表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルームーン ~震災悲話~  作者: 石渡正佳
第2章 不法投棄
23/91

23 てんぷら

 那酉川漁港へのsガレキの運搬を始めて3日目、仮置場に向かう道がいつにも増して大渋滞していた。漁港の方向に巨大な黒煙が上がるのが見え、消防車のサイレンが鳴り響いていた。上空には大型の消防ヘリや小型の報道ヘリが飛び交っていた。ガレキを積んだままダンプがあきらめて次々とUターンしていった。

 渋滞に嵌って動けない児玉のダンプのそばに警察官が来た。「こっちはだめだ。農高の仮置場さ行け」

 「火事なんすか」

 「ボヤだ。明日にはなんとかなんべ」

 「ボヤじゃねえでしょう。あの煙、半端じゃないすよ。火山が噴火したみてえだ」

 「ゴミの中のタイヤとかが燃えてっから煙がひでえんだ。仙台からも見えっとよ。今日はだめだから、さっさとよそさ行けや」

 「そうすか」児玉はそれ以上聞かずにダンプをUターンさせた。

 農高がどこにあるかわからなかったが、前を行くダンプに適当についていった。町並が途切れ、田んぼの中の細道が続いた。どの田んぼも津波に運ばれたヘドロでドロドロだった。家の残骸やつぶれた車がまだたくさん田んぼに残っていた。遺体を捜索している自衛隊の車両もあった。いぐね(屋敷林)のおかげで津波に流されなかった旧家もあった。昔の人の知恵は大したものだ。農高の跡地かどうかわからなかったが、田んぼの中の仮置場に着いた。一方通行の進入路に入ろうとした時、脇田から預かった携帯が鳴った。

 「すぐ戻って来い」脇田の声はいらついていた。

 「今捨て場の前なんすけど」

 「捨てねえで帰って来い」

 「なんで」

 「つべこべ言うでねえ」

 「わかりやした」児玉は仮置場には入らないで会津若松に向かった。

 国道まで戻った時、また携帯が鳴った。「俺だ、わかっか」

 「いえ」

 「俺は湊ってんだ。顔見ればわかっと思うけど、まあどうでもいいわ。オメエは新顔だろう。今どこさ居る」

 「社長が帰って来いってから会津に向かってます」

 「バカヤロウ、帰んじゃねえよ」

 「なんですか」

 「梁瀬ってトッポイ野郎がいたろう。いつもアロハみてえの着てたよ」

 「ああ、なんとなく」

 「あの野郎、車証を売りやがったんだ。そしたらすぐにテンプラだってばれてよ、ダンプ取られちまった上に半殺しだとよ。俺らのことも歌ったんならてえへんだぞ。脇実もこれでおしめえだな」

 「それで捨て場に入らねえで帰って来いって言ったんだ」

 「そうだよ。だからよ、会津にけえれば、オメエ、社長にダンプ取られちまうぞ」

 「だってもともと社長んすから」

 「それは堂本んだろうよ。社長にけえす必要なんかねえよ。なあ、そのダンプ俺が売ってやろうか。バクバクだけどよ、今は車が足んねえから300万にはなんぞ。山分けでどうだ」

 「いい話っすね」

 「だろう」

 「じゃよ、仙台さこいや」

 「仙台すか」

 「こっちの方が仕事あんぞ。もう那酉川はだめだわ。北へ行くほどひどいかんな。俺はいっそ東松島か石巻さ行くべとかんげえてる」

 「いいすよ、じゃ仙台で落ち合いますか」

 「着いたら電話しろや。買い手は捜しとくかんよ」

 「すんません」児玉は電話を切った。

 仙台に向かおうとして、ガレキを積んだままなのに気づいた。昼間から不法投棄するわけにもいかない。どうせ捨てたところで、脇田からもう手間はもらえない。これ以上危ない橋を渡るより、郡山にいったん戻ることにした。

 携帯がまた鳴った。液晶を見ると脇田だった。「今どこだ」

 「そうすね、会津まであと2時間くれえすね」

 「あんでそんなにかかる」

 「下道っすから」

 「高速使えや、アホタレ」

 「だって社長が使うなって」

 「今日は特別だわ」

 「そうすか。あ、電波弱いすから切れっかも」児玉は見え透いたウソをついて携帯の電源を切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ