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茜色の宝石箱  作者: 杠葉 湖
7月 期末試験と招待状(下)
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7月 期末試験と招待状(下) パート14

 屋外プールを後にした葵は、とりあえず適当に館の中をぶらついて見ることにした。

 広く静かな館の中は、山極の父親の趣味がよく反映されてるためか、品のあるアンティークがあちらこちらに飾られており、まるで中世に一人だけ取り残されてしまったような錯覚さえ覚える。さらに、迷路のような設計が、その感覚に拍車をかけた。

「山極センセのオヤジとオフクロって、一体全体何者だったんだ?こんな摩訶不思議なモノ山奥に建てるなんてよ……」

 葵はポツリと独り言を呟いた。

 葵でなくても、この現状を目の当たりにすれば誰でもこの疑問は浮かんできたであろう。楓のような一部例外を除いて、だが。

「ん?」

 回廊を歩いていた葵は、ふと壁の1部が変色していることに気がついた。

「ここだけ色が違うな……」

 気になった葵はその壁を何気なく触ってみた。

 するとどうだろう。

 壁がなんの抵抗もなく、スッと回転した。

「……えっ?」

 葵は慌てて手を引っ込めた。

 壁は半回転すると、ピタリと静止して何事もなかったかのように元の姿を見せる。

「……なんだなんだ??」

 葵は、今度は注意深く、弱い力でその壁を触る。

 手の動きにあわせて、ゆっくりとその壁は回転し、ポッカリと空間が現れる。

 それは部屋らしきものであった。

 狭く木の板が張り巡らされた空間の中に洋式のトイレが1つ置かれているだけで、これといって他に特徴があるわけではない。

「隠し部屋……なのか?」

 葵には当然の如く率直な疑問が浮かんできた。

 まさかトイレを隠し部屋にするわけが、常識的に考えればありえるはずがない。

 しかも、その洋式トイレは新品同然に綺麗で、1回も使われた形跡がなかった。

「……なんでこんなものがここに?」

 葵はその隠し部屋の中に入って、その意味を考えてみた。

「……座って見上げると、天井に暗号が書かれているとか?」 

 幼稚な考えだとおもったが、とりあえず葵はその洋式トイレの上に腰掛けて天井を見上げてみた。だが、なにか暗号が書かれている様子はまったくなかった。

「……やっぱ違ったか」

 葵は自虐的に笑いながらため息をついた。

 よくよく考えてみれば、常識と言う物差しでは計れないことなんて、日常的に多々あることだ。また、人によって常識というものは、それぞれ範囲が違う。

 山極にとってこれは常識の範囲内のことではないのか、と葵は考えた。

「……戻るか」

 葵は立ちあがろうとした。

 すると突然、トイレが下に向かって動きだした。

「な、なんだぁ?」

 わけがわからず、葵は呆然としたままことの成り行きに身をまかせることにした。

 暗闇の中を、葵は下へ下へと強制的におろされていく。

 やがて動きが止まった。

 そして、そのまま葵の動きが固まった。

 その部屋は、とても不気味な雰囲気を漂わせていた。

 何故ならその部屋の中には戦隊物やヒーロー物、さらには美少女物の人形が所狭しと飾られていたのだ。しかもその視線が、全て部屋の中央、即ち葵のいる場所に集中している。

 どうやら山極のプライベートコレクションルームらしかった。

「俺……ひょっとして、とんでもないものを見てしまったのでは……」

 葵は額から吹き出してくるいやな汗を、ハンカチで拭った。

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