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邪神さんと冒険者さん 71

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無事に開きますようにと願いながら、

フィルは木箱の上蓋に両手をかけ、そしてそれをゆっくりと持ち上げた。

果たして箱は爆発する事無く、毒ガスが撒かれる事も無く

錆びた蝶番の音を軋ませながらも、箱は何事も無く開いた。

「ふぅ……結構心臓に悪いな、これ……」

慣れない罠の解除に安堵の息をつき、

それから改めて箱の中を覗きこむフィルだが、

さっと箱の中を眺め、そして予想通りの結果に

うんうん、分かっていましたよ、とばかりに苦笑いを浮かべた。

(……まあ、ゴブリンの箱だし、こんなもんだよな)


フィルが予想した通り、

箱の中には価値のありそうな品は殆ど無かった。

というか、本来なら金属鎧二つは余裕で格納できるであろう箱の中には

アイテムらしい物は殆ど入っておらず、

幾つかのガラクタがポツンポツンと箱に底に無造作に転がっているばかりで

辛うじて価値がありそうな物といえば

短剣が一振りに、見るからに安物の宝石が2つしかなかった。

もちろん短剣からは魔力の欠片も感じられないし、

宝石はアゲートとターコイズで質は並以下、

おそらくそれぞれ金貨数枚が精々といった代物だった。


他は木の棒や、何かの骨や金属の破片など、

何で大事にしているのか理解できない文字通りのガラクタばかりで

硬貨に至っては金貨や銀貨はおろか銅貨すら入っていない。

タチの悪い冗談のような中身だが

ゴブリンの箱と言えば大体どこもこんな感じで

ゴブリン達はこれを本気でお宝だと考えているのだから仕方無い。


(まぁ、ゴブリン達は此処にやって来たばかりでガラクタを集めている余裕が無かった。と考えれば、それはそれで良かったと言えるか……)

ゴブリンというのは何故かは分からないが、

他の種族の目からはどう見てもガラクタに見える品を好んで集める習性がある。

特に骨はゴブリン達の中では人気の品らしく、

フィル達がこれまでの冒険で開けた箱の中にも結構な確率で入っていたものだった。

そして、その骨の入手元はと言えば、大抵が現地調達であり、

このままゴブリンを放っておけば

遠くないうちに、この箱の中に村の子供や愛犬の骨が入っていた可能性は大いにあったのだ。

箱の中身には(いつも通り)残念な内容だが、

そう考えるとこの結果は決して悪くは無いと言えるだろう。


「フィルさんフィルさん! どうです? なにか良い物ありましたー?」

そんな感慨にふけっていたフィルだったが、

後ろからの呼ぶサリアの声に我に返った。

振り返って見てみれば、罠の影響受けない十分な距離を取り

フィルの作業を見守る一団の一番先頭にサリアがいるのが見える。

先程ダリウには期待できないとしたり顔で言っていたのに

ちゃっかり集団の最前列で見物している少女に

フィルはやれやれと苦笑いを浮かべながら

もう大丈夫だよと手をあげて皆を呼び寄せた。


「フィルさん、中身どうでした?」

「……ああ、とりあえず実際に見てみるのが良いんじゃないかな?」

やって来て早々、箱の中身を尋ねるサリアに、フィルは曖昧な笑顔で応じると、

自分は箱から身を引いて、皆に場所を譲った。

「それでは早速……ってこれは……」

待ってましたとサリアは早速、箱の中身を覗き込むのだが、

覗き込んですぐに体が固まり言葉に詰まる。

「……これはちょっと酷くないです?」

顔を上げてなんともいえない表情で尋ねるサリアに

フィルは悪戯っぽく笑って見せる。

「だから言ったろう? ゴブリンの箱は期待できないって。ちなみにどこのゴブリンも大体こんなもんだよ?」

「むぅ……それにしたって酷すぎません? 何も入ってないですよ?」

少女の予想通りの反応に、

言った通りだろう? と得意げなフィル。

フィルの嬉しそうな様子を見て

サリアはますます頬を膨らませる。


「もうっ、大体これだけしか持って無いのに、こんな大きな箱で持ち歩く意味あります? 小柄なゴブリンじゃ運ぶのは大変なはずです!」

「それはゴブリンに聞いてみないと分からないなあ。ああ、でもそういえば、ゴブリンの持ってる箱って、どれも同じ位の大きさなんだよね。そう考えるとちょっと不思議だよね?」

「そんなミステリー要らないです!」

「まぁ、大方これからこの中に入ようって考えてたんじゃないかな? もっとも、ゴブリンの集めてくる宝なんて僕らから見たらただのガラクタばかりだけどね。逆に言えばこの箱の中身が増える前、村に被害が出る前に退治できた事を誇った方が良いと思うよ?」

「むぅ……確かにそうかもしれませんけどれども……」

フィルの言葉に、サリアはまだ不満げだったが

もう一度、この中をむぅと覗き込んで、それからため息を吐くと

後ろに並んでいた村人と交代してフィルの横へとやって来た。

未だにご機嫌は斜めの様だったが、どうやら気持ちを切り替えたようで

バードらしく自分も皆を眺めて様子を観察するつもりなのだろう。


「うわぁ~、こりゃひでぇな……」

「えぇ……確かにこれは、期待しちゃダメな感じね……」

自分達の順番がやって来て箱の中を覗き

落胆と呆れの混ざった声を出すダリウとリラ。

他の村人達も同様で、順々に箱の中を覗いては

それぞれ落胆の声をあげている。

とはいえ、それも初めの数人程度で終わり、

順番も中程になると、先に覗いていた村人達の様子から

およそ中身の察しがついたのだろう。

話のネタにととりあえず覗き込んではみるが

想像通りの結果に苦笑いを浮かべる程度になっていた。


「いやー、ほんとに何も入ってないもんだなあ」

「こりゃ、冒険者って言うのはあまり儲かりそうにないな!」

「お前さん達も地道に暮らした方が良いんじゃないか?」

「私達はいいの! そのうちちゃんと稼いで見せるんだから!」

箱の中身をネタに揶揄う村人に、むっとして言い返すリラ。

ゴブリンなどはモンスターとしては最下級。

これより強いモンスターは幾らでもいるし

そうなれば、より高額な戦利品だって手に入るはずだ。

とはいえ、問題は今、この時点の事で、

あれだけの数のゴブリンを必死に退治して

返り血を浴びまくったりして苦労して手に入れた戦利品が

これだけというのは確かに寂しいものがある。

さらに言えば、今回のゴブリン退治は

正式に依頼を受けての仕事ではない。いわばボランティアだ。

これだけ苦労して報酬らしい報酬が無いというのは

確かに村人に揶揄われてげんなりしているリラでなくても頭が痛くなってくる。


フィルはそんな村人や駆け出し冒険者達のやり取りを眺めながら

自分達の駆け出しの頃を思い出していた。

駆け出しの頃というのは依頼を達成しても報酬は少ないし

敵からの戦利品も碌なものが無かったりで

資金繰りには何かと悩まされたものだった。

ゴブリンの箱にしても少しでも報酬の足しになればと

毎度、苦労して罠の解除と箱の解錠をするのだが、

今回のような内容にがっかりした事も一度や二度では無い。


そして、そんな事があるたびに皆で酒場に集まり

報酬や戦利品の低さを愚痴っていたのを思い出す。

(そう言えば、どんなに報酬が少なくても、とりあえず打ち上げはやってたっけな)

依頼を一つ終えた後は皆で酒場に集まり酒を飲む。

それはフィル達のパーティが欠かさずにやっていた事だった。

あの頃は目の前の事で精一杯で考えている余裕も無かったが

今にして思えば、あの飲み会のお陰で仲間の性格を良く知ることが出来たし

近くで飲んでいる客や店員から教えてもらう噂話は良い情報源だった。

なによりも、皆で酒を飲むのは結構楽しかったと思う。

(あの娘達も、僕達みたいに酒場でくだ巻いたりするのかな?)


フィルがそんな取り留めも無い事を考えながら

リラ達のやりとりを眺めていると、

村人達の一団の中からアニタがこちらにやってくるのが見えた。

「えへへ、少しだけこちらに避難です」

「や、お疲れ様。あっちは大変そうだね?」

「ちょっと、こんな沢山の人と話すのって慣れてなくて……」

そう言って照れ笑いを浮かべてフィルの隣に立つアニタ。

普段からクレリックとして村人と接しているトリスや

酒場で給仕をしているリラならともかく、

引きこもりがち、それも普段から男性とは疎遠なウィザードには

これだけの村人を相手にするのはさすがに少々荷が重かったのだろう。


「ははは……まぁ、あの人達も悪気があっての事じゃ無いんだろうけどね」

「悪気が無いのが問題という気もしますけどねぇ」

フィルのフォローにサリアが苦笑いで突っ込みを入れる。

「彼らにしたら、リラ達は村で育った大切な娘さんだからね。それがこんな苦労ばかりで報酬が殆どない、そんな禄でもない仕事を選ぼうとしているのなら心配にもなるさ」

冒険者になるという事は今後もこんな血生臭い仕事を続けるという事だ。

年頃の、それも村出身の娘が冒険者になるなんて聞けば、

同じ村の同胞としては心配にもなるというものだろう。


「えぇ~、それ、自分で言っちゃうんですか?」

呆れ顔のサリアにフィルは自信たっぷりと頷いて見せる。

「ああ、実際、僕達だって駆け出しの頃はかなり厳しかったからね」

「そうなんですか?」

「ゴブリン退治や大蜘蛛退治なんかは倒しても戦利品が殆ど無いことが多くてね。よく依頼を終えた後、酒場で愚痴ったものだよ」

「じゃあ、やっぱりこういうのって多かったんです?」

「ああ、駆け出しで受けられる討伐依頼なんて、こんなのばかりだよ。まぁでも、今になればそれもまた経験なんだろうなって、そう思うよ」

懐かしそうに語るフィルに、

ウィザードの少女は困ったような笑顔を浮かべる。

「でも、それでもどうせならもう少し価値のあるのが欲しかったです。今は生活は何とかなりますけど、装備を買ったりしないといけないですし」

「ですよねぇ、私達って正式な依頼を受けてませんからね。ポーションを使わなくて済んだとはいえ、スクロールは使っちゃいましたし、報酬が無いと赤字ですもんね」

アニタの言葉にサリアも腕を組んで真面目な顔で頷く。


確かに何かと出費が多い冒険者にとって、

金貨は一枚でも多くあったほうが良い。

特に駆け出しなら尚更、数枚の金貨でも無駄には出来ない。

どんなに低級なポーションでも

一つ余分に持っていけば、それだけでパーティの生存率が上がるし

装備の買い替えやメンテナンスにだってお金はかかる。

なにより宿に泊まったり食堂で食事をしたりと

生活するだけでもお金は必要なのだ。


「まぁ、駆け出しのゴブリン退治じゃこんな物だろうね。けど、今回はゴブリンの装備が良かったからね。報酬の方は何とかなるんじゃないかな?」

「それはそうですけど、これから修理するんだって思うと……」

フィルの言葉にアニタは気が重そうに答える。

「あの呪文、時間が結構かかるんですよね。それをこれだけの数となると……このまま売るんじゃ駄目なんです?」

ダメ元といった感じで尋ねるサリアにフィルは笑って頷く。

「一応売れるには売れるけど、それだとかなり安く買い叩かれるんだよ。最悪、素材としての価値でしか買い取ってもらえない。魔法のかかってない普通の品でも修理して綺麗にすれば大分値段が変わるからね、特に駆け出しのうちは、この差は結構大きと思うよ?」


店主と交渉して買取価格を吊り上げるという事も出来ないでもないが

あんまりやり過ぎると出禁になる可能性もあるし、

普段から利用する店の心証を損なうのは得策ではない。

健全に報酬が増やせるのであれば、

努力を惜しむべきでは無いだろう。


「と云う訳で、明日、明後日は呪文を使える者全員でメンディングの呪文で修理をするよ。あの数だし人手が多いに越したことは無いからね」

「それは良いですけど、でも私達、フィルさんみたいに沢山呪文使えないですよ? 私なんて一日に三回しかできないですし」

「私は、前も言った通り、今回は戦力外ですね。申し訳ないです」

自信なさげなアニタに、開き直ってあっけらかんとしたサリア。

そんなサリアに苦笑いでため息をついてフィルは言葉を続ける。


「ま、それは仕方ないさ。できる者で一斉に終わらせれば、それだけ早く終わるからね」

フィルの言葉に頷く二人。


メンディング……

メンディングは物体の損傷をある程度修復出来る呪文で

ウィザードやバードだけでなくクレリックでも利用することが出来

さらに言えば初級段階で唱えることが出来るという非常に便利な呪文なのだが、

難点としては呪文の発動までに十分程度の時間が必要な事だった。

そのため一つや二つ修理するのなら大した事無いのだが

今回のように大量の修理を行うとなると時間的に人手が足りなくなってくる。

幸い、此処にはフィル以外に二人、この呪文を使える者がいる。

全員で取り掛かれば早く終える事も出来るだろう。


「そういう事、ちなみにきちんと修理して綺麗にしてやればショートソードなら金貨五枚、ショートボウなら金貨十五枚になるはずだよ。結構堅い収入になるから、盗賊やゴブリン退治の時は覚えておくと良いよ」

楽しそうに説明するフィル。

アニタとサリアはその様子をぽかんと眺めていた。

「なんだか、随分慣れているんですね。なんというか……買い物上手なお母さん? みたいな感じです」

「そりゃあね。駆け出しのうちは随分お世話になったからね。魔法の品が手に入るようになれば変わるけど、それまではこういうので貯めないと正直厳しいからね。あとは手に入れた武器から造りの良いのを予備の武器にしたりとか……ああ、そうそう、修理した武器で君達が使いたい物があったら、使っても良いよ?」

「え~、ゴブリンのですか? あれを使うのは、ちょっと遠慮したいですよねぇ?」

「うん……、汚いし、なんか造りとかも良くなさそうだし……」

敵の武器、それもゴブリンが使っていた武器にあまり乗り気では無さそうなサリア。

サリアがアニタに同意を求めると、アニタも頷く。


「ん~、そうかな? でも直して綺麗にすればそこそこの物になるんだよ?」 

「え~、そうなんですか? 良くは見てませんでしたけど、錆とか結構浮いててボロボロでしたよ?」

あんなので大丈夫かと疑わし気なサリアにフィルは笑って答える。

「ゴブリンが持っている武器や防具って、元は人間やドワーフから盗んだ物が殆どなんだ。だから造り自体はそれほど悪く無いはずだよ?」

「へぇ……そうなんですか? でもそれじゃ、今回は報酬無いのかなって、諦めちゃってましたけど、結構お金になりそうなんですね」

「ああ、村人達と折半してもそれなりの金額になると思うよ。まぁこの村だと買い取りに限界があるから街で売り捌いてからだけどね」

「なるほど、それでは明日から暫くは戦利品の修理ですね」

「トリスにも手伝ってもらって、頑張らないとだね」

アイテムはおろか、金貨一枚すら報酬として得られて無いだけに

フィルの話にほっとした表情を浮かべるサリアとアニタ。

そんな二人にフィルは少しだけ苦笑いを浮かべる。


「ただ……、一つ問題があってね」

「問題ですか?」

「うん、今回は大丈夫だけど、武器とか鎧って、持ち帰る時にとにかく荷物が嵩張るんだよね……ホールディングバッグが無い一パーティじゃどうしても持ち帰れる量に限界があったりするんだ」

「ああ……」「たしかに……」

フィルの言葉に確かにと頷くアニタとサリア。

武器というのは戦場での扱い易さを考慮しているだけあって、

一本一本の重さはそれほど重さを感じないが無いが

束ねて持つと意外と重量がある事がわかる。

逆に革鎧は複数持っても重たさはそれほど変化ないが

いかんせん鎧自体が立体的で嵩張るため、

幾つも手に持つ事自体が難しい。


「確かに五、六人だと持ち帰れる量って限られちゃいますね」

うんうんと頷くサリアにフィルも頷いて見せる。

「そう、元々持って来た装備や荷物もあるし、人一人が持ち帰れる容量ってあまり多く無いんだよ。僕らの時もズダ袋に詰め込んだり、槍が二本あった時はそれを使って担架にしてみたりとかいろいろ試してみたけど、それでも結構諦めたりしたもんだよ」

「あ、そおいえば、確か荷物を運ぶための魔法もありますよね? フローティングディスクとか」

懐かしそうに言うフィルにアニタが興味深げに尋ねる。

フローティングディスクを使えば術者の練度によって変化するが

五十キロから熟練者となれば、一トン近くまで

浮遊する小さな円盤に荷物を載せて運搬することが出来る。

呪文の等級としては第一段階の呪文ではあるし

こういう時に便利な呪文と言える。


「ああ、僕のいたパーティにはウィザードが二人いたんでフローティングディスクを二つ出して運んだこともあったよ。それでも要塞化した盗賊のアジトなんかは、物が多すぎて諦めた品も結構出てね。魔法も掛かってないプレートメイルとか、すごく嵩張るから正直持ち帰るのにかなり悩んだよ」

「むぅ……贅沢な悩みですね……まぁ、今日はそんな事に悩む心配はなさそうですね。これだけの人が居ますし、皆で持ち帰ればいいですし」

そう言って箱の周りの村人達を見渡すサリア。

幸い、今回は村人達も含めて二十人弱の人員がいる。

一人当たりゴブリン二匹分の装備を運ぶとして

小型の革鎧とショートソード二組程度、

成人男性の膂力をもってすれば余裕で持ち帰ることが出来るだろう。


「そうだね。幸い今回は苦労せずに戦利品を持ち帰れそうだ。全員が無事で、報酬も何とかなりそうだし、初めての冒険としては良い方なんじゃないかな?」

そう言いながらフィルはもう一度ゴブリンの宝箱の方へと視線を向けた。

そこには箱の前で話を咲かせている村人達の姿があった。

リラ達前衛を経験した者達は返り血やらいろいろ浴びて酷い恰好だったが、

それでも一仕事終えた後だからだろうか、全員、随分と軽い表情だった。

そんな彼らを見ていると、昔の仲間の顔や

冒険での辛かった事や楽しかった事が脳裏をよぎり

それと共に、改めて未だに自分が冒険者としての生活に未練がある事を実感する。

(この娘達はこれからもいろいろな冒険をしていくのだろうな……)

勿論、冒険者をしていく中には良い事も悪い事もあるだろうが、

それでも少しだけ少女達の事が羨ましく思えてくる。

そんな事を考えながら何気なくサリアの方を見てみると、

サリアもフィルの視線に気が付いたようで、

不思議そうにこちらを見上げてきた。

「ん? どうかしたんですか?」

「ああ、いや何でもないんだ。ただ何というか、君達の冒険が無事に終わって良かったなって、安堵している所だよ」

「なんですか~それ? やっぱり私達ではスキルでは不安でしたか?」

「ん~、いや、サリア達なら十分やってくれると思っているよ。だけど、それ以上に何が起こるのか分からないのが冒険だからね。だから最後まで何か起こるんじゃないかって心配してしまうんだよ」

「はぁ……そんなものなんですか?」

抗議をしようとしたがフィルの言葉に迷うサリア。

そんなサリアの頭に何時のように手を乗せると、

フィルはそれじゃあそろそろ帰ろうかと

皆の方へと向かった。



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