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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
8月 海と少女
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8月 海と少女 パート8

 部屋に戻った二人は、その光景を目撃し、揃って口をつぐんだ。

 いつの間にか二組の布団が、ピッタリくっついて敷かれている。

「な、何よコレ!!冗談じゃないわ!!」

 姫子は手前の布団を入口近くに引っ張ると、奥の布団を窓辺に引っ張っていった。

「まったく……なんでこんな男とくっついて寝なくちゃいけないのよ!何されるかわかったもんじゃないわ!!この民宿の人間、何考えてるのよ!!」

「なんだ?お前がそう頼んでおいたんじゃなかったのか?」

「頼むわけないじゃない!!」

 姫子は葵を睨むと、そのままそっぽを向いて窓辺の布団に寝そべった。

「お、おい……俺、そっちがいいんだが……」

「何よ!!あたしは、潮の香りと小波の歌声を楽しみながら寝たいの!あんたはそっち!!」

 姫子は再び葵を睨みつけた。

「いい?ちょっとでもあたしに何か変なことしてみなさいよ?もし襲ってきたりしたら、その時はすぐにあんたをあっちの世界に連れてってやるんだから!!」

 姫子は吐き捨てるように言うと、葵の視線に背中を向けてしまった。

「誰がお前なんか襲うかよ!バーカ!」

 葵は言葉を吐き捨てると、電気を消して、布団にもぐりこんだ。

 星明りの差す暗闇の中、小波の音が静かに響き渡る。

「……ねぇ……」

 しばらくすると、姫子の呼ぶ声が葵の耳に入ってきた。

「……………………」

 葵は無言の返事を返す。

「……もう寝ちゃった?」

 一呼吸置いて、再び姫子の言葉が聞こえてきた。

「起きてるよ……」

 葵はそっけない返事をする。

「……怒ってる?」

「さぁな」

 葵は天井を見上げながら呟いた。

「……さっきは……ゴメン……」

 姫子の申し訳なさそうな声が聞こえてくる。

 葵は信じられないといった表情で、姫子を見た。

 姫子は先程と同様葵に背を向けたまま、夜景を見ている。

「ちょっとムキになっちゃって……ホント、ゴメンね……」

「別にいいけど……どうしたんだ?」

「ちょっと……いろいろあってね……」

 姫子の言葉に、葵は即座に風呂上りの自販機前での出来事を思いだす。

「やっぱり、沙夜先輩となんかあったのか?」

「うん……ちょっとね。でも、宗像先輩の言う通りかも……」

「えっ!?」

「あ、ううん、なんでもないの。今の話は忘れて。それじゃあお休み」

「あっ、お、おい?」

 葵は話しかけるが、それっきり姫子から返事が返ってくることはなかった。

「…………」

 葵は諦めて、話しかけるのをやめた。

 葵の脳裏にふつふつと疑問が沸いてくる。

 姫子が宿敵であるはずの沙夜を『宗像先輩』なんて呼ぶのは、どう考えても何かあったとしか考えられなった。

 しかし、例えその疑問をぶつけたとしても、姫子は答えてくれないだろう。

 葵は目を閉じ、小波の音に耳を傾けた。

 そしてそのまま夢の世界へと堕ちていった。

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