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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(下)
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7月 期末試験と招待状(下) パート16

 いつしか空は鮮やかな茜色に染まっていた。

 紅い夕陽が西に傾き、オレンジ色の雲が風に乗って流れていく。

「それじゃー、始めっぞー!!」

『はーい!!』

 山極の声を合図に、コンクリートブロックで作られた即席のかまどに火が起こされ、上に乗った金網が熱せられていく。

 そして、その金網の上に、金串を差した様々な食材が次々にのせられていった。

 しばらくすると、それらからジュウジュウと食欲をそそられる音が発せられ、香ばしい匂いが漂ってくる。

 今、山極の別荘の庭ではバーベキューが開催されていた。

 遊び疲れた3人娘が、焼けるのが今か今かと目を輝かせながら待っている。

「そろそろいっかな?」

 葵はそのうちの金串をひとつ手にとった。

 それには牛ブロック肉が刺さっている。

「アオちゃん大丈夫?まだ生焼けなんじゃない?」

「まぁ、牛肉だから大丈夫だろ?」

 楓がじっと見つめる中、葵はそれを口の中へと運んだ。

 噛み締めると、肉汁がジワッと溢れだし、濃厚な味わいが口いっぱいに広がる。

「うん、うまい」

 葵は大きく頷いた。

「それじゃあ、いっただっきまーす!!」

「あたしもあたしも!!」

「ボクも!!」

 葵の動作を合図に、楓、姫子、奈緒の3人もそれぞれ金串を手にとった。

 そして遅れて葵、山極も食材を補充しながら食べる分を手にとる。

「バーベキューなんて久しぶりだね、アオくん」

 おいしそうに海老を食べながら、奈緒が葵に話しかけてきた。

「うーん……そうだな。随分昔のことだから」

「あの時のアオくん、おもしろかったよね」

「おもしろかったって?」

「だって、アオくんってば夢中になってお肉ばっかり食べて、お腹壊すんだもん」

「バ、バカ!!そんなこと忘れろ!!」

 クスクス笑う奈緒に、葵が怒り出す。

「大体お前だって、あの時人のもってる串にかぶりついたじゃないか!」

「だ、だって、アオくんのもってるやつがおいしそうだったんだもん!!」

「まったく卑しい奴だな。人の物に手を出すなんて」

「こんな風に?」

「そうそう……って、あー!!」

 突然割りこんできた声に葵が振り向くと、姫子が、彼が左手にもっている串にかぶりついているところであった。

「うーん、このホタテ、なかなかジューシーね」

「ひ、姫子!!お前、自分のやつを食えよ!!」

「へへーん。さっきのお返しですよーだ!!」

 姫子は口をむしゃむしゃ動かしながら、幸せいっぱいの満面の笑みを浮かべた。

「まったく……卑しい奴だな……って、おい……」

 葵は、姫子の行動に呆れながらため息をついて視線を戻すと、今度は右手にもっていた牛ブロック肉を、奈緒が強奪していく。

「うん、このお肉、おいしいね」

「おいしいね……って、なにやってるのかな?」

「見ての通り、お肉食べてるの」

「それ……俺が食ってる最中のやつじゃないか……汚いぞ?」

「大丈夫。アオくんのだったら汚くなんかないもん」

 奈緒も嬉しそうにはぐはぐと口を動かす。

「わかったわかった……」

 葵はもはや諦めの境地で、天を見上げた。

 眩しいほどに夕陽が輝いて、鮮やかな夕焼けが目に染みる。

 葵は嬉しさと共に、寂しさがこみ上げてくる。

 そして、騒がしいミニ旅行は、余韻を残したまま終わりを告げた。

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