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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
9月 嵐来たりて、秋遠からじ
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9月 嵐来たりて、秋遠からじ パート2

 掃除を終えた葵は独り、下駄箱で靴を履き替えて昇降口を出た。

 土曜日の放課後ということもあって、いつも以上に周囲が騒がしい。

 そんな中で、葵は見知った少女の後姿を発見した。

 三つ編みのおさげの髪を揺らし、独りとぼとぼ歩いてる。

 それは間違いなく、萌であった。

「よっ、萌」

 葵は後ろから近づき、肩をポンと叩いて声をかけた。

「きゃっ!?」

 少女は小さな悲鳴を上げ、ビクッと肩を震わせる。

 そして恐る恐る振り向く。

「あっ……なぁんだ。お兄ちゃんだったんだ……」

 相手を確認すると、萌はホッとしたように安堵の溜息を漏らした。

「いやぁ、ゴメンゴメン。あんなに驚くとは思わなかったから」

「もぅ……お兄ちゃんの意地悪……」

 萌は拗ねた表情を作って、葵を睨むが、すぐに表情を赤らめた。

「今度からは、もっと普通に声かけて欲しいな」

「わかったよ」

 葵は頷くと、萌に尋ねた。

「今日は鈴歌ちゃんと一緒じゃないのか?」

「うん。鈴歌ちゃん、ちょっと部活の方で用事があるんだって」

「部活?」

「うん。新聞部なんだけどね」

「へぇ……鈴歌ちゃんが新聞部ねぇ……」

 葵は軽く相槌を打ちながら、何故鈴歌が妙に情報通だったのか、ようやく納得した。

 新聞部員であれば、情報収集はそれなりに慣れているだろう。

 葵は初めて鈴歌にあった時のことを思い出しながら、しきりに頷いた。

 萌はそんな葵を不思議そうに眺めていたが、同じことを葵に聞き返してきた。

「そう言うお兄ちゃんは、今日は紅林先輩と一緒じゃないんだ?」

「あのなぁ……俺はいつも一緒に奈緒といるわけじゃないんだぜ?それに、いつも一緒に帰ってるわけじゃないし」

 葵は苦笑しながら、萌を見る。

「まぁ、あいつも今日は友達と約束があるみたいだから」

「そうなんだぁ……」

 萌は葵の言葉を聞くと、葵をチラチラと見ながら何かを言いたそうに小さく口を動かす。

 そんな萌の様子をみて、葵には彼女が何を言いたいのか、すぐに察しがついた。

「萌、俺と一緒に帰るか?」

「えっ……」

 萌は一瞬顔を赤らめる。

 しかしすぐに嬉しそうに笑顔を浮かべて、大きく頷いた。

「うん!!」

「よし、それじゃあ帰ろうか」

 一緒に帰ることが決まった二人は、校門を抜け遊歩道に出た。

 車道を走る車の騒音に混じって、楽しそうな話し声が聞こえてくる。

 土曜の放課後と言うこともあり、遊歩道も賑やかな状態になっていた。

 照りつける太陽の熱線が、見る見る間に全身から汗を噴出させてくる。

「それにしても暑いよなぁ」

 葵は額の汗を拭きながら、空を見上げた。

 雲ひとつなく、青々と染まっている様子を見る限り、涼しくなりそうな気配は全く感じられない。

「なぁ萌。なんだか喉乾かないか?」

「えっ?」

「寄り道してこっか?アマリリス亭に」

「あっ……」

 萌は恥かしそうに顔を赤らめると、小さく頷いた。

「うん」

「それじゃあ決まりだな」

 葵は萌の返答を聞くと、アマリリス亭を目指した。

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