19 碧い石
「おい、オメエにもうちょいと割のいい仕事探してやっからついてこいや」いつものように脇実組の置場からガレキを積み出そうとしている児玉を脇田が呼び止めた。
「なんすか」
「ついてくればわかんわ」脇田がベンツに乗り込んだので、児玉は空ダンプで後についた。
脇田が児玉を連れて行ったのは、福島市と郡山市の境にある安定型最終処分場だった。10万立方メートル級の小さな穴だったが、それでも無許可の捨て場に比べれば大きく感じた。事務所に人影はなく、脇田の車は勝手に進入路を降りていった。穴の底の一番奥に見慣れたガレキの大山が築かれていた。
「1台10万やるから、これをおまえ1人で全部片せ」
「ここ最終(処分場)っしょ。せっかく処分場に入ったっつうのに、また出すんすか」
「詮索はすんな。深箱で20台分はあんだろう。全部で2百万てとこだ。悪くねえ仕事だろう」
「そうすけど」
「そんかわり運び先がちょっと難しいぞ」
「なんすか」
「今までみてえに手当たり次第に捨て逃げするってのはだめだ。原発の放射能警戒区域まで行って処分場探して捨てて来い。そこなら当分誰も来やしねえからな」
「だってそこ立入禁止じゃないんすか」
「でえじょうぶだ。検問があんのは国道と県道だけだ。あとで裏道を教えてやっから」
「つまりこのガレキも放射能があるってことっすか」
「2百万欲しいならそれ以上は聞くな」
「いいっすよ。なんでもやりますよ。放射能なんかこわかねえ」
「やっぱオメエは話がわかる。ならさっさと始めろや。あとな、これを触っ時はマスク着けろや。ほれ」脇田は防塵マスクの箱を投げてよこした。
「放射能どれくれえなんすか」
「やっぱ気になるか」
「別に、話の種に聞いただけっすよ」
「そんなもん俺が知るか。ここの処分場のことは誰にも言うんじゃねえぞ。それからよ…」
「なんすか」
「これは噂に聞いた話なんだけどよ、もしも捕まったら、逆によ、これは放射性廃棄物だって言えば、不法投棄してもお咎めなしだそうだぜ」
「え、なんで」
「知るかよ。実際それで釈放されたやつがいんだとよ。たぶんよ、放射能があると不法投棄の法律は適用されねえんだよ」
「だからなんですか」
「知るかつってんだろうよ。そういう噂がダンプ屋の間で広がってんだ。それよかほれ、これが検問抜ける裏道の地図だ。見て覚えたら燃やして捨てろよ」脇田は地図を手渡すと、これ以上居るのは無用とばかりさっさと踵を返した。




