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ブルームーン ~震災悲話~  作者: 石渡正佳
第7章 復讐
86/91

86 手引き

 小手山が参加する極龍会の新春ゴルフコンペは西伊豆の「セントマーガレットカントリー倶楽部」を貸切にして行われた。参加者は全員が極龍会系暴力団の若頭以上の幹部か、フロント企業の社長で、背中に刺青を彫っている者が多かったが、貸切なので問題にならなかった。申し合わせたように若妻や愛人を同伴しており、中には顔の売れた元アナウンサーや現役ギャル系タレント、AV女優などもいた。だが、小手山が同伴した香夜子は一段飛び抜けて羨望の的だった。どの女も多少なりと風俗を経験しており、香夜子は自分も同じ臭いがするのかと感じて不安だった。コンペの結果は、シングルの腕前の小手山が優勝、ハンディ36をもらったゴルフデビューの香夜子が3位で、2人は終日主役だった。

 コンペの後、土肥の会員制ホテル「オーベルジュ・ラ・マーレ」を貸切にし、パーティメンバー全員参加の表彰式が開催された。オーベルジュとは山荘風レストランホテル、日本風に言えば割烹旅館だ。

 ヤクザのコンペは派手だ。参加賞でも女にはミキモトの本真珠ネックレスが振舞われた。優勝者の小手山の賞品は伊豆高原の温泉付き別荘、香夜子が受賞した3位の賞品はトヨタレクサスRSだった。小手山は上機嫌で、別荘のキーをその場で香夜子にプレゼントした。香夜子は小手山に前夜から同伴しただけで、別荘と車のキーを手に入れた。

 宴もたけなわになった頃、香夜子は酔を覚ますふりをしてテラスに出て、人目を憚りながら涸沼に電話をかけた。薄手のワンピース姿だったので、寒気で体が硬直した。

 「今近くに来ています。様子はどうですか」涸沼が応答した。

 「まだ1次会です。たぶん深夜になればいくつかのグループに分かれると思います。社長は3階の自室に戻ってクスリをやると思います。部屋にはオキニの女の子数人しか入れません。その時が…」香夜子は背後を気にして声を潜めた。

 「チャンスですね」

 「ええ、たぶん」

 「ボディガードは」

 「社長のボディガードは今日はいません。若衆が交代でロビーを見張っているだけです。西側の非常階段からなら、誰にも見つからずに入れます。内鍵を外しておきます」

 「破鬼田はどうしてますか」

 「遅れて来るようです。なにかトラブルがあって女を捕まえたとか、小手山に報告があったとかって」

 「わかりました。小手山がクスリを始めたら教えてください」

 「はい」香夜子は電話を切って宴会場に戻った。お湯の中に氷をほおりこんだみたいに、冷え切った体が溶け出した。

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