49 ゴシックロリータ
黒服の案内でボックスに移動すると、プラダではなくヘルプの子がついた。自己紹介したが涸沼は上の空だった。女の子全員がゴスロリ(ゴシックロリータ)風のレース飾りがあるダークカラーか白のミニドレスを着ているのが特徴の店だった。涸沼にはまるで関心がなかった。気乗りのしない会話で時間をつぶしていると、延長ぎりぎりでプラダにチェンジした。
「ごめんごめん、遅くなっちゃったよ」
「いいですけど」
「どう、いいお店でしょう。オヤジな客いないからほんと楽」
「オヤジ嫌いですか」
「昔の話聞くのやなの。なんか今はないのって感じ。人生リアルタイムよ」
「なるほど、じゃあ僕はだめだ。過去引きずりまくりだから」
「あんた、おもしろいじゃん。そういう自虐的な性格好きよ。あんたMね」
「どうでしょう」
「ねえ、ほんとは隣に行きたかったんでしょう。ゲロしちゃいなさいよ」プラダはいきなり警察用語で図星をついてきた。
「違いますよ」
「プラダ様にウソは通用しないよ。美神連合の扉をじっと見てたでしょう。隣の誰がお目当てなの」
「一番美人は誰」
「それならリカママね。国分町に来てまだいくらもたたないのに、仙台のVIPを総舐めよ。しかも身持ちが固いって評判。いくら美人でも股関節がゆるいのはダメねえ」
「情報通ですね」
「これがあればね」プラダはスマホを手に取った。
「ツイッターかな」
「へえ、わかってるじゃん。さっきまで隣に楓風会の会長が来てたってツイットがあったよ」
「楓風会って」
「ここら仕切ってるヤクザじゃないの」
「もしかして、さっきリムジンで帰った老人のことかな」
「かもね」
「ツイッターでなんでもわかるって、ゴシップガールみたいだ」
「へえ、あんたわかってるねえ。まあ、そんなとこかな」
「もう無線の情報は、はやらないかな」
「あんた見かけによらないね。仕事なに」
「探偵」
「ウソ、それはありえない。公務員とかお堅い仕事でしょう」またしても図星だった。
「実は産廃Gメン」
「あんたほんとおもしろいね。産廃Gメンはチバでしょ。仙台にいないよ」
「無線屋を捜してんだ」
「なにそれ」
「無線で産廃ダンプを誘導する仕事」
「ああ、まとめ屋さんのことね。最近、それってほんともうはやんないよ」
「隣のママの彼氏がやってたんだろう」涸沼は適当に鎌をかけてみた。
「あんた誰のこと言ってんの」
「情報持ってたら買いたい」
「まじ?」さすがのプラダも真顔になった。
「本気だよ」
「なるほどね。あんたのマジド(本気度)試してもいい」
「どうすればいい」
「ここに看板までいて、あたしとアフターして。そしたらリカママのこと教えてあげる。それまでヘルプの子と遊んでてよ。あたし、指名の客、適当にさばいちゃうから」プラダは返事を待たずに立ち上がった。
「わかった」涸沼は覚悟を決めてソファに身を沈めた。




