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邪神さんと冒険者さん 23

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その後も暫くフィルの講義は続いたが

夜も大分遅くなってきたこともあり、講義は解散の流れとなった。

フラウと共に自分の部屋に戻ったフィルは

ソファに腰かけると、ようやくと言った感じで息を吐いた。

「ふふふ、お疲れ様です」

そんなフィルの横にちょこんと座り、フィルを労うフラウ。

隣を見ればフィルを見上げ、ニコニコしているフラウの顔が目に入る。


「フラウこそ、今日一日色々あって大変だったろう?」

「えへへ、今日一日は本当に色々でした」

私もくたくたですと、うーんと背伸びをするフラウ。

そんな少女の仕草を目を細めて眺めるフィル。

「さてと、今日はもうすることもないし、先に寝てしまうといいよ。僕は明日の呪文の準備をしてから休むから」

そう言うとバッグから呪文書を取り出しパラパラと目的の呪文のページをめくる。

「ええと、もう少し、こうしていてもいいです?」

「うん?それは構わないけど、退屈じゃないかい?」

「えへへー、大丈夫ですー」

フラウはそう言うと、そのまま少しだけフィルに寄り掛かる。

フィルとしては夜も遅いし少女を早く休ませたいところではあったが

何となく頼ってもらえているようで悪い気はしなかった。

「それならいいけど、眠くなったらベットを使うといいよ」

「はいですっ」

嬉しそうに答えるフラウに

それ以上はフィルも何も言わず、

明日の呪文を覚えることに専念する。


明日は皆の訓練のために、

サモン・クリーチャーの呪文を各段階でなるべく多く準備しておくべきだろう。

それと、明後日の探索用で使うための灯りとして

コンティニュアルフレイムをかけた松明も幾つか欲しい。

だが、そうなると、今準備してある呪文のかなりの数を覚え直す必要があり、

最低限必要な呪文以外を全て覚えなおし、

ようやく全ての準備を終えたのは、一時間は経ったかという頃だった。


「……ふう、ようやく終わったか、待たせてごめんね……ん?」

作業に没頭していたせいか、

ひと段落してフラウに声をかけたところで、

少女に動きが無いことにようやく気が付いた。

見ればフラウはフィルに寄り掛かったまま、寝息を立てていた。

やはり今日一日の出来事で、小さい体は大分疲れていたのだろう。

そんなことを思いながら、フラウをベッドへと移すため

フラウを起こさないよう、そっと移動する。

だが、元々眠らないように我慢していたためか

寄り掛かかっていた支えが動いたことを敏感に感じたフラウはうっすらと目を開く。


「ふぁ……あれ? ねむちゃっていました?」

「うん、疲れていたみたいだからね。ベッドに行けるかい?」

「はいです。 ……えへへ、実はお部屋に入ったとたんになんだかすごく眠くなってきたのです」

照れ笑いでフラウはそう言うと、

立ち上がろうとして……何かを思い出したようで、

もう一度、座りなおすとフィルの方を改めて見上げる。

「……フィルさん、今日はフィルさんもこっちで寝て欲しいです」

「うん? うーん……ベットはフラウが使うといいよ。僕はソファーでいいからさ」

ベッドを指さして訴えるフラウに

ありがとうと頭を撫でてやりながらも、やんわりと断るフィル。


「一日大変だったのはフィルさんの方ですし、ちゃんとしたところで寝てくださいです!」

「いや……ほら、若い女の子と一緒に寝るのはいろいろ良くないしね……」

「昨日だって一緒でも大丈夫でしたし、フィルさんもベットのほうが良いです!」

「うーん、けどなぁ……」

大人の男性として、なおも逡巡するフィル。

そんなフィルにむーっと頬を膨らませるフラウ。


「フィルさんと一緒にいたいです。だめならこうです!」

そう言うとフラウはソファに横になる。

座ってるフィルの膝に頭をのせて、そのまま上を見上げる。

「フィルさんがベッドで寝てくれるまでソファは使わせてあげないのです」

普段おとなしいフラウの思わぬ抵抗に少し驚いたフィルだが、

考えてみれば自分を心配してくれての事だし、

膝枕という可愛い抵抗にも自然と笑みがこぼれてくる。

そして何より、フィルに訴える目が

以前のような怯えた目ではない事が嬉しかった。


「ははは……分かったよ。それじゃあ、僕もベッドで寝させてもらうよ」

「はいですっ」

そう言って、嬉しそうに笑うフラウ。

ようやくと言った感じで二人がベッドへと入る頃には

もうすっかり深夜と言える時間になっていた。


「ありがとう」

「えへへ、どういたしましてです」

目的を達成して満足気なフラウ。

ベッドは宿屋の物と比べてかなり広く、

おかげで二人が横になっても随分と余裕があった。

「ふむ、このくらいベッドが広いと、落ちる心配もなさそうだね」

「えへへ、でも宿屋さんのベットも良かったですよ?」

そう言うと、昨日と同じようにえいっとフィルに身を寄せるフラウ。

少し恥ずかしそうな、だが嬉しそうなフラウの顔が近くに来る。

「フィルさんとこうしていられるは、すきですもん」

「あはは、ありがとう」

我ながら、下手な返事だとは思いながらも

フィルもまた照れてしまい、そう答えるのがやっとだった。

暫くはそんな、他愛ないことをしていたが、

やはり疲れが溜まっていたのだろう

だんだんと瞼が閉じていき

暫らくするとフラウは寝息を立て始めた。

「お休みフラウ」

既に寝入っている少女からは返事は無いが、

それでも一言、声をかけてから寝る。

明日もこの少女が笑顔でいられますように。

そんなことを思いながら。



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