44 ホンボシ
河北土工に戻って、X-トレイルに乗りかけた時、目黒の携帯電話が鳴った。鈴成住宅の鯨坂専務からだった。
「刑事さん、あの図面を処分場の担当者に見せたところですね、現場の産廃の処理は下請けの日乃本ベース、孫受けの筑紫建設を経まして、収運業者の伊豆奈興業が請負いましたが、実際に運んだのは代車だったらしいです」
「代車っていうのは」
「はい、なんでも伊豆奈興業が無線でダンプを集めているブローカーに、ダンプの手配を頼んだそうです」
「無線でね。それで名前は」
「わかりません。あいにくとうちが直接契約した相手ではありませんから」
「調べてもらえないか」
「やってはみますが」鯨岡電話を切った。
「おまえ無線屋を捜してみろ」携帯をポケットにしまうなり目黒が涸沼を見た。
「それってなんですか」
「無線でダンプを集めてるやつだ。まとめ屋とも言う」
「名前はなんて」
「わからん。鈴成住宅に調べるようには言ったが、わかったとしても偽名だな」
「名前もわからないのに、どうやって調べるんですか」
「アキバでレシーバーを買って、430メガ帯をずっと拾ってみりゃいい。そこがダンプの使ってる周波数だ。そうして産廃ダンプを集めてるやつがいないか調べればいいんだ」
「無線屋っていっぱいいるんですか」
「不法投棄が多かった頃は、豚小屋のハエくらいいたよ。だが今はとんと聞かねえ」
「それじゃ雲を掴むようなものじゃ」
「藁でも雲でも掴めるものはなんでも掴め」
「言うのは簡単ですが、なんにも手がかりが」
「オメエ、捜査を舐めてねえか」
「すいません」
「これまでの調査で浮かび上がったルートは、無線屋の他にはこの河北土工だけだ。夜逃げしちまって、社長の所在はわからねえが、事務所に散らかった書類から翼商会と取引があったことがわかったじゃねえか。直接の証拠はねえけど、翼商会は調べる価値がありそうな会社だと思わねえか」
「そこが本命って感じですか」
「そこと無線屋がつながればビンゴだな」
「それじゃ次は翼商会に行くんですね」
「ホンボシは外堀埋めてから最後に行くのが鉄則だよ。証拠隠滅されっからな」
「なるほど。でも時間がないです」
「それもそうか。ならまあ、いきなり行っちまってもいいかな。このままじゃネタが全然足らねえし、どっちみちこれは警察の捜査じゃねえ。ただ、ホンボシだとすりゃあ、危ねえ会社かもしれねえぞ。オメエ、覚悟はあんのか」
「もちろんです」
「わかった。善は急げってわけでもねえが、これから乗り込んでみるか。オメエはネットで翼商会のネタ仕込んどけ」
「はい」涸沼は気合を入れて答えると、最新型のギャラクシーを取り出した。




