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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
11月 それぞれの秋
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11月 それぞれの秋 パート3

 授業も終わって家に帰るだけとなった下校道、葵は奈緒にお昼のことを話して聞かせていた。

「まったく、楓にあんな特技があったなんて知らなかったぜ」

「綾杉さんって、凄いんだね」

 話を聞いた奈緒は目を丸くしながら感心している。

「ボクも見たかったかも。あーあ、アオくんと一緒に学食に行けばよかったなぁ」

「やめとけ。アレは見るもんじゃない。食欲が一気に失せる」

「そうなの?」

「そうなの。それにお前は弁当持参だったんだろ?学食にいく必要ないじゃん」

「それはそうだけど……アオくんが誘ってくれたら、喜んでついてったのに……」

「バーカ。せっかく作った弁当なんだから、ちゃんと食え」

「う、うん……」

 奈緒は残念そうに呟くと、天を見上げた。

 茜色に染まった夕焼け空が、奈緒の鬱な気分を増幅させる。

「あーあ、今日はお弁当作ってこなければよかったなぁ」

「まったくだ。奈緒にもあの楓の食いっぷり、見せてやりたかったぜ。いくら食欲の秋って言ってもなぁ……」

「ああっ!やっぱりボクに見せたかったんじゃないか!!」

「あっ、しま……」

 葵はしまったと思い、慌てて訂正しようとしたが、既に手遅れだった。

 奈緒は瞳を潤ませながら葵をにらんでいる。

 そしてポカポカポカと、両拳をグーにして葵を叩きだした。

「バカバカバカー!!アオくんのバカー!!」

「わっ!?バ、バカやめろ奈緒!!」

「酷いよアオくん!!そんな意地悪いうなんて!!」

「わ、悪かった。俺が悪かったから、やめろ。な?」

 たまらず葵は奈緒の頭を撫でた。

 それでも奈緒のグーパンチの雨はやまなかったが、しばらくすると、動作が止まり、トロンとした目つきになって視線を伏せた。

「ズルイよアオくん……そんなことするなんて……」

「こうでもしないと、お前はやめないだろ?」

「だって……」

「俺が悪かったよ。ゴメン」

「……うん。許してあげる」

 奈緒は恥ずかしそうに顔をあげた。

 奈緒は昔から葵に頭を撫でられるのが好きであった。

 そのため葵も、度々奈緒が暴走しても、彼女の頭を撫でることによって、その行動をなだめてきたのである。

「やれやれ……」

 葵はため息をつくと、少し顔をあげた。

 鮮やかな黄色に染まったイチョウの木々から、夕陽を浴びたイチョウの葉がひらりひらりと地面へ舞い落ちる光景が目に飛び込んでくる。そして、道路に積もって紅葉などの他の落ち葉と共に美しい絨毯じゅうたんを作り上げていく。

「あっという間に晩秋か……」

「そうだね」

 奈緒もその光景をじっと眺める。

「なぁ、奈緒」

「なあに?」

「もし……もし、俺がいなくなったらどうする?」

「えええっ!?」

 突然の発言に奈緒は驚きの表情を作った。

「アオくん、どこかにいっちゃうの!?ボク、そんなのヤだよぉ!!」

「例えばの話だ。例えばの」

「なぁんだ。ビックリした」

 奈緒はホッと胸をなでおろす。

「そうだなぁ……考えたこともなかったけど、アオくんがいなくなっちゃったら、ボク、とっても悲しいよ」

「悲しいのか……」

「うん。でもどうしたの急に?……アオくん、ひょっとして……」

 途端に奈緒の表情が曇り、不安げな眼差しを葵におくってくる。

 しかし葵はそんな奈緒の頭をポンポンと叩いた。

「ちょっと聞いて見たかっただけだって。大体、食いしん坊のお前を残してどこかにいくような真似なんて出来ると思うか?心配で心配で、とてもじゃないがそんなことはできん」

「ひっどーい!!ボク、食いしん坊じゃないもん!!そんなこといったらアオくんの方が心配だよぉ!!グータラでおっちょこちょいでだらしないから!!」

 奈緒は心外だと言わんばかりに葵に反論する。

 しかし葵はそんな奈緒などおかまいなしに、ボーっと街路樹を眺めた。

 どの樹も木の葉が1枚1枚抜け落ちていき、冬支度の準備を始めている。

「もうすぐ……冬がくるんだよな……」

「そんなこと言ったってごまかされないもん!!」

 奈緒は文句をいうが、今の葵の耳にはいることはなかった。

 あの木の葉と同じように、もうすぐ自分の命も終焉を迎える……

 葵はそう考えると、どこか感傷的な気分にならずにはいられなかった。

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