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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
9月 嵐来たりて、秋遠からじ
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9月 嵐来たりて、秋遠からじ パート5

「ただいまー」

 葵は家に着くと、玄関のドアを開ける。

 幸い、姫子が先に帰ってきていたらしく、ドアの鍵は開いていた。

「お邪魔します」

 その後を、萌がついてくる。

「お帰りなさい……うわっ!?どうしたのその格好!」

 リビングからひょこっと顔を覗かせたTシャツ姿の姫子が、驚きの声を上げた。

 二人とも、服や髪の毛から滴り落ちるくらい、ずぶ濡れになっていた。

「いやぁ、突然雨に降られてな」

「まさか、この豪雨の中走ってきたの?バッカじゃないの!?」

 姫子はそう言いながら、脱衣所へと向かう。

 そしてバスタオルを持つや、きびすを返した。

「とにかく、そんな姿でいたら風邪引くわよ。葵、あんたはこれで拭きなさい。萌、あなたはシャワー浴びてきて。ちょうどお風呂湧いてるから」

「えっ?で、でも……」

 萌は遠慮がちに葵を見る。

「姫子の言う通りだぞ。萌、そのままじゃ風邪引くから、シャワー浴びてこいよ」

「う、うん」

 萌は頷く。

 そして二人は姫子からバスタオルを受け取り、体を拭き水分を拭った。

「さ、萌。こっちよ」

「う、うん」

 萌は靴を脱いで上がると、姫子の後をついて行く。

 葵も体を拭き終えると、靴を脱いで家へと上がった。

 そして、自分の部屋へと向かう。

「しっかし、酷い目に遭ったな」

 自分の部屋の中へと入った葵は、ポケットに入っている物を全て取り出し、着ている物を全て脱いだ。

 そして洗濯籠へといれると、改めて全裸になった体を拭く。

 それからバスタオルも洗濯籠へと放り込み、新しい下着に、Tシャツ、ズボンに身を包んだ。

 その洗濯籠を持って1階へと降りていき、リビングへと向かう。

 萌をバスルームへと案内した姫子が、せんべいを口にくわえながらソファに腰掛け、テレビを見ていた。

 Tシャツには「働いたら負け」と自己主張するかのように、大きな黒文字が書かれている。

 Tシャツの上から小さめの柔らかい膨らみが顔を覗かせていた。

「萌から聞いたわよ。災難だったわね」

 姫子はテレビの方を向いたまま、声をかける。

「普段の行いが悪いから、そういう目に遭うのよ。どうせ、雨予報じゃないから絶対雨は降らない!とか思ってたんでしょ?」

「な、何故それを……」

 図星を疲れて葵は絶句する。

 姫子は深くため息をついた。

「考えなくても分かるわよ。単細胞なあんたのことだもん。どうでもいいけど、萌とか他人に迷惑かけるのやめなさいよ」

 姫子はバリッとせんべいをかみ切る。

「まぁ、あたしに迷惑かけるようなら、その時は覚悟して貰わないといけないけどね」

 そして冷たい視線で葵を見る。

「へいへい。気をつけますよ」

 葵は頷くと、ソファに腰掛けた。

 そしてテーブルの上に置かれていたせんべいを手に取り、口に運ぶ。

「しっかし、お前のそのTシャツはなんだ?よくそんなもん買ってきたな」

「あら?知らないの?今女子高生の間で結構はやってるのよ?葵もまだまだね」

 姫子は首を左右に振り、呆れたような態度を取る。

「あんたも少しは流行ってものを学習した方がいいんじゃないの?」

「暇があったら勉強しておくよ」

 葵は目を背けて、テレビを見る。

 テレビではニュース番組の天気予報コーナーが流れていた。

「どこぞのお馬鹿さんも、天気予報鵜呑みにせず、少しは自分で考える力があれば、ね」

「悪かったな」

 葵はバツが悪そうに答える。

 それからしばらく時が経ち、萌がリビングに顔を覗かせた。

「お兄ちゃん、姫子ちゃん、お風呂ありがとう」

 萌は黄色いリボンを胸元に付けた白色のパジャマを上下身につけていた。

 風呂上がりのため、髪を下ろしている。

「よく似合ってるじゃない」

 姫子がせんべいを咥えたまま、ウンウンと頷く。

「それ、姫子のパジャマか?お前、よくこんなの持ってたな」

 葵も感心したように頷く。

「かわいい格好するのは乙女のたしなみよ」

 姫子は当然とばかりに答える。

「まぁ、お前が乙女なのかどうかはともかく」

 葵はわざとらしくため息をついた。姫子の眉がピクリと動く。

「とってもかわいいよ萌」

「えっ……」

 萌は顔を真っ赤にする。

「あ、ありがとう……」

 そして俯き、小さく呟いた。

「それじゃあ、俺もシャワー浴びてくるかな」

 葵は洗濯籠を持つと、そのまま風呂場へと向かった。

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