を塗り直す時間がとれない、毒が足りなくなる、等の問題の対策は必要だぞ。」

「はい、それは勿論、対策致します。

 あくまで、これは、副用途として使用する予定ですので、毒は自分よりも強い存在が出た時に相手を弱らせる、モンスターを捕縛もしくは拘束する時に使う、などが出来ればと思うんです。」

「ほう?

 いや、我が協力者を深く詮索するものではないな。いいだろう、そういうモノを作るとしよう。

 防具は・・・いや失敬、そのベルトがあれば要らぬお世話か。」

「ベルトは、明日、ナインから最終納品の正規リリース版バージョン1.0を受け取って、ナインの工房で最終調整を行う予定です。

 ですが、防御面は2次展開として必要かと思っているので、順次揃えるつもりにはしております。」

「うむ、それが良いだろうな。

 君は・・・商人になるつもり、とナインから聞いているが、本当に商人になるのか?

 貴族や大店(おおだな)の嫡子でもないと聞いてる。

 研究職、職人、戦闘職、しかも君はまだ幼児だ、何でも選び放題だろう。」

「幸いと言っていいか分かりませんが、こちらに転生してからやりたいことが多くて・・・。

 ただ、趣味と本職は別にするべきだろうとも思うのです。

 私は、本業として商人、つまり普通に商いを扱う者として生計を立てるつもりです。

 別に商人が都市間を行商で移動しても気にならないでしょうし、有力者の方々の所に通うようになっても問題はないでしょうし、何なら資金力で様々な装備品を買うこともできる、御の字じゃないでしょうか?

 冒険者やハンター、騎士隊、警邏隊といった戦闘職を本職としている人達には申し訳ないのですが、戦闘職は戦貴族麾下でもなければ、女性である限り、差別とは言えないまでも、性区別は行われてしまいます。

 それでは、私の望む環境はきっと手に入らないと思ったのです。」

「確かに、それはあるかもしれん。

 原理的に、女性が男性に戦闘力で勝ることは少ない。

 同じレベルの、同クラスの、同じ装備の男女が戦った場合、90%は男性が勝利するだろう。

 それくらいは男女では基礎体力・肉体的な問題で差があるからな。

 技術や才能でそれを覆すことができる程の女傑は比率的には1%程度もいないだろう。」


冒険者組合もハンターギルドもある。

前者は最前線にある、後者は最前線以外にある、似たような物という認識でいいと思う。

欲しい素材や物品、探してほしい物を依頼し、その成果に伴って報酬を支払うシステムで運営されており、所属する冒険者やハンターというのは腕自慢の戦闘職が大半だ。

異世界転生物の話を見ると、大概が冒険者やハンターになっているが、この世界では冒険者になるのもハンターになるのも、学校に通わなくてはならない。

基礎知識やサバイバルの方法等、しっかり学ばなくてはその職自体に就けない。

おそらく、死傷者を可能な限り減らすための対策だと思われるが、そこまでしてもスライムに殺されたりゴブリンに嬲り者にされたり、猪の化け物みたいなのに踏みつぶされてペッちゃんこになったり、初心者の冒険者やハンターは致死率が非常に高いと聞いている。

又、仕事の総数もそんなに多くないので、強くて賢い長年生き残っている冒険者やハンターがいるので門戸も狭い。

しかも、所属している組織の面子をつぶすことはできないので無理はできないし、一定以上から上は全て戦貴族に抑えられている。

単純に、序盤のレベリングにはよくても、ある程度から先は夢が少ない業種でもある。


「とりあえず、君の意志は分かった。

 約束の品製作のため、早速ナインと共同研究するための企画書を起こすとしよう。

 深夜にも関わらず、遅くまで引っ張ってすまなかったな、フミフェナ君。」

「いえ、有意義なお話でした。

 今後とも、宜しくお願い致します。」


グッと握手し、丁寧なお辞儀の後、私はローマンさんの工房を離れて、ナインの工房に向かった。

既にナインは眠っていたようなので、起こさないようにソーッと扉を開け、中に入る。

余りに眠かった為、とりあえずナインが朝起きたら起こしてもらおう、と思って、ナインの布団に潜り込んで眠ることにする、おやすみなさい。

眠りについたのは午前2時過ぎ、トーネルト邸では正に惨劇の真っ只中の時間帯であったが、私フミフェナは事後報告を確認するということで自己解決しており、完全に現地任せで普通に爆睡した。

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