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邪神さんと生贄さん 19

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階段を降り、一階の食堂へと出ると、

昼食の客もひと段落したようで、

いくつかのテーブルに座ることができるようになっていた。

「ああ、ちょうど空いたところですよ。食べていきます?」

二人に食事をしていくか尋ねる主人に、今日のメニューを聞くと

本日は鶏肉と玉ねぎのシチューとパン、ポークリブで銀貨二枚だという。

食事を頼むことを伝えて、主人にテーブルへと案内をしてもらう。


「えへへ、村の外で食べるのって初めてなんです」

さっき他の人が食べていた料理も見ていたフラウは

楽しみですねと、フィルに笑いかける。

フィルもまた、そうだねとフラウに笑いかける。

「街には慣れたかい? と言っても少し歩いただけだけど」

「うーん、まだよく分からないです。街って大きいですし。人もいっぱいで、はぐれちゃいそうでちょっと怖いです」

人も沢山ですし、ちょっと心配ですと、

楽しそう半分、少し不安半分といった表情のフラウ。

「ははは、これから食べ物の買いに行く店は市場にあるらしいから、もっと沢山の人がいるかもね」

「うー、フィルさん酷いです!」

怖がらせるのはダメなんです。

と、今度は少し怒った様子のフラウ。

でもすぐに笑顔に戻る。

「えへへ、ちゃんと手を握っていきますからはぐれる心配はないのです」


そんな話をしながらしばらくすると、

主人が料理を持ってやってくる。

やってきた昼食は量もあり味も良く、

確かに繁盛しているのも頷ける内容だった。


「料理はどうでした?」

「とっても美味しかったです! スープもお肉もすごく美味しかったですし、パンも美味しかったです!」

気さくな人柄なのだろう。

客足も落ち着き、ニコニコと料理の感想を求めてきた主人に

嬉しそうにすごく美味しかったことを伝えるフラウ。

フィルもまた、すごくよかったと伝える。

主人も自信があるのだろう、

この豚は近くの農家で育てた豚を毎週仕入れていることや、

スープの下ごしらえに拘っているいる事について

楽しそうに自慢を聞かせてくれる。

フラウはその度に驚いたり、

感心したりと素直な反応をみせ。

店の主人の機嫌をさらに良くさせた。


主人から色々と料理のコツを教えてもらい

更にはプリンをサービスしてもらいご機嫌なフラウは、

デザートを食べながら、これからどこに行こうかフィルに尋ねた。

「とりあえず、先に雑貨屋さんに頼まれた商人の店へ行って食べ物を買ってしまおう。そのあとは時間があれば僕らの分の食べ物を買って、ああ、フラウの服も買わないとね」

「えへへ」

服と聞いてどんな服が売っているのか想像したのか、

フラウの顔が自然とにやけてくる。


食事が済み、楽しみですと気合十分な少女の手を取り、

まずは雑貨屋の依頼をこなしに目的の商人の店を目指す。



目的の商店の場所は、宿の主人に名前を伝えると

詳細な場所を教えてもらうことができた。

なんでも、宿の主人とも付き合いのある商人らしく、

この店の食材や調味料も、幾つかはその店で買っているのだという。


主人に教えてもらったとおりに、街の西側にある市場街を目指す。

先ほど登って、それから下ってきた領主の館へと続く大通りを再び登る。

領主の館の横を通り過ぎて更に進み、

今度は下り坂になった大通りを進んでいく

「こちらはの通りは、服屋さんとかも多いんですね」

フラウが周りの店を楽しそうに見ながらフィルに話しかける。

「確かに、西側には服とか雑貨の市場もあるみたいだから、そのせいかもね」

東側はどちらかと言うと旅人向けの施設が集まっていたように思う。

そのため、宿屋だったり、旅や冒険に必要な雑貨屋などが

大通りには沢山軒を連ねていた。


逆に東側は、街の住民向けの店舗が多い気がする。

おそらくは、必要なものを買い易くするための施策なのだろう。

そんなことを話しながらも暫くすると市場街へとたどり着く。


商人の店は市場街にある、問屋が集まる場所の一角に構えられていた。

ここでは大きな広場にさまざまな露店が並び、

それを囲うように大小様々な問屋、商店が並んでいた。

二人は外周の商店の一つに、

目的の店名の書かれた看板を見つけ、

店の中へと入る。


店に入り、店番をしていた翁へ雑貨屋の女主人からの紹介状を渡し、

要件をつたえる。

紹介状の確認をした翁は、

何事が書かれているのか確認をして何度か頷くと、

少し待っていなさいと言って使用人の青年を呼び出した。


「それじゃあ、紹介状に必要な品は書かれておったから、後はこいつが商品を倉庫から取り出してくれるよ。結構な量があるから、あまり無理をせんようにな」

はっはっはと笑いながら元の場所に戻っていく老主人に礼をいい、青年の後を続く。

「へぇ、それじゃ、あのドラゴンの村から? あそこはやっとドラゴンがいなくなったって聞いたんですが、そんなに大変なんですか?」

村の事は、この街でも話題になっていたらしく

さっそく村の事情に興味を持った青年に

世間話程度に現状を伝える。

「ああ、日照りが続いていてね。食べ物をなるべく早めに確保しておかないと、この夏はかなり厳しいみたいでね」

「なるほど、それは厳しいですね。でも、これだけの量、持っていけるんですか? 馬車でもこの量はかなり辛そうですけど……」

「ああ、バッグ・オヴ・ホールディングを持ってきてるから、その心配はないですよ」

アイテム名を聞き、少し驚いた様子の青年。

「へぇ、それはまた随分と高価な物を持っているんですね。私も年に数回ぐらいしか拝むことは無いですよ。さては、お客さんは冒険者ですね?」

「元、だけどね、今はのんびりさせてもらっているよ」

「なるほどねぇ。さて、それでは倉庫から出してしまいますね」

軽く笑って、本腰を入れて荷物を運び出す青年。

さすがは手慣れたもので、倉庫の前の空き地には、

どんどんと食料が積み上げられていく。


青年が言うように、運び出された食料はかなりの量だった。

積み上げられた穀物の袋がなかなかの威圧感を放つ。

「え~と、これで全部かな……。大麦80kg、小麦粉80kg、ジャガイモ80kg、チーズ80kg、豆80kg、さすがにこれだけあると、持っていくのは大変そうだけど、ほんとに大丈夫ですか?」


最後の麦袋を降ろし、

ふぅと、汗をぬぐいながら

青年は数がそろっているか最後の確認をする。


「ああ、入れるのは少し面倒だけど、持っていくこと自体は問題ないよ」

「分かりました。じゃあ、お代はと……。合計で銀貨百四十四枚ですね」

「金貨での支払いでいいですか? あと、ここって、小売りとかもできます? あそこのオレンジとか、あと、自分達で使う分のも購入したいのですけど」

「ああ、もちろんかまいませんよ。どんどん買っていってくださいよ」

「それじゃあ、あそこのオレンジを五キロ、ナッツ五キロ、石炭百キロ、木炭百キロ……」

「お、結構たくさん買ってくれるのですか? なら、メモに一度書き出しますから、少し待っていてくださいね」


結局、青年にメモを作成してもらい

とりあえず目に付くもので購入できそうなものを買っていく。

「それでは合計はと……お、こちらも合計で銀貨百四十四枚ですね」

「少しずつでも結構高いんですね?」

結構購入することはしたが、

先ほど購入した村の分と比べると明らかに量は少量だった。

フラウは不思議そうに尋ねる。


「ああ、こっちは、胡椒とか砂糖とか塩とか唐辛子も買ってるからね。それを考えるとかなりお手頃価格だとおもうよ」

フィルの返答に店員も同意する。

「あはは、相場について詳しいですね。これは正直に商売して正解でしたな」

「おかげさまでね。以前旅していた時に色々買うことがありましてね。そう言えばここは肉類は置いてますか?」

フィルの質問に、店員は店から少し離れたところにある

別の店を指さして伝える。


「ああ、チーズは保存食として置いてはありますが、他の乳製品や肉は他所の店ですね。ほら、あそこにある店。あそことは仲が良くてね、大体の肉はあの店をお勧めしてますよ。向こうでも、うちの紹介っていえばおまけしてもらえると思いますよ。後はバターやミルクはあの店がいいかな。あそこは新鮮で評判が良くてね」

「なるほど……じゃあ、後で行ってみますね。ああ、あと、ランプと子供向けの服が買える場所とか知っていたりします?」


別のフィルの質問に少し考えた青年だったが

さすがにお奨めが出来るほど詳しくはないようで、

「子供向けですか? こちらのお嬢さん向けの服ですかね? うーん、お嬢さんの服とかあまり流行りとかは疎くてね、ただ、ここの市場から大通りを挟んで向かいに、服とか雑貨とかを売る大きな市があるから、そこでいろいろ見て回るといいですよ。ランプなんかもそこで扱ってるはずです」

「なるほど、ありがとうございます。そちらにも行ってみますね」



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